14. スラム街
ルティは町外れにあるスラム街を歩いていた。この場所は以前、妹を助けて欲しいと言って来た青年が住んでいる所だ。
ニドはルティよりも背が大きく確りとした青年だ。
なん軒目の建物を通り過ぎ、屋根が傾いた家にニドの姿が見えた。
気付いた様に声を掛けて来た。
「ルティ様、先日はありがとうございました。あれから妹は元気に成り顔色も良くなって来ました」
ニドの妹のエルシアは背が小さくか細く見える。
「まだもう少し横になっていた方がいいな」
ルティは持っていた、ガチャの景品のポーションをニドに渡した。
「こんな高価な物は頂けません!」
ニドは驚き声を上げる。
「別にお金はいいですよ。それに僕は回復の魔法は使えないんでね」
「エリシアさんの飲み薬と思って下さい」
ルティはそう言って、リカバリーとクリーニングの魔法を唱えニドの家を後にした。
それから数日経ったある日の事、ルティは何時もの様に下水道を歩き、冒険者ギルドに立ち寄った時の事だった。
「ルティさん、ルティさん!」
ギルドの担当であるアリアさんが駆け寄って来た。
「えっ!どうかしましたか?」
すっとんきょうの様な反応をするルティ、その様を見てアリアさんがクスクスと微笑んだ
「実はですね。ミゼッタの町の南部にあるスラム街ですが、あの場所のゴミの酷さと言ったらどうする事も出来なかったのです」
ミゼッタの町の南部は、町を囲む城壁に沿って荒屋が乱立する場所がある。
「そうなんですか」
ルティはお茶を啜る、おじいさんの様に他人事の様に返す。
「そうなんですかじゃないですよ、ルティさん」
ルティに報告書を突きつけるアリアさん。
其処には..
ミゼッタの町南部 スラム問題
・ゴミ問題
・荒屋問題
・落人問題、腐敗異臭病気など
・治安問題
人が往来する以上に立ち止まる者も居る。
町が賑わいを見せるとは反対に、見えない闇も深く成り犯罪の要因となる。
「それで、これがどうしたんです?」
ルティは報告書を返して、アリアさんに聞き返した。
「あーもー、だったら自分の目で見て下さい」
アリアさんはルティの手を引き、町の中央にある物見櫓に引っ張って行く。
360度ミゼッタの町が一望が出来る場所でルティは驚き興奮する。遠くの景色を眺めて、初めて世界の大きさを知った様な感覚に捉われた。
「ルティさん下ですよ下、ほらあそこ..」
アリアさんが指を刺した場所は、町を囲む城壁伝いに伸びた建物で、他の建物よりも煌びやかに輝いていた。
「あれがどうしました? 」
新築戸建の家が並び、高級住宅地を思わせる清潔さが遠目でも伺える。
「だから言ってるじゃないですか、あれをやったのはルティさんです」
「えー」
冒険者ギルドの応接間
ルティは先ほどの続きを、アリアさんから説明を受け聞いていた。
その内容はスラム街にいたもの達の家が神々しく輝いた後、荒屋だった家が立派な建物に生まれ変わった。
病気に伏せっていた人が急に元気に走り回ったり、汚水の井戸から透明で清らかな水が湧き出した。
アリアさんは報告書の束をルティに渡すとこう言った。
「ありがとうね。皆んなルティ感謝をしてるんだよ」
(回復魔法も使えないプリーストなのに..)
「あっそうだ」
なにか閃いたのかルティは、ふと思いついた事をアリアさんに話してみた。
「前から思っていたんですが、下水道の管理を誰かにやって貰いたかったんですよ。固定収入となるのは大きんですが、一人でやる規模では無いですし人手が欲しいと言うか」
ルティは話しながら、今までやって来た事を思い出していた。
「そう言う事なら下水道施設の管理業務をギルドで行うのは如何かしら?」
アリアさんはルティが、なにを言いたいのか察した様に歩調を合わせる。
「今回の事でスラムの方から何名かの人を雇って、僕の手伝いをして覚えて貰って..」
それからまた小一時間、ルティはアリアさんと調整と今後について話し合った。
決まった事は?
下水処理施設・下水道の管理衛生はルティの手を離れギルドが管理し、必要な物品などはルティから調達補給する形となった。
(細かな調整はこれからだけどね)
ルティ自身、こんなに簡単に決まって行くとは思っていなかったのも確かだった。
実質、下水道管理はルティの手から離れた訳である。
回復魔法が使えずとも、ルティのもとに人が集まり新しい何かが芽生え出していた。




