表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を殺したクラスメイトが魔王だったので喜んで討伐させてもらいます。  作者: 蒼龍
第4章 集うは勇者、暗殺者、魔王
51/54

二つの顔 ※

※がついている話には、グロテスクな表現が含まれています。


「消えたって……どこに消えたんだよ!」

「それが分からぬから、皆驚いておるのじゃ」

「親を見つけたんじゃない? ……めんどくさいから早く城行こうよ」


 夫婦漫才を始める二人と、めんどくさそうに一人で城の方へと歩いていくリリアン。


「このまま女の子を探すのも無謀です、リリアンも一人で行こうとしてるし……俺たちも城へ向かいましょう!」

「あ、あぁ……!」


 俺たちはリリアンの後を追って走り出した。

 元々体力がない俺にとって、崖上までの一本道を駆け上がるのは想像以上に苦痛だった。

 登り終えると、ゼェゼェと過呼吸のように喉が鳴る。



「だ、大丈夫でござるか?!」

「なん、で……皆は平気……なんで、すかっ……!」


 不思議そうな顔で俺を眺める皆。この時代は視力が良いだけでなく、体力も高いなんて……

 そして、街の景観に似合わない、豪勢な城……。この城だけ別の国にあるような錯覚を感じた。


「城だけ、街並みにそぐわない……とりあえず入ってみますか?」

「あぁ、って……お出迎えか」



「ゼル殿、ご無沙汰しております」

「アトラス帝王階下……」


 ゼルさんの視線の先には、小太りの老人が。

 豪華な装飾や刺繍の施されたロープを身に纏っている。この人がこの国の王だろう。



「ささ、場内へお入りくださいませ」


 そう言って、王は俺たちを中へと通してくれた。

 国民はボロい酒場で昼間から大騒ぎ、反対に王はこんな豪華な城で暮らしている……か。よく反乱が起きないな。


 中は、容易に想像できた物と大体同じだった。入口から応接間まで一直線に伸びた赤い絨毯。二階まで吹き抜けになっている。両端にある階段から登れるようだ。


 二階建てか……あの外観にしては思ってた以上に質素というか意外というか……。もう少し外見に合った内装だとばかり思っていた。


「本当にお久しぶりでございます。……それで、本日はどうなさったのでしょうか?」


 俺たちをソファに座らせると、すぐに王は切り出した。


「アトラス帝王階下の命を狙っている人間がこの国に潜んでいます。本日はその護衛に参りました」

「なんと……それは一体……」

「ディアーブルの姫、それから……アークという男です」


 ゼルさんが説明し終えると、王は〝何故自分が?”と言いたげな表情をしてみせた。この反応だと、二人と面識すらないんだろう。あの二人はどうして、何を基準にして標的を選んでいるんだ?


「そ、そういえば、皆様。お名前は?」

「こちらは女房の白露。それに……イオリ、リリアン、アスタロト、フルルでございます」

 

 ゼルさんの紹介に合わせて、皆は一礼ずつした。紹介し終えると、王は目を見開いた。


「フルル……さん」

「……? どこかでお会いしていたでござるか?」

「あ、いえ……! 何でもございません」


 この王、フルルを知っているのか? この反応……

 目を逸らした後も、チラチラとフルルの様子を伺っている。



 ◆◇◆


「あのオヤジ、フルルに一目惚れでもしたんじゃないの?!」

 通された客室で、アスタロトさんの怒号が響き渡る。 一目惚れというより、困惑していたように見えたが……まぁ、俺には恋愛のあれこれは分からないし。もし一目惚れだとしたら……何歳差になるんだ?



「……っ?!」



 そんな事を考えていると、ソファに横になっていたリリアンが突然飛び起きた。次は一体何だっていうんだ……



「この部屋……臭う」

「確かに、お香の匂いが……そうか、鼻が良いリリアンには強すぎたのか?」


 この客室に入った瞬間から、少しキツめのお香。スパイスと甘さの混ざった何とも形容し難いエスニック風の香り。今に始まったことじゃない。この部屋に入った瞬間から匂っていたのに、相当眠かったんだろう。


 と、その刹那、真横で銃声がした。耳をつんざく様な音と、突然の出来事で心臓がビクりと悪く跳ねる。その銃声の元は勿論リリアン。そして銃口の先には粉々に割れた鏡が。


「ちょ、リリアン! 何してるんだよ!」

「……煩い」


 めんどくさそうに俺を睨みつけるリリアン。

 こんな高そうな装飾の施された鏡を壊すなんて……一体どうしたんだよ。


「リリアン……? 何かあったでござるか?」

「監視されてる。気を付けた方がいい」

「これは……監視用魔道具……リリアンの言う通り監視されておる」


 白露さんは破片を拾い上げ、呟いた。

 監視用魔道具……? 未来でいう監視カメラの様なものか? 城の客室に監視カメラ。防犯対策として置いてあるのならば、何もおかしくはない。



「それに、これは死体の臭い。……間違いない」



 リリアンはそう続けた。

 この客室だけお香がキツいのは死体の臭いを隠すため……? リリアンの感覚、視覚、嗅覚は今までの経験上外れた事がないほど正しい。それを信じるなら、この部屋のどこかに死体が……



 監視されていたり、死体があったり……かなり物騒だが、ただ、遺体を埋葬しているだけじゃないのか? それに、監視だって防犯と言われれば納得できる。警戒するに越した事はないが、過敏になりすぎな気もする。


