それぞれの朝2
神官エルム先生の朝は早いです。彼は、トゥルク郊外にある小規模な神殿に居を構えています。日の出前に目覚め、沐浴と礼拝を済ませます。
そして、訓練校まで1時をかけて通っています。王都の神殿時代と比べ、不寝番がない分生活はかなり楽です。
しかし、エルム先生より早起きの者もいます。副主宰リムさんです。彼は、週に3日深夜に起き、トゥルクの市場に出かけ商品の値段を調べます。
それ以外は、トゥルク郊外の畑をまわり、作物の生育状況を調べるのです。そして、自分が勤めていたアルシュの店に鳩を飛ばして情報を送ります。
(今年は、思った以上に作物の出来がよかった・・・)
そう思いながら家に戻ると、緊急を知らせる鳩が到着しています。急ぎ開封すると、アルシュ国境付近で花嫁一行襲撃の報が知らされます。
同じ頃、郊外の神殿にアルシュから、今朝、龍が出現した兆しがある、と知らせが入りました。
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エルム先生がいつもより早く訓練校に着くと、同じ頃リム副主宰も到着していました。二人は素早く情報交換をします。花嫁行列襲撃のこと、龍出現の兆しのこと・・・。
アイラさんが到着すると、すぐアルシュとの水鏡念話の支度を整えてもらいます。
「おはようございますルドラ様、実は・・・」
「あら、早いわね・・・。ええ、届いているわ・・・。わかったわ、調べるからこちらに任せなさい」
ルドラ主宰に状況を調べてもらうよう頼みます・・・。
念話が終わった後、届いている情報を整理したルドラさん、部下に指示を出します。
「国王に会いに行くわよ!」
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こちらザルード大公の屋敷です。
「国境の入り口は、念のため花嫁一行の迎えを待たせておけ。あまり隣国の奴らを刺激するなよ。儂等は、峡谷沿いからアルを捜索する」
「お義父お願いします・・・」
ザルード大公に、アルージュ卿の父が頭を下げます。まだ若い息子と花嫁が行方不明。息子の護衛達は二人を見失い、花嫁一行の随身達と共に怪我の手当てを受け、国境に留め置かれています。
「儂が、必ずアルと花嫁を見つけ帰ってくる! 案ずるな・・・」
一晩たっても帰ってこない孫息子とその花嫁を探しに、ザルード大公に率いられた捜索隊がまだ夜も明けきらぬ早朝、城を出ていきました。
水鏡念話とは、命の種を宿す樹の葉を使い術師のみが出来ます。訓練校ではアイラさんの担当です。




