指輪の秘密
パッタントントン、パッタントントン・・・
ここは、トゥルクの職業訓練校。静かな部屋に、シュマさんが奏でる機織りの音が響きます。窓の外には、物珍しそうに眺める生徒たちの、顔、顔、顔・・・。
「ほら、早く教室に戻りなさい!」
アムル先生が皆を追い払います。
私は、アムル先生とシュマさんを横目に、ちまちまと繭を1つずつ黄金色に染めていきます。実は、早く終わらせようと、何個かまとめて染めようとしたのですが、うまく染まらないのです。おまけに、続けて染める場合、間隔を置かないとうまくいかないこともわかりました。
(何か、一度に染められるいい方法ないかしら?)
あと考えられるのは、指輪なのですが・・・。
もし指輪をはめて、私、龍に変身したらどうしよう?
そんなことになったら、生徒たちは大騒ぎよね!
でも、龍好きのシュマさんなら、喜んでくれるかしら・・・?
ああ、その前に、もし龍になって建物に傷でもつけたら奥様に怒られそう・・・。
いい加減で、妄想を打ち切って、こっそり指輪のペンダントを取り出します。
まずは指輪を繭にあててみました・・・色は変わらないわ。
思い切って、指輪を少しずつ指に近づけます・・・。
「ラシルさん」
「ひゃい!」
アムル先生に声を掛けられ、思わず指輪を隠します。
「今、染まっている分だけ、繭をもらえる? 試しに糸を撚って問題ないか確認をしたいの」
「あ、はい。どうぞ、どうぞ・・・」
私は、数十個の黄金色の繭を、アムルさんに渡します。
ふぅ~。
二人に背中を向け、目を閉じてこっそり指輪をはめました・・・。
(あら・・・、サイズぴったりだわ・・・)
・・・しばらくして恐る恐る目を開けると、何も変わっていません。
(そうよね、龍に変身する訳ないわよね・・・)
気を取り直して、数個の繭を触ってみます・・・やっぱり変化ないわ。
あきらめて、繭を1つだけにします・・・あれ? いつまで経っても染まりません・・・。
何か別の法則があるのかしら?
指輪を外すと、黄金色に繭は染まります・・・。
もう一度、指輪をして繭を1つだけ触ります・・・やっぱり染まりません。
どういうこと・・・?
(・・・!)
私の中に、ある考えが浮かびました! これは早く確認しなくては・・・!
授業終了の鐘がこんなに待ち遠しかったのは、一体いつ以来でしょうか・・・?
その日の夕方、誰もいない部屋で、私は指輪をはめて巫女舞をします。そこで、私の考えは確信に変わりました・・・。
次回、それぞれの憂鬱、です。




