ラシルの戦い
崖上まで上がると、何やら騒がしい気配と、女性の悲鳴が聞こえます。今の声はもしかしてシュマさんでは? 私は勢いよく声の方へ走り出しました・・・。
・・・ズシャ!
ぐぉ~! 痛~い!
私は、木の根にとられ、盛大に地面に倒れ込みます・・・。
うう、思わず声が出ます。ゆっくり顔を上げると、目の前の大木から小さな緑の芽が出ています。その芽が何か聞いて欲しそうな様子です。
「何かしら?」
私は、そっと緑の芽に耳を寄せます・・・。すると、とても小さな声で話しかけられました。
「この森に紛れ込んでいる魔を退治して、白い影を使って。五体以上はダメ・・・」
ありがとう。お礼をいって仕切り直しです。悲鳴のした方向へ茂みをかき分けると、そこには若い騎士さんとシュマさんが獣に襲われていました・・・。
「危ない!」
私は、体から白い影を出し、シュマさんに襲い掛かる獣を貫きます・・・。
「ギュー!」
悲鳴とも泣き声ともつかない声を出し、獣が動きを止めます。その瞬間、まるで虫を握りつぶしたかのようなおぞましい感覚に襲われます。
でも、まだ若い騎士さんは、傷を負いながら獣と格闘しています。急いで、そちらの獣も白い影で貫きます。
「ラシル先生!」
「助勢、かたじけない!」
シュマさんは、大丈夫でした。若い騎士さんは、獣にとどめ刺していきます。
その様子を見ながら、私は気持ちを奮い立たせます。
さらに三匹の獣がうなり声をあげて向かってきます。なんとか残りの獣も白い影を駆使し動きを封じ、若い騎士がとどめを刺していきます。
「これで五体ね・・・」
私は、嫌な感覚に耐えながら、ほっと息をつきました。ところが今度は、空から鳥が襲ってきます。私は祈るような気持ちで、白い影に鳥を捉えさせます・・・。
「ギュー!」
その瞬間、あまりにもの気持ち悪さに、地面にうずくまってしまいました。
「ラシル先生!」
「大丈夫ですか?」
声を掛けられますが、返事が出来ません。しかし上空には、まだ数羽鳥が鳴き声をあげてこちらを伺っています。
その瞬間、頭の片隅にふと白い少女のことがよぎりました。私は震える手で魔方陣を描くと、地主神を呼び出します。
「古の盟約に従い地に住まう地主神よ、出でよ・・・。そして、この地を脅かす魔をすべからく祓い給わんこと、龍巫女が願いとして聞し召し給え・・・我が名は、ラシル・・・」
轟音と光と共に魔方陣から巨大戦士が現れます。そして、体から黒い影を伸ばし、次々と鳥を絡め取っていきます。やがて、襲い掛かってきた鳥と獣を引き連れ、魔方陣の中へ消えていきます。私は、それを見届けると同時に気を失ってしまいました。
辺りはもう暗くなります。シュマさん、火をおこし、アルージュ卿には休むように言い、こう呟きました。 「龍神様、これから舞を奉納いたします。どうかラシル先生をお救い下さい・・・」




