逃避行
護衛達と森の奥へ逃げ込むと、木々がうっそうと茂っています。先ほどの黒い鳥もここ迄は追ってこないようです。さらに慎重に森を進むと、何やら枯れ葉を踏みしめる音が聞こえます。そして、突然茂みから黒い豹のような獣が飛び掛かってきました・・・。
「今のうちに、お逃げ下さい!」
護衛達が剣を振り上げ、防戦します。その隙にシュマさん達はさらに森の奥へ・・・。
しかし、幾度か獣の襲撃を受け、次々と減っていく護衛達。今や侍女とシュマさんのみで逃げまどいます。そこへガサガサと木々をかき分ける音、もはやこれまでかと思った次の瞬間、
「シュマ!」
「アル様!」
国境を越えて来たアルージュ卿と、卿の護衛達です。森の中で運よく巡り合う事が出きました。
しかし、安心したのも束の間、周りから獣のうなり声が聞こえます・・・。
「卿!姫を連れて谷越えで国境を越えて下さい。ここを防いだ後、私達も追いかけます!」
「心得た!」
アルージュ卿は、姫を連れて谷越えの道に向かいます。しかし一匹の獣が茂みから行く手を阻むように襲い掛かかります。すると、それを侍女が身を挺して防ぎます。
「キャー」
獣に襲われる侍女、護衛達が、そこに割って入り素早く助けます。
「卿、急いで!」
「姫様、行ってください!」
シュマさん、侍女の様子が気になります。しかし、アルージュ卿に手を引かれ後ろ髪を引かれる思いでその場を後にします。
・・・・・・・・・
シュマさん一行、山道を進みます。アルージュ卿に手を引かれて谷を降りた後、再び斜面を登ります。
「シュマ、苦しくないかい? もう少しゆっくり行こうか?」
シュマさん、アル様の気遣いに感謝しつつ笑顔で応えます。
「大丈夫、森の中を三年も這いずり回ったのは伊達じゃないのよ!」
「・・・?」
(アル様、ごめんなさい、今の言葉は聞かなかったことにして頂戴・・・)
そして、辺りに夕日が照る中、二人は谷を上りきり稜線に出ました。稜線の向こうにある森に入って、峡谷の上をしばらく進めばパルバク王国領に到る山道があります。
しかし、上空には二人を待っていたかのように、黒い鳥が上空から襲い掛かってきます。
「シュマ、 森の中へ!」
二人は、森を目指して逃げ込みます。しかし、森の手前には黒い獣がうなり声をあげて待ち構えています。
「シュマ、怯むな、続け!」
アルージュ卿は、剣を抜き獣に突進します。
アルージュ卿とシュマさん、隣国に通じる道は、この森へ入ればあと少し・・・。




