水晶玉
そんなある日、ルドラさんが久しぶりにトゥルクに来て訓練校に顔を出しました。
「あら、ラシルさん、お久しぶり」
何故か、ルドラさんの顔を見るとほっとします。そして奥様も加わり、新学期の方針や編入生受け入れ予定をルドラさんに説明します。
最後に奥様が運営費や予算の報告をします。当初3年間は赤字運営の予定でしたが、グラナート大公、つまりシュマさんのお父様から多額の寄付があり年内は問題ないとの事。
「じゃあ、来年分も皆で頑張ってもらいましょう!」
奥様がにこやかにおっしゃるのを、ルドラさんが、無理しなくていいわ、とやんわり諫めます。
「それより、新学期に生徒全員に向け、荷車の改良案を募って欲しいわ・・・」
ルドラさん曰く、漠然と学ぶより、具体的な課題があった方が生徒の伸びも違う、とおっしゃいます。やはり、荷車をもっと使えるようにしたいようです・・・。
「ラシルさん、良い案がないか水晶玉で占って!」
「ルドラさん、私、水晶玉持ってないです」
「どうして持ってないの? 龍巫女の看板が泣くじゃない!」
その上、買ってきなさい! と奥様にも言われる始末・・・。
いや、そんなこと言われても・・・。
「神殿と取引のある商店の窓口がトゥルクにあります。明日一緒に行きましょう」
見かねたアイラさん、助け船を出してくださいます。私は、渋々行くことにしました。
次の日の夕方、アイラさんと共に街の神具店に向かいます。といっても、窓口なので商品はあまりなく、見本の水晶玉は、占い館で使っていた物と比べ物にもなりません。
良い品がなくて済みませんでした、と謝るアイラさんと別れ、帰路につきます。
途中で、荷物を置いて休んでいる農家の方に出会います。何気なく、こんばんは、と声を掛けると、挨拶を返して話しかけてきました。
「畑をご覧なさい、良い土だろ? 地主神は、毎年、我らに恵みを与えて下さる・・・」
そう言って示された畑の土は、生命力に溢れかえっています・・・。
「持っていくがいい、今年も良い出来だ」
そういって、拳より大きな丸芋を3つ程袋に入れ持たせてくれます。
その心遣いがうれしくて、丁寧にお礼を言って部屋に帰りました。
早速頂いた丸芋を袋から取り出すと、中の一つが、ゴトリ、と響きを立てます。
不思議に思い泥を洗うと、きれいな水晶玉です。
慌てて水晶玉を抱え、来た道を戻りました。でも、畑も農家の方もついに見つかりませんでした・・・。
次回、秋新学期、です。




