宰相殿の朝
宰相殿の朝は、日の出と共に各方面から届けられた情報に目を通すことから始まります。朝餉を取りながらふと気になるものを見つけました。
“今日の運勢、仕事、健康、財産、縁談、全て良、北方に欠けあり・・・”
「北方に欠けあり・・・」
今年のユミルは、豊年満作で国内の商業活動も順調、外交的にも昨年来ザムとの交渉は有利な展開。国内も安定し、懸念だったパルバク王国との関係も、ちょうど一歩前進したところです。宰相殿、その言葉をつぶやきながら考えを巡らせます。
「急ぎ宮殿へ、占い方を呼んでおけ!」
宰相殿、朝餉を慌ただしく済ませると、急ぎ宮殿へ出かける支度を始めます・・・。
半時後、すでに執務部屋に到着した宰相殿、占いの担当官殿と打ち合わせです。普段、偉い人にお目に掛かることのない担当官殿、早朝の急な呼び出しに何か失敗でもあったのか? と内心びくびくしています・・・。
「ああ。そのように固くならずとも良い。少し北の方角について尋ねたいことがあるだけだ」
担当官殿、宰相殿の言葉にホッとして肩の力を抜きます。
「昨年の龍神昇天の瑞祥をうけ、今年はユミル隆盛の機運。国内は問題なしですが、北方諸国では平穏に見えて吉凶が表裏一体。何かあればどちらかに傾き易い状態かと・・・」
宰相殿、担当官殿の言葉に頷きます。
「ご苦労であった。最後に、北方に欠けありとはどういう意味か?」
「はい、油断召されるな、の意にございます」
・・・・・・・・・
宰相殿、今度は大臣殿の部屋で双六に興じながら密談です。
「大臣殿、今年は豊作、おかげで財政も順調。大臣殿の手腕には恐れ入った!」
賽を振りながらそう持ち上げる宰相殿に、大臣殿こそばゆい気分です。
「いやいや、これも全て宰相殿のおかげ! 国内政治が安定してこその話です」
「して来年は、如何ほどの収穫が見込めそうかな?」
大臣殿、宰相殿の言葉に、コマを動かす手を止め考えます。
「さようですな、上手く運べば今年の2割増しは望めるかと・・・」
「倍にしていただきたい!」
「は? 今何とおっしゃいましたか?」
大臣殿、思わずコマを取り落としそうになります。
「今年の倍だ! それでも足りるかどうか・・・」
「何か凶作の暗示でも?」
宰相殿、大臣殿から賽を奪い取ると、卓に投げ最後のコマを自陣に入れます。
「風雲急を告げるかもしれん・・・」
宰相殿、早々に勝負を決して、アルシュ藩王ルドラ殿へ急ぎ使者を、と大臣殿に言い残し部屋を出ました。
次回、掃討、です。




