龍姫の舞
僅かに休憩を挟み、水だけを口にしたシュマさん。祈りを捧げながら、一晩中舞い続けます・・・。
「龍神様、どうか・・ラシル先生を・・お救い・・下さい!」
その言葉を延々と繰り返しながら、ラシル先生から習った初級の舞をひたすら繰り返します。かなり疲れた様子で、声も枯れ果て、動きもぎこちなく、もはや舞にもなっていません。
それでも、なお舞い続け、救いの言葉を口にしようとします・・・。
見かねたアルージュ卿、泣きながらシュマさんに止めるよう懇願します。
「シュマ! 頼むからもう止めて・・・。そうじゃないと、シュマ、君が・・・。 嫌だ! 僕は、君と一緒に・・・。君と一緒になるのを待ち焦がれていたのに・・・」
「アル様・・・」
肩で息をしながらかすれ声で、シュマさんは優しく語り掛けます。
「だ、大丈夫、私達は一緒に・・なるのよ。そんなに・・思っていて・・くれた・・なんて・・うれしい。おかげで・・も、もう少し・・頑張れ・・そう・・」
まだ夜明け前、少し空模様が怪しくなってきました。何やら遠くに雷鳴が聞こえ始めます。ざわざわと風が辺りを舞い始めました。
「・・アル様、少し・・下がって・・いただけ・・ますか?」
シュマさん、眉をひそめながら言葉を口にすると、空を僅かに見ます。そして、ほとんど動けなくなった体で、再び救いの言葉を繰り返し始めました。
もはや気力も使い果たし、ただ命の種を燃やしてラシル先生の回復を祈り続けます・・・。やがて彼女の命の種がサラサラと音を立ててこぼれ始めました。
意識が遠のくなか、僅かに残る視野の片隅に、くびきに繋がれた赤い龍と青い龍の姿がちらりと見えた気がします。
「・・赤龍よ、青龍よ、くびきを・・解き放ち、我が・・元へ。ラシル・・先生を・・救い・・給へ!」
シュマさん、命の種を燃やし尽くし言葉を放ちます。すると、ラシル先生の指輪から、まばゆい光が立ち上がります。天空では、それに呼応するかのように雷鳴と稲光が激しく舞います。そして、轟音と共にニ本の落雷が足元に突き刺さります。
その衝撃でシュマさん、ゆっくりと崩れ落ちていきました・・・。
倒れたシュマさん、目からうっすら涙がこぼれています。それでも満足そうな顔をしているのは気のせいでしょうか・・・。
長い夜が終わりを告げ、東の空から黄金色の光が空へ放たれ始めました。しかし、崖上ではアルージュ卿の絶叫がいつまでも空しく響きます・・・。