「皆固まって行動しよう。その方が安全だ」

「各自警戒を怠る事のないようにするのじゃ」

「とりあえず、今日はここで一泊しよう。リリアン、何か感じ取ったら教えてくれ」


 嘘だろ……こんなお香臭いとこで一泊すんのかよ……しかもこの部屋のどこかに死体が隠れてるっていうのに。


◆◇◆



 なんだかんだ言って、ベッドに入ってしまえば一瞬で眠りに付けた。だが、時刻は午前二時を回ったところ……


「ん……何だこの音……」

 スマホのバイブ音のように持続的に鳴る、低い音で目が覚めた。


「リリアン! この音は!」

「さぁ、分からない。……でも、音が何かに籠ってる」


 確かに、密室から少しだけ音漏れしたような聞こえ方だ。一体これは何の音……


「とりあえず王の安否を!」



 ゼルさんの言葉と共に、俺たちは部屋を飛び出た。

 


「王座が消えてる……」


 客室から出た後、廊下を曲がってすぐ王座があった。だが、言葉通り消えている。



「よく見るのじゃ! これは……」


 王座に駆け付けた白露さん。その視線の先には、下へと続く隠し階段が。王はここに逃げたんだろう。だが、その先は地下……逃げ場にはならないと思うが……。



「行こう、まだ間に合うかもしれねぇ!」

 ゼルさんに続いて、俺たちは階段を駆け降りた。降りれば降りるほど、次第に鼻につくようになった、不快な臭い。未だ嗅いだ事のない臭いだが、これは恐らく……



「死体の臭い、さっきよりも強い」

 リリアンは険しい表情で呟いた。

 もう手遅れなのか……? いや、死体の臭いは俺たちが客室に入った時からしていた。王が死んだとは決まった訳じゃない、どうか生きていてくれ……!



 そう思った矢先、大きな木製のが見えた。きっとこの先に隠れようとして……



「大丈夫か!!」



 ゼルさんは叫ぶと共に、勢いよく扉を開いた。

 俺たちが脳裏に浮かんだ景色は、矢神かアークに殺された、または殺されそうになっている王。


 だが、現実はそれとはかけ離れた、誰も想像できないような光景が広がっていた。




 鉄格子に入れられた弱り切った人間は、布で口元を塞がれていて、低い唸り声をあげていた。きっと音の正体はこれだ。

 そして、中央に置かれた大きな机……いや、まさに手術台だ。その上には腸を引きずり出された死体が。きっと麻酔はされていない。目を見開いて死んでいた。


 それだけじゃない、地面には手足のない死体や、腹が裂けて中身のない死体まである。数え始めたらきりがない、いや、数えたくなんかない。


「うっ……!」

 フルルとアスタロトさんはその光景を見てしゃがみこんだ。


「こんな部屋……何のために」

「バレてしまっては言い逃れできませんねぇ」


 その言葉と共に部屋の奥から出てきたのは、あの王だった。着ていた服は血まみれで、恍惚の表情を浮かべた。


「貴様、何故この様な事をする……!」

 白露さんが王に詰め寄ろうとした矢先……



「ただの悪趣味よ」



 カツカツとヒール音を鳴らしながら、聞こえてきた声。扉の方を振り返ると、矢神とルプスの姿が。


「毎晩毎晩、貧しい国民や子供を攫っては、人体実験という名の拷問を続けているのよ」

「だからどれだけ貧しくても王に逆らう人間はいない」


 だから国民はこんな格差にも耐えていたのか……

 きっとこの王に理由を問いただしても無駄だ。きっと理由なんてないんだ。


「……っ! あの少女は……もしかしたら昼間の少女がいるかもしれないわ!」

 アスタロトさんは立ち上がり、辺りを見渡した。

 そうだ、あの少女は突然消えた。矢神の言う通り、王が子供を攫うのだとしたら……!



「その心配はないよ!」



 またしても部屋の奥から一つの影が現れた。この声……今まさに俺たちが探していた……


「な、何で……」

「何でって、この国のお姫さまだからだよ! ね、パパ」


 そう言って少女は王に笑いかけた。

 この国の姫……? という事はこれに加担しているのか……?


「どうしてこんな事……間違ってるでござる! 皆生きてるのに……何でこんな事……っ!」

「フルル……」


 フルルは涙を流しながら訴えた。

 そうだ……フルルは誰よりも傷ついてるんだ……。こういう光景、一番見たくなかったに違いない。




「そうそう。フルル、と言ったかね? クアンティー族だろう? ()()()()()()とはねぇ」




 王は静かに語る。

 〝()()()()()()”……? コイツ……



「え……?」

「いやぁ、懐かしい懐かしい。あの獣人は実によかった。尻尾を引きちぎるといい声で鳴くんだ」

「アンタ……もしかして」



「ああ、クアンティー族の元飼い主さ。まぁ、もう皆死んじゃったがな」



 王は大きな笑い声と共に、言い放った。罪悪感など微塵も無い、そんな態度だ。

 王の言葉に、立ちすくむフルル。アンジュの皆は怒りに震えている。



「…………ッ!! 貴様ァ!!!」

「……!! リリアン! やめるでござる!」

「あ゛?! こんな奴、生きる必要ない! ここで殺す!!!!」


 王の額に銃を突きつけたリリアンの腕を必死に引き留めるフルル。

 何で……フルルの家族を殺した奴が、目の前にいるっていうのに……




「絶対に許せないでござる……本音を言うと生きる必要ないって思う。だけど、みんなの魔法は人を殺すためにあるんじゃない。だから……殺しちゃ駄目でござる……っ!」




「フルル……悪ぃ。コイツは絶たなきゃいけない悪なんだ」

「ゼル殿……ッ!!」




「覚悟しろ。お前に殺された人間の恨みも全て、この剣に…………豪乱焔陣!!」


 ゼルさんの剣が炎を纏った瞬間……



「ヘス、起動しなさい」

「はぁい」




 少女の返事と共に、一瞬で意識が途切れる。

 重くなる瞼、それに逆らうことはできなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