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ふたりの天下びとー西播怪談実記草稿から紐解く播州戦国史ー  作者: 浅川立樹
第丗一章・雲州尼子大包囲【天文廿四年四月廿三日(1555年5月13日)~】
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雲州尼子大包囲1-3


「状況は分かり申した。ただ、そこで、毛利殿は我らになにをせよとお考えなのか」


 使者の言葉にやっと粟生田某が口を開いた。


「うむ、そこなのですが、お二方には、尼子の注意が西に向かぬように助勢をお願い申し上げたい」


 毛利の使者の話では、毛利軍と連動して備中三村の軍勢も動く。先ず毛利氏と三村氏が軍を動かし、毛利氏が陶・大内を、三村氏が尼子の注意を引きつける。「毛利殿だけで勝算はあるのか」という赤松方の質問に対して、使者は具体的には何も示さず、ただ「勝ちます」とだけ答えた。


「…………」


 戦という事象に関して、毛利元就という人物について誰も疑う者はいない。城郭の増改築、武具の備蓄にも余念はなかろう。だが、いかなる知略いかなる武具を有していたところで、圧倒的な物量が相手ではどんな軍略家でもやがては力尽きる。


 理屈は完璧。なにも矛盾はない。毛利軍の主力が陶・大内を討つ間に、出雲尼子の軍勢を他国が引き受け、それぞれが虎の髭を抜く覚悟で挑む。


 赤松惣領家は毛利の勝利に全てを賭けている。陶・大内が勝てば、新たに協力関係を結んだ尼子が背後の敵を恐れぬことなく、播備作に盤石の支配体制を築こうとするのは目に見えていた。


 わかり申した、と、自らの主君をどの様に説得しようかと、赤松家の二人が口を開こうとしたところで、毛利の使者が片手を上げてそれを制した。


「……ただ、ひとつ問題がござってな。備中の三村殿が今回の助攻を渋られ、約定通り、昨年同様備前に兵を出すのは構わないが、自分達の切り取り次第が認められなければ家臣達が納得せぬと申され、それを御屋形様が了承なされたのです」


「……は」


 思わず粟生田某の口から空気が漏れた。


 大問題である。切り取り次第とは、つまり、攻め落とした土地はそっくりそのまま自分達の領地として認めよ、ということになる。


 西備前の所有権を巡り、三村一族と浦上一族が以前より険悪だいうことは毛利も当然知っている。ここに来て勝手に所領を認めてしまうことは、後日新たな争乱の火種となるのは明々白々。迷惑千万極まりない。


「このことを浦上殿には」

「……恥ずかしながら、まだ何も」


 絶句。今度こそ赤松家の二人は空いた口が塞がらなかった。


「さて、お願いがあるのですが、赤松家のお二人には浦上殿が逆上せぬよう、理由付けとお口添えをお願いできませぬか」


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