シュマさんの憂鬱
今日は、シュマさんの初級舞いの仕上がりを確認しています。シュマさんは、見られている緊張もあるのか、所々ぎこちない部分もありますが、まずまずの出来栄えです。忙しいなか、刺繍を仕上げながら舞も修めないといけません。だけど、練習の成果がよく表れている舞になっています・・・。
「はい、良くできていますよ!」
「ラシル先生、練習が足りてなくてすみません・・・」
シュマさんは、やや不満そうです。訓練校に通える時間が半分になり、その分練習時間も減ってしまったとの事。見られることを意識すると、舞の順番を時々間違えそうになるとか・・・。
「それだけ舞えれば、あとは度胸です。さすがに中級に上がると厳しくはなりますが・・・」
「あの先生、本当にみんなの前で舞わないとだめですか?」
「ええ、お披露目は大事です。舞と一緒にシュマさんが作った衣装も、皆に見てもらわないと!」
「・・・」
シュマさんは、期間限定の在学のため、卒業の代わりに舞と作成した巫女衣装を皆に披露することで、履修認定をします。でも本番の事を考えると心配なのか、どことなく表情が冴えません。
「刺繍の方はどう? 出来上がったらみせてもらえる?」
「はい、もう大分出来上がりました。次回の練習で持ってこられると思います」
「じゃあ、楽しみにしているわね・・・」
終了の鐘が鳴り、シュマさんは機嫌よく教室を出ていきます。
シュマさんなら大丈夫よね・・・。
ふと私は、自分が巫女舞を初披露した時、緊張で焦ってしまった事を懐かしく思い出していました。
ちなみに、シュマさんの巫女衣装は、背中に龍の刺繍をするのだそうです。でも、その意匠をどうするか悩んでいたみたい、とはミサトちゃんからの情報です。シュマさんは、動いている龍を見たことがないので、生徒たちにどのような姿か聞いていたそうです。
「ウロコに覆われた長い胴体と短い手足、というのは皆共通だけど、龍の顔は意見が分かれて・・・。私は、口が長い獰猛な獣かな、と思ったけど、タマキが、角と髭が生えた鳥! って言って・・・」
そう、面白いわ・・・。 皆同じものを見ても、捉え方が違うのね・・・。私なら何と答えるかしら・・・?
誰もいない教室で、私はアムルさんからもらった糸で組紐を仕上げます。シュマさんの巫女衣装用です。そして、静かに龍の顔を思い浮かべてみるのでした・・・。
そうね、私もタマキちゃんの意見に賛成かしら。 似てないけど、何故か鳥なのよね・・・。




