それぞれの憂鬱
訓練校の庭園で、シュマさんがお友達に囲まれお喋りに夢中です。楽しい話から、いつしか龍の話へ変わっていきました・・・。
「朝、挨拶当番が龍巫女先生だったら、声を掛けられても振り返ってはだめよ」
「どうして?」
「先生の後ろに龍がいて、誰を生贄にするか品定めしているのよ!」
「キャー!」
皆、わいわいと大騒ぎです。
ところが、一人浮かぬ顔をした生徒が一人います。
「マリーちゃん、どうしたの?」
ミサトちゃんが見かねて声を掛けます。
「あのね、私、朝の挨拶の時、龍巫女先生に後ろから肩を叩かれたの。もう龍に目を付けられたかも・・・。だから、いつ龍の生贄にされちゃうかと思うと不安で、学校に来るのが怖いの」
ミサトちゃん以外、そばで聞いていた全員が、ごくりと息をのみます。
ところが、シュマさん、マリーちゃんの両手を握ってこう言います。
「大丈夫よ、その役目私が代わってあげる!」
「・・・?」
マリーちゃん、何を言われたか理解が出来ません。
「龍に言ってあげるわ。生贄は私よ、代わりに私を食べなさいって!」
マリーちゃん、シュマさんの言葉に大きく目を開き、ぽろぽろ涙をこぼしたかと思うと、俯いて、声を押し殺し静かに泣き始めます。そして、ありがとう、とつぶやきます。みんなも、うるうる、しています。
(ミサトちゃん、純真な乙女心をそっと見守ります。タマキちゃんは、姉様に睨まれ黙っています・・・)
実はシュマさんも悩みがあり、今、本気で龍の生贄になりたいと思っています・・・。
・・・・・・・・
放課後、アムル先生に伴われ、不安そうなシュマさんがやってきました。
「ラシル先生、私、これから1月ほど訓練校に来られなくなるの・・・」
どうしても休む用事が出来たため、衣装の作成が間に合わないかも、だそうです。
「では、舞の初級の型はすぐ教えます。お家で練習してね。それと織物だけど・・・」
私は、機織り機に半分も届かない織物を確認した後、シュマさんを見て笑います。
「機織りの魔法をかけましょう!」
「・・・?」
「大丈夫、あなたが戻る頃には仕上がっているわよ!」
私は、二人が見守るなか、シュマさんの巫女衣装が間に合うよう地主神に願いを伝えます。
そして、シュマさんは訓練校を後にして、出かけていきました。
それからしばらくすると、誰もいない教室で、笑い声と機織り機がパッタントントンと音がする、という噂話が生徒達の間で密かに囁かれるようになったとか・・・。
次回、リム副主宰、です。




