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俺を殺したクラスメイトが魔王だったので喜んで討伐させてもらいます。  作者: 蒼龍
第3章 勇者イオリ、光の王を従えたい。
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暗雲渦巻く対峙


 ようやくアンジュ帝国に繋がる跳ね橋に辿り着いた。気が遠くなるほど不安で落ち着かない時間だったが問題はここからだ。あのアークという男は既に()()を準備しているらしい。そして“時間稼ぎは終わり”らしい、嫌な予感しかしない。

 

 頼む、いつもの平穏なままでいてくれ。いや、せめて手遅れじゃなければ……


「白露はアスタロトと王子の護衛を、フルルは町の人々を避難させるように兵に伝えてくれ。俺はアイツ等を探す、精霊に詳しいイオリもついて来てくれ!」

 ゼルさんのいつもに増して真剣な気迫に一瞬で空気が変わった。俺達が何をするのが最適か知り尽くしているかのような的確な命令。俺達は一斉に「はい!」とそれぞれの道へと走り出す。


 俺はゼルさんと行動……って事はアイツ等と戦う事になる。きっとゼルさんと一緒なら大丈夫だと分かっているが、不安だ。

 またあの時みたいに精霊を封印されて何もできないまま終わるかもしれない、それ以前にゼルさんの足手纏いにならないか……? 最悪こっちには林檎がある。相手よりは有利なはずだ、大丈夫……。


「イオリ、急いで自分の部屋に戻って敵のデータを取ってきてくれ。必ず必要になる」

「分かりました!」


 そうだ、先生からもらった五大精霊のデータがあったんだ。確かにその情報があればもっと有利になる。もしかしたら敵の正体やどんな魔法を使うか予想する事が出来る。そうなれば後はゼルさんが……


『イオリ、MPMを開いて新着情報を押すんだ。ずいぶんレベルも上がってるからきっとこれからの戦いで使える機能も解放されているだろう』


 MPMからミカの声が聞こえた。船の中でステータス確認はしたものの、能力確認はずっとしてなかったな、この間に簡単に確認しておこう。

 俺はミカに指示された通りMPMを開き“新着情報”の文字をタップした。


 ≪柊 威織、経験値を3278獲得、レベル14となります≫


 突如浮かび上がってきた通知。俺の知らない間にこんなにレベルが上がっていたなんて……船で確認した時から4もレベルが上がってる。

まぁ、それもそうか、ここ最近沢山魔法に触れ合う機会があったし精霊魔法も沢山使った。何はともあれ思った以上にレベルが上がっていて嬉しい。よし、あとはステータスだな。


────────────────────────








◇柊伊織◇ 職業:精霊魔導師Lv.14




HP……9999×3

MP……298




攻撃……68

防御……162

運 ……94

機敏……64

知能……230




【能力】


輪廻転生3 精霊契約(ルシファー、ハルバード、紅玉、アルテミス) 魔力集中 ××を××す×× 魔力吸収 五大精霊を従えし者◆◆








────────────────────────


 見ない間によく分からない能力が増えている。「五大精霊を従えし者」か。その横についている菱二つは多分契約した精霊は二人という事だろう。そして魔力吸収って何だ? 魔力を持つ人間から吸収して自分の魔力に変換とかそういう類か?


『レベル6で精霊検索、10の時点で近くに精霊が居るか探知できる能力を使えるようになる。ただしどちらの能力もレベルⅠだ、自分より格下の精霊でないと使用する事が出来ない』

 ミカは画面を指差しながら丁寧に説明してくれた。自分より格下の精霊にしか使えない能力か……まあ無いよりはいいだろう。


 やっとの思いで自室まで辿り着き、机の引き出しに入れてあった五大精霊のデータ一覧を手に取る。

 先生、一体こんな情報何処から仕入れているんだ? 精霊魔導師でさえ自分より格下の精霊の情報しか見れないなら尚更。先生は一体何者なんだ……


「王が殺されるというのに暢気なものだな」


 ……っ! コイツ……気配がなかった……


 突然背後から聞こえてきた声に咄嗟に振り返る。そこには浜辺で見かけた銀髪を肩まで伸ばした、紺の眼を持つ男。

 

 ――これがアークの素顔……


「貴様は何の為に戦う?」

 アークからの唐突な問いかけに戸惑う。

 何故今そんな事を聞くんだ……? 俺の事を探ろうとしている?


