シュマさんの巫女衣装
シュマさんが、予定より半月遅れで訓練校に戻ってきました。残り時間はあと1月しかありません。すっかり落ち込んだシュマさんに、残り時間を精一杯使って作業を続けなさい、と助言します。
「ラシル先生! ラシル先生!」
ところがアムル先生、あわててやってきます。後ろには、おろおろしたシュマさんも一緒です。
シュマさんが最後に仕上げた織物は全体の1/3ほど。しかし、今日見ると、織物が完成し、縫製まで済んでいたそうです。
「不思議だよ・・・。自分で部屋を使う以外は、いつもカギを閉めて帰ったのに」
「出来上がっているなら、後はシュマさんが刺繍をする。それだけで良いのでは?」
私は、悩む必要はないのでは? と仄めかしながら二人を見ます・・・。
「あんた、何か知っているのかい?」
「私は、地主神にお願いしただけですよ。二人共ご覧になりましたよね?」
「・・・」
私の言葉に、訝し気な顔をするアムル先生。
・・・・・・・・シュマさんが訓練校をしばらく休むと言ったあの時
二人が見守る中、私は魔方陣を描き、祈りを捧げました、
「古の盟約に従い地に住まう地主神よ。ここに、卒業の証として、時の流れが乱れてもなお巫女舞を修めんと願う生徒がおります。どうか、乱れを整え彼女が戻り来る迄にこの織物、すなわち巫女舞の衣装が仕上がりますよう・・・我龍巫女が願いとして聞し召し給へ、我が名はラシル・・・」
・・・・・・・・・
「・・・ああ、そういえば何か儀式をやったな? だが、まさか・・・本当にそんなことが出来るのか?」
「私はただ、地主神に乱れた時の流れを正し、シュマさんの衣装が間に合うようお願いしただけです。そして、その願いは聞き届けられた。つまり、神々はシュマさんが予定通り巫女舞を修めることを御認めになった、という風には考えられませんか?」
むう、と言葉に詰まるアムル先生・・・。
「すみません、私が予定通り戻ってこられればよかったのですが・・・」
「あら、シュマさんは何も悪くないのよ」
謝る困惑気味のシュマさん・・・。私は、ただ優しく微笑みます。
「シュマさん、あとは刺繍頑張ってね!」
ぶつぶつと何かつぶやきながら首をかしげるアムル先生に続き、優雅なお辞儀をして、部屋を出ていくシュマさんに声を掛けました。
あら? シュマさんの動きが洗練されてきたわ。練習の成果かしら?
私は、静かに地主神にお礼を申し上げるのでした・・・。
私は不思議な事が起きれば、そのまま受け止めちゃいます。でもアムル先生は違うのですね・・・。次回、シュマさんの憂鬱、です。




