それぞれの朝1
シュマさんが目を覚ました後、しばらくして、私は意識を取り戻します・・・。
「ラシル先生!」
目を開けると、シュマさんの顔がぼんやり見えます。体が重く陰鬱な感覚が抜けていません。
私は、胸の奥で絡まった部分をそっと感じ、僅かにずらします。頭に広がった意識を鼻下に軽くとどめ、そのまま白い影を足元まで伸ばします。深呼吸をすると、新鮮な息が体に入ってきました。
今度は、背中のこわばりを解し、体の前に出過ぎた軸を中心に戻して背中側の空間を確保します。うん、大分よくなりました。
私が倒れた後、シュマさんが、命を懸けて一晩中祈り続けたくれたそうです、
「シュマさん、なんてお礼をいったらいいか・・・、どうもありがとう」
「だってラシル先生が、いなくなったら私・・・」
「姐さん・・・」
「はい?」
突然、シュマさん以外の声で呼びかけられます。しかし、声の主が見つかりません。不思議なことに、指輪から声が聞こえるような気がします・・・。
「貴方はどなた?」
「お久しぶりです、青龍です」
「・・・ひっ!」
私の頭の中で、巨大な青い龍がこちらを見ていました・・・。
・・・・・・・・
「兄貴、姐さんは、器が変わったから俺達のこと覚えてないよ・・・」
龍達の話によれば、今から数百年前、私は無敵将軍と呼ばれる龍使いだったそうです。青龍と赤龍を使役して戦いに明け暮れていたこと、ある時ふっつりと戦いから身を引いてしまった事、など・・・。
「器が変わっても、中身が変わらない部分もある。姐さん、その指輪を赤龍に向けて” ルゴス” と唱えてもらいますか?」
「うわ、バカ兄貴、 なんてこと! 姐さん、それ言っちゃダメなヤツ! え~っと、解除の呪文は・・・」
るごす・・・? そう思っただけで指輪が怪しく光ります。赤龍が大慌てです・・・。
「解除は、姐さんの名前を・・・」
「そうそう、それ、姐さん、指輪を鎮めて下さい!」
私は、青龍の言われるまま唱えると、途端に指輪の光が収まります・・・。
「どうだ? 器が変わっても、中身が変わらない部分もあるだろう?」
「・・・」
青龍の言葉を、赤龍はしぶしぶ認めます。どうやら、今の呪文は、龍を罰する時に使うとか・・・。
「あの、お話し中スミマセン・・・」
シュマさんが、話に割って入ります。皆に無事を知らせたいし、侍女や護衛達のことも気になるので、そろそろ出発したいとの事。峡谷沿いに進めば、パルバク王国への道はすぐだそうです。
「ラシル先生も、御一緒ですよ!」
「ええ、是非屋敷にお越し下さい。助勢のお礼もしないと・・・」
若い二人にそう言われ、龍達からも賛成されたので、私はパルバク王国に行くことにしました。若い騎士さん、名前はアルージュ卿だそうです。この方にシュマさんは嫁ぐのね。おめでとう!
次回、それぞれの朝2、です。




