帰路
こちら、婚姻の儀の翌日、ザルード大公の屋敷です。私は、訓練校に戻るため皆様とお別れです。
「ラシル先生、ありがとうございました!」
「導師殿、今度は新居へ是非お越しください!」
「アルさん、シュマさん、お幸せにね!」
別れを惜しみつつ、屋敷を後にします。若夫婦と三人で話して、赤龍は一旦私が連れて帰ることにしました。新婚さんを邪魔しちゃダメ、と言って青龍と一緒に私の指輪に入ってもらいます。
「赤龍、守護せよ! と指輪に触れて唱えれば、いつでも飛んで来るからさ!」
その言葉に笑顔で頷くシュマさんですが、アルージュ卿の方がにこにこしているのは気のせいかしら?
・・・・・・・・
「さあ、早く帰らないと!」
私は、急ぎ足で帰路を進みます。アルシュ国に入り、ケイガンという街で宿をとる事にしました。
手頃な宿を探していると、小さな女の子と男の子が私の前を走って横切ります。何かしらと、と思ってそちらを見ると・・・、ドン!
「痛い!」
「邪魔だ、どけ!」
私は、男達の集団に突き飛ばされます。
「もう・・・、ちょっと! 待ちなさい!」
逃げる子供達と怪しい男達・・・。これは見捨てておけません! 私は、転んで痛むお尻をさすりながら、その後を追いかけます・・・。
「どこ行ったのかしら? 」
勇んで追いかけてみたものの、見失ってしまいました。ここは街はずれでしょうか。辺りは山裾が切り開かれ崖になっています。
すると、向こうで子供達の悲鳴が聞こえます。よし、あっちね!
声のした方向に駆けつけると、男たちが二人の子供を引っ張っていくところです。
「ちょっと、あなた達、何をしているの!」
「うるせえ! 引っ込んでいろ!」
うぬぬ、今こそ修行の成果を見せるときです。私は街道歩きに使っていた杖を取り出し、男達に振りかざします。
「えい!」
カラ~ン・・・。あっけなく一人の男が杖を弾き飛ばします・・・。あれ・・・?
「おいおい、そんなもの振り回すと、危ねえぞ!」
数人の男が、じりじりと私に迫ってきます・・・。
ぐぬ~、まだまだ、今度は素手勝負です、
「やー!」
「おっと!」
私が放った拳は、ひょいと男に躱されます。思わずよろめき、子供達を捕まえている男にぶつかりそう・・・。男が私に気を取られた瞬間、子供達が男の手を振りほどきます。よし、今のうちよ、逃げて!
「お姉さんをいじめるな!」
何故か私を背後に庇い、前に出る子供達。 いや・・・、そうじゃなくて・・・。
ああ・・・、私の今までの修行の成果は何処へ行ったの・・・?




