武術大会の余波
それは、ある日、教職員の控室での出来事でした・・・。
「なあ、リム副主宰、冗談だろ?」
薬師アムルさんがリムさんと言い争っています。なんでも、編入生に火薬の作り方を教えて欲しい、と頼まれたそうです。
「あれは危険だ。訓練と経験を積んだ者でないと、爆発の危険だってあるぞ!」
「では、まず安全面からの講義をすればよいのでは? 要望があれば、我々もそれに応えないわけにはいかないのです。それに、編入生も他校で少し学んでいるはずです」
アムルさんは、リムさんの顔を睨みつけたかと思うと、足音を立てて控室を出ていきました。
奥様が私の横に来てそっと話し掛けます。
「夏の間にルドラさんは、ザムの都に行ったらしいわ。何でも、武術大会があったとか・・・。その時に見た光景が衝撃的だったらしいの。ユミルの武官も見に行ったそうよ・・・」
奥様によると、大国ザムが、常識外れの強さを持つ兵士を披露したそうです。各国は、その対策に今躍起になっているとか。その影響が、こんな訓練校にまで及ぶなんて普通じゃありません。子供達には、安心して学べる環境を用意してあげたいです・・・。
・・・・・・・
一方、こちらは少し時を遡り、武術大会終了後のザムの都ラーヴィ。アルシュ国の武官イルーガと名乗る男が、ザムの将軍と何やら密談しています。
「ええ、ご覧いただいたように強さは折り紙付きです。しかし、我々も兵達の能力はまだ改良の余地があると考えており、実戦中の不具合をご報告いただきたいですな。故に、他国へ貸し出す場合、最大10名までにしております。」
将軍は、口ひげを撫でつけながら話を進める・・・。
「将軍、かの兵達10名をわが国がお借りした場合、いかほど費用を用意すれば?」
「不要です!」
「ほう、なんと申された?」
武官イルーガは、念のため問い返した。
「申し上げた通り、まだまだ改良中。それに、前回ご期待に沿えなかったことのお詫びとして費用はこちら持ちです。但し、兵を返却出来ない場合を除きですぞ。もちろん魔兵が改良版になった暁には有料となります」
その答えを聞くと、武官イルーガは、満面の笑みを浮かべる将軍と固い握手を交わした。そして、具体的な話をしたいので明日再度お伺いしたい、と約束を取り付けるのであった・・・。
次回、荷車改良案1、です。