「……最後は、何かを守る力よりも強い執念が勝つ。貴様らに勝ち目はない」

 探りを入れている訳では無さそうだ。守る力? 執念? ……何の事だ?


「さっきから何の話をしてるんだ、こんな所で油を売ってていいのか?」

「フン、何も知らない雑魚め。教えてやろう、俺が何の為にグリモワールを集めているか」


 コイツ……自ら敵に情報を与えるなんて……一体何を考えているんだ? だがコイツの目的も気になる。きっと聞いておいて損は無い。


「貴様は“終焉のサタン”を知っているか?」

「いや……知らない」

「あの封印された悪魔だ。ゼル・テュールから聞いているだろう」

 封印された悪魔……そういえばイズンもそんな話をしていた。やっぱりサタンってあの悪魔の事か……だとしたら何故コイツらもサタンの存在を知っている? 封印を解いたのはコイツらか?


「それで? そのサタンがどうしたって言うんだ」

 今まで馬鹿にするように俺を見ていた瞳は一変して憎しみに染まった。


「俺の両親はアイツに殺された。それだけじゃない、この傷が見えるか?」

 そう言って前髪を掻き上げると今まで隠れていた左目が姿を現す。そこには醜く抉られた古傷、完全に目が潰されているようだ。

 敵ではあるものの、流石にこの事実には言葉が出なかった。両親を殺されただけでなく一生治る事のない傷を負わされる……まるで“俺がお前の親を殺したことを忘れるな”とでも言われているような、そんな刻印を。


「俺がまだ物心もついてない頃、ある人物を求めてサタンは家に訪ねてきた。そして俺の目の前で父の首が飛んだ、その後すぐに母も切り裂かれ……二人は即死だった。俺だけが助かったんだ」

 あまりにも惨くて残酷な情景が浮かび上がる。そうだよな、何の理由もなしにグリモワールを集めているはずがない、皆何かしらの目的があるんだ……。俺はそれを無視してアンジュの考えこそ正義と思い込んでいた。でも……


「だからと言って犠牲者を出すのは絶対に違う」

「フン、綺麗事を。貴様にはいないのか? 殺したい程憎い奴が」

 俺の全てを見透かしているような真っ直ぐな瞳にぐうの音も出ない。俺が矢神に殺されたことも、復讐をしようとしている事も知らない筈なのに……全部バレているような、そんな目だ。


 黙って反論しなくなった俺に男は溜め息をつく。だってこれ以上反論できる訳がない、コイツの復讐は俺の復讐よりも筋が通ってる。こんな正当な理由なら、きっと誰もが同情し応援するだろう。それにコイツも五大精霊の一人に認められる程の魔力を持っている。俺にはコイツを止められない、色んな意味で。


「復讐には犠牲が伴う。だが考えてみろ? 俺の復讐が叶ったとしたらこの世はどうなる?」

「サタンが消えたら……」


 きっとこの世を脅かすものは無くなり平和になるだろう。だからと言って各国の王が十人も殺されていいはずがない、どちらも叶える方法は無いのか?


「俺の正体を知りたければゼル・テュールに聞くと良い。"幻影の暗殺者(アサシン)”を知っているか? と」

「なっ……!」

 アークはその言葉と共に消えてしまった、それはまるで影の様。幻影の暗殺者……それがアークの正体か。それよりも……まずい、このままだと王子が殺されてしまう、早くゼルさんと合流しなくては。


 色々な感情やモヤモヤが渦巻く中、その心情を映すかのように空もまた雲を纏い、姿を隠す。

 何が正しくて何が間違いなのか……俺はだんだん分からなくなってきていた。

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