龍姫
「ラシル先生、私緊張してきました・・・」
「誰でも緊張はします。私も、お披露目の時は緊張しましたよ・・・」
そう言いながら、私はシュマさんの巫女衣装に組紐で招福の飾り結びを作ります。
今日は、シュマさんの訓練校最後の日で、巫女衣装と舞を皆さんに披露します。
シュマさんの巫女衣装は、白の絹糸で織られ、表に紋をあしらい、裏地にうっすらと黄金色に輝く龍の刺繍が施されています。それを羽織れば、まるで背中を龍が守っているように透けて見えます。
「とっても素敵よ!」
「・・・」
やや青白い顔のシュマさん、今にも泣きだしそうです・・・。
「大丈夫? そろそろ行くわよ」
私の後ろをとぼとぼ歩くシュマさん、ほら、胸を張って! と励ましの声をかけます。そして、皆が待つ舞台へ・・・。
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「シュマ殿、訓練校での研鑽の証として、巫女衣装と巫女舞の披露をどうぞ!」
私が宣言し、皆が守るなかシュマさんが前に進もうとします。でも、足がすくんだのか動けません。
「・・・ラシル先生」
消え入りそうな声で助けを求めます・・・。沈黙が流れ、生徒達がざわめき始めます。私は、シュマさんだけに聞こえるようにそっと声を掛けます。
「あなたの舞は、皆に見せるのではないのよ、龍に捧げるの!」
そう言って、私はこっそり金の指輪を外します。
私の背後で巨大な龍がずるりとうごめく感じがしたと同時に、シュマさんの目が大きく開かれます。
シュマさんの足元から、ざわざわとした呪縛が淡雪ように消えて行ったようです。彼女が前に歩を進め、舞を始めたことに私は安堵しました。
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初級の舞は、200を数える程の短い舞です。私は、舞台袖で舞を続けるシュマさんに気を配り、舞が終わる直前そっと指輪を自分の指へ滑らせます。
「シュマさん~!」
舞が終わると同時に、生徒達から拍手と掛け声が上がります。
「せ~の~、龍姫~!」
タマキちゃんが音頭を取り、女生徒達が声を揃えます。
シュマさんは、一瞬口元を両手で覆い、そしてゆるやかに微笑みながら礼で応えます。それは、凛とした輝きを放ち、まさに姫と呼ぶにふさわしい姿でした・・・。
私は、晴れやかな顔で戻ってくるシュマさんに、よく頑張ったね! と軽く肩を抱き寄せ労います。
「ラシル先生、私の願いを叶えて下さり、ありがとうございます・・・」
その後、皆と別れの挨拶を交わし、シュマさんは訓練校を旅立っていきました・・・。
シュマさんの願い、それは龍に会う事・・・。無事お披露目も終え、シュマさんは旅立ちます。タマキちゃん、最後いい仕事しました! 次回、学期末、です。




