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俺を殺したクラスメイトが魔王だったので喜んで討伐させてもらいます。  作者: 蒼龍
第4章 集うは勇者、暗殺者、魔王
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疑念は募る


 アトランティス帝国から帰還した俺たちは、真っ先に王子の元へと向かった。

 

「王子、帰還いたしました!」

「おかえり、何か収穫はあったかい?」

「いえ……それどころかアークの味方に最強の精霊が……」

「それは困ったな、アークはサタンの封印を解こうとしているんだろう?」


 王子は溜息をついて問いかけた。


 確かに、アークはサタンの封印を解こうとしている。だが、サタンの封印を解く術をアークが持っているとも思えない。

 グリモワールの最後の願いで、サタンの封印を解こうと目論んでいるなら話は別だが……


「そういえば、サタンを再封印したのはイオリだったんだろう? 一体どうやって……その時の状況を詳しく教えてくれないか?」


 王子は、思い出したように問いかけた。

 俺に聞かれても、答えられることはない。だって、俺もあの時何が起こっていたのか、見ていなかったんだ。

 サタンの暗黒魔法のせいで気絶していたみたいだし。目が覚めたら全て終わっていた。あの二人に聞かないと……。だけど、このことを口外するのは禁じられている。

 

 一体どうすれば……



「それは我がやった」



 空間に穴が開いたと同時に、ルシファーが姿を現した。

 俺が、これ以上隠し通すのは無理だと分かったのか、顔を顰めている。



「お前……」

「久しいな、ゼル。それに白露……セラフィム」


 ルシファーさんは懐かしむように言った。

 どうやら王子までも、ルシファーと面識があるようだ。


「なぁ、あいつが死んだから……お前は消えたのか?」

「……だったらどうする。貴様には関係のない事だ」


 ゼルさんが神妙な顔で問いかけるも、ルシファーはそれを軽くあしらう。答えたくない質問のようだ。

 だが、俺もアンジュの一員である以上、サタンの事やこれからの事は知っておきたい。それはフルルやリリアン、アスタロトさんも同じだと思う。



「あいつって……誰ですか?」

 ここで、俺は敢えて問いかけた。

 ここで聞いておかないと、一生聞けないような、そんな気がしたからだ。


「これ以上隠すのは難しい。ここにいる皆にだけ、教えておこう」


 王子は溜息をついて切り出した。

 


「ルシファーの昔の主は、俺の相棒と一緒にサタンを封印した……ディアーブルの元姫だ」



 ゼルさんの一言に、皆は驚愕し、白露さんは俯く。

 サタンの封印の話は前にゼルさんが話してくれたから知っていた。だが……なんでディアーブルの姫が、ゼルさんの相棒と一緒に……? そして、ルシファーの元主だなんて。とてもじゃないけど信じられない。


「サリーは……とても偉大な精霊魔法使いだった。五大精霊を従えていたのも……」

「アルテミスと紅玉が言っていた……?」

「そうじゃ、それがサリーじゃ」


 白露さんの言葉にさらに驚く。


 そうだ、あの時紅玉が言っていた言葉。


『イオリ様、私達五大精霊は元々ある精霊魔導師に仕えていました。ですがその魔導師が死ぬ直前、私達の力が悪用されることを防ぐために五人の精霊をそれぞれ違う場所に封印したのです。そして私達五大精霊を知る者は私達の元々の主の身内のみ……』


 あれがルシファーの元主であり、ディアーブルの姫だった人……

 先生が五大精霊の存在を知っていた理由……アンジュの研究に携わっていたからだったのか。


「それより、サタンの封印を解こうとしている輩がいるというのは本当か」

「ああ、アークというんだが……あの、ネビアルの子だ」


 そういえばそんな話もしていたな……サタンに殺された父を知っていたとかなんとか……それなら尚更アークを倒すのは心苦しいんじゃないか? 同胞の子となれば、簡単には討てないはず。




「復讐……か」



 

 ――……っ?!


 ルシファーの一言に肩が跳ね上がる。アークの話をしているはずなのに、何故か自分の復讐心を見破られたかのように感じた。



「サタンを倒す、というのは不可能だ。封印を繰り返し、永久的に活動できなくする以外の方法はない」

「だが、アークは聞かないと思うぜ。あの様子じゃ、絶対に復讐するつもりみたいだ」

 

 ゼルさんの言う通り、アークが俺たちの言うことを聞くはずがないというのは目に見えていた。

 こんな命がけの復讐をしたところで、亡くなった両親は喜ぶわけないのに……。


「もし、そいつが封印を解いても、また我が封印する。そのサイクルがある以上、サタンは弱り続けるはずだ」

「弱り続ける、というと?」


 白露さんは問いかけた。


「我の封印魔法は特殊だ。闇の力を持つものを蝕む能力を持っている」


 そう、光の心を持つ者を癒し、闇の心を持つ者を蝕む特殊な力。ルシファーはきっと、あの精霊の存在は隠し通すつもりなんだろう。


「だが、封じる前に戦闘が始まれば、どうなるかは分からんぞ」

「ふむ、アークが復讐を企んでいる以上、それは難しいだろうね」


 王子は「どうしたものか」と顎を触る。

 これといった解決策も思い浮かばない。俺に出来ることと言ったら……


「あ……」

「どうしたんだ? イオリ」

「いえ……何でもないです!」


 あの精霊の名前を思い出す、これが大きな手掛かりになるんじゃないか? あの精霊と契約できれば俺は……


 だが、先生でも分からない精霊の名前を知るなんて……知る術がない、一体あの精霊は……



「……とりあえず、いつ最悪の事態が起きてもおかしくない状況だ。各自警戒をしておこう」

「「はい!」」




 ◆◇◆



「イオリっ!」


 自室に戻ろうと廊下を歩いていると、アスタロトさんに呼び止められた。

 

