枯れ井戸
実は、井戸が突然枯れてしもうてな。そこで舞を奉納して清め、復活させてもらいたいのじゃ・・・。座主様に誘われ、広間の奥にある穴へ案内されます。
「もしかして、この下ですか?」
「そうじゃ!」
それはぽっかりと大きな口を開けて、下へと降りる螺旋階段が内側を巡っています。底が見えない恐ろしさに、降りるのをためらいます。
「頼みを聞いてくれたら、良いことを教えてやるぞ、どうじゃ?」
「なんでしょう?」
「それは、後のお楽しみじゃ! フホホホ・・・!」
その言葉に魅かれた訳でなく、単に枯れ井戸を清めたい、という思いで私は意を決します。明かりを借りて、螺旋階段を下りることにしました。
「ここが井戸の底かしら?」
ぐるぐると階段を下りていくと、ようやく底に着いたようです。床には石が丸く並んでいます。ふと上を見ると大きな横穴も見えます。
数日前、古戦場で巡り合った癒しの水場に感じが似ています。私は明かりを横に置き、舞を奉納することにしました。
「舞を奉納させていただきます・・・」
私は、古戦場の水場、そしてザルード大公邸の神聖な井戸、そしてこの枯れ井戸と、この数日間の水の導きに感謝込め舞を始めました。
・・・・・
どのくらい時間がったのでしょう? 私は、肚の内より湧きあがる不思議な暖かさに、我を忘れ舞い続けていたようです。
ふと気が付くと。いつの間にか床石の隙間から水があふれてきました。急いで舞を終えると、上から声が聞こえます。
「龍巫女様、お見事! おかげで枯れ井戸が復活したわい。帰りは、その横穴から龍に乗って帰りなされ!」
「・・・?」
見る間に、水は腰まで届きます。すると指輪から青龍がするりと抜けだし、私の体を頭の上に押しやります・・・。
「姐さん、しっかり掴まってくださいよ!」
「ひぃ~!」
「龍巫女様、折を見て西へ行きなされ。昔、貴方と同じ目をした方に・・・」
座主様の最後の言葉は聞き取れず、私は青龍にしがみついたまま横穴へ流されて行きました・・・。
・・・・・・・・
「姐さん、着きましたぜ!」
どの位時間が経ったのでしょう? 濡れた体を龍の頭から傍の岩棚へ移します。
「ここどこなの?」
疲れ果てた私・・・。
辺りは光が入るのかぼんやり様子がわかります。青龍は、そこに指輪を当てて下さい、と言い残しするりと指輪に戻ります。示されたのは龍の浮彫、私は躊躇いもなく指輪を押し当てます。
すると、突然明るい場所に出たと思えばそこは訓練校の庭園。遺跡調査で大岩が出た辺り。登校時間らしく、門を入ってくる大勢の生徒達。
そこにずぶ濡れで現れた私・・・。
「キャー!」
生徒達が大騒ぎ・・・。
「アルシュから戻ってこられたにしては、随分と早いですね?」
騒ぎを聞きつけた元護衛隊長さん、そう言って出迎えてくれました・・・。
次回、聴取、です。




