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続・命を継ぐ者(ラシル)の旅  作者: みのりっち
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寿ぎ

夕方、近親者だけで婚姻の儀式が始まります。アルージュ卿は、騎士の正装です。一方シュマさんは、幸せや繁栄の図柄を刺繍したユミルの正装で婚姻の儀に臨みます。


神官殿と立ち合い人のもと、女神様と列席者に向け宣誓がなされ、指輪の交換を行います。慌ただしくではありますが婚姻の儀が成立しました。


「アルージュ卿、シュマさん、おめでとう!」

祝いの言葉にシュマさんうっすら涙を流します。若い二人の周りには、清々しい空気が漂います。


「導師殿、せっかくですから寿ぎの舞をお願いできませんか?」

乞われて舞を披露することになりました。二人に座っていただき、その横で舞を始めます。


「二人の門出、幸多かれと願い舞を奉納申し上げる」

その瞬間、目の前に小さな喜びの玉が泡のように湧きあがります。私は、その湧きあがる流れと共に舞を始めました。


緩やかに足を運び、所作を舞うごとに喜びの玉は流れるように動き、私の舞の一歩先を導きます。前に足を運ぼうと思えば先んじて前へ、旋回をしようとすれば同じく先に旋回を・・・。


まるで、うれしくて歓喜の声を上げたがっているようね、と思って舞を続けていた次の瞬間、


「ウァー!」

(何故? 声が勝手に出た・・・)

私は、体の底から噴き出すような不思議な旋律で、高音の声を天上に響かせます・・・。


「ファー!」

(止められない・・・)

今度は、低い声を発し、それが列席者の端から端まで滑らかに通り抜けていく不思議さ・・・。


「ウファー」

(思考停止・・・)

最後は、二音同時発声。もはやイリュージョン・・・。


すると、その声に応えるように、天から、ビィ~ン、と絃音が和して降りてきます。その音は、まるで色鮮やかな布が次々と広げられていくような美しさ・・・。


心の壁を容易にすり抜け、深い場所にいつまでも余韻が残る音・・・。私は、その余韻に寄り添うように静かに舞を終えました。


「ラシル先生すごい!」

シュマさん感激で、思わずアルージュ卿の手を握りしめます・・・。アル様、無言で赤面・・・。


「導師殿、なんとも美しい舞を見せてもらった、そして天上の音曲のような音であった・・・」

アルージュ卿の母も大感激のご様子・・・。


「寿ぎ、誠に見事!」

(武人の技とは趣を異にするが、あのような境地に足を踏み入れるとは・・・)


大公殿は、ただそれだけを言い、ラシルさんの舞を労ったのでした・・・。



宴の夜は、深夜まで続きます。龍達は、酒をくらって指輪の中で大いびきです・・・。

次回、アルシュ国王、です。

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