「どうしたんですか?」

「あのさ、夢の話……覚えてる?」


 夢……ソルシエールの森で言っていた〝誰かが主軸の夢を見る”ってやつか。

 そういえば、その帰りも寝言で俺の名前を……


「はい、覚えてますよ」

「また、見たの……。いや、その前にも何度かあったんだけど、言いそびれちゃって……」

「どんな夢だったんですか?」


「それが……――……ッ?! ゲホッ!」


 アスタロトさんは口を開いた瞬間、咳き込む。それと同時に廊下の床に飛散する赤い液体。

 俺が状況を理解したのは、ワンテンポ遅れてからだった。


「アスタロトさん?! 大丈夫ですか?!」

 

 血……なんでこんなに突然?


「……だい、じょうぶ。……ケホッ……ごめん、大丈夫よ」

「でも……大丈夫なわけ……」

「後で医療室へ行くわ。これだけ、聞いてほしいの。イオリの精霊が言っていた、元サリー様なんだけどね」


 アスタロトさんは切り出した。

 矢神じゃない、前のディアーブルの姫……ルシファーや紅玉、アルテミスの元主……。


「アークって男のお父さんと関係があるの……きっと、サリー姫を庇うために……!!」

「え……? 何でそれを皆に言わないんですか!」

「言えないの……理由も言えない。イオリにしか……」


 アスタロトさん……? 言えない理由って何だよ……

 でも、きっと言えない理由はちゃんとあるはず。無理に聞かない方がいいだろう。


「その時に聞いたの。〝サリーを見つけるまで、僕は世界を壊し続ける”って……」

「でも、そのサリー姫はもう……」


 サタンを封印をするために、ゼルさんの相棒と……

 それなのにサタンは探し続けている……サタンはその記憶まで失っているのか? いや、だがサリーという名前は覚えていると言っていた。


「一体サタンはどこまで記憶……」


 俺の言葉を遮るように、廊下に響く怒号。




「……くそッ!! 何でなんだよ!!」

 



 この声は……ゼルさん? 一体どうしたんだ。そう思い、声をかけようとした矢先、白露さんはゼルさんにぴしゃりと言い放った。


「ゼル、声を荒げるでない。他の者に聞かれたらどうする」


 白露さんの言葉で、俺たちは息をひそめて隠れた。どうやら二人は寝室の前で話しているようだ。大丈夫、俺たちのとこには来ないだろう。


「だがよ……俺たちは間違ってたんだ。やっぱりあんな事するべきじゃなかったんだ」


 何の話だ……? あんな事って……このまま聞いていていいのか、と罪悪感が沸いてくる。知っちゃいけないことまで知ってしまいそうで……


 きっとさっき王室で話した事とは別件だろう。あの件については、あの場にいた皆に教えると言ってくれた。俺はそれを信じてる。





「やっぱり……あいつを殺したのは間違いだったんだ……くっそぉぉ!!!!」





 ゼルさん……? 殺したって……誰を……

 俺の頭の中は疑問で埋め尽くされた。ゼルさんが誰かを殺した……? 一体だれを、何のために?


「違うぞ、ゼル。……禁忌を犯した私は、裁かれるべきじゃ……全てが終わったらその時は……」


 白露さんも意味深な言葉を続けた。

 禁忌を犯して殺す……?


 それって、俺が矢神に殺されたのに関係あるのか……?


 そんな訳、ないよな……?



 そして、二人は謎を残したまま、寝室へと姿を消してしまった。


「殺したって……どういう事よ」

「分かりません……けど、聞いちゃいけないこと聞いちゃったのは確かですね」


 アスタロトさんは神妙な顔つきで黙りこくる。

 こんな闇の深い話を聞いてしまったんだ、それも中途半端に。後味が悪いに決まっている。


「二人は何かをあたしたちに隠してる……ってことよね?」

「恐らく。俺たちに知る必要のない事だから言わないか、何か裏があるか……どっちかでしょうね」


 二人の話を聞いた瞬間から、俺の信用は疑念へと変わり始めていた。

 別に信用できない訳ではない。現に俺が生きていて、安全に暮らせているのは二人のおかげだ。勿論感謝している。だが、仲間として行動する以上、隠し事をされるのは何だか嫌だ。

 仲間なのに、話してもらえないのか、と思ってしまう。


 だが、それは俺の勝手な我儘だよな。

 二人にだって話したくない事はあるだろう。あの話が、さっきの件と関係ない話なら尚更だ。


 あぁ、もう……俺は一体何がしたいんだ、どうするべきなんだ……何もかも分からなくなりそうだ。



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