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俺を殺したクラスメイトが魔王だったので喜んで討伐させてもらいます。  作者: 蒼龍
第3章 勇者イオリ、光の王を従えたい。
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泡沫の残桜

 

 俺達は夜の城下街を駆け抜ける。


 空は怪しく灰色。満月と眩しい雷光だけが、この不穏な夜を照らした。

 お願いだ、無事でいてくれ。俺達が馬鹿だったんだ、あの二人の戦略にまんまと嵌って時間稼ぎされて……


「おい! どうなってるんだ!」

 ゼルさんは近くにいた兵士に問いかけた。だがその兵士の顔は絶望に染まっていて……


「あ……あぁ……城に二人の侵入者が……そして……うぁぁああああああ!!!!!!!」

  兵士は泣き崩れた。その表情で全て察してしまう……やっぱり王は殺されてしまったのだと。戦う音は聞こえなかった、だとしたら暗殺か? だが……城に入るにはこの門を必ず越えなくてはならない。それなのに辺りに居る兵達は無傷……


「何故……何故こんな事を……!」

 白露さんは人混みを掻き分けて城へと向かって行く。そして、白露さんの後を追おうとした俺の足を必死に掴む兵。


「陽葵様まで……くっ……」

 陽葵さん……?! そんな訳がない。だって俺達は陽葵さんの背中を見送った、もうこの国にはいない筈。


「大丈夫です、陽葵さんならこの国から脱出しています」

「違う……この目で見たんです……陽葵様は、燃える城に一人で……そして悲鳴が……」

 何だと……? 陽葵さん、引き返してきていたなんて。そして巻き込まれて……そんな、どうして……


「クソッ! 白露を追うぞ!」

 ゼルさんは舌打ちをして走り出した。まだ奴らの手下が城に居たら白露さんまで危ない、これ以上犠牲が増えるのは絶対に阻止しなくては。

 

 城に近付くにつれて人混みが激しくなっている。それに呼応するかのように赤々とした炎が城を覆い尽くしていた。

 何だよこれ、こんなんじゃ助けるも何も……


 その燃え盛る炎を鎮めるかのように、ぽつりぽつりと雨が降り出した。徐々にそれぞれの方向へ去っていく国民達。城の扉の前には、膝から崩れ落ちた白露さんの姿が……


「さっき笑顔で送り出したではないか……それなのに、どうして……ッ!」

 白露さんの手には鮮やかな桜をモチーフにした簪。きっと陽葵さんの物だろう。ということはやっぱり、わざわざ引き返してたのか。王に続いて陽葵さんまで犠牲になるなんて……


「白露……」

「これほどの雨ならもうじき鎮火されるであろう。早くアンジュへ帰らねば……準備は出来ておる」

「白露」

 そう言って不自然に微笑む白露さんをゼルさんは強く抱き寄せた。俺から見ても強がってると分かる。きっと声を上げて泣きたいだろうに、ここでお別れをしたいだろうに……こんな時まで強がって平然を装うなんて、そんなのらしくない。


「うぅ……っ、私は大丈夫じゃ。こうしている間にも奴等はアンジュを狙っておる。泣くのはそれが終わってからにする。だから早く……」

「……分かった。その時は傍にいるからな」

 こくりと頷いてそっとゼルさんから離れ、手に持っていた簪を桜の枝に留めた。他のどの桜よりも一際鮮やかで綺麗な木……陽葵さんの瞳のようでなんだか涙が出てきた。



 ◆◇◆



「彼奴らはかなりの手練れじゃ。少しでも気を抜くとアンジュまで崩壊してしまう」

 

 白露さんは借りてきた馬車の中できっぱりと言い放った。アイツらが只者じゃないことくらい俺でも分かる。だが、アイツらにどうやって勝つ? 相手には五大精霊のイズンともう一人の精霊……恐らく城を破壊した者も数人はいるはずだ。そして黒幕のアークという男……アイツの魔力がどれほどなのかは分からない。だがこんな手練れを部下に付けるほどの男、きっと一番力を持っているはず。


「相手がどんな野郎だとしても……アンジュだけは絶対に守る」

 ゼルさんは拳を握りしめて宣言しその言葉に皆は頷く。アンジュを守りたい思いはここに居る皆一緒だ。絶対にあんな男の好きにはさせない、あんな物騒な魔導書の一ページなんかにはさせない!


「それで、これなんだけど」

 アスタロトさんはバッグの中をガサガサと漁りながら告げた。そこから取り出されたのは金色の球体、きっとイズンが落とした物だろう。


「さっきの精霊が落とした物を盗んだの、何かヒントになるんじゃないかって」

 アスタロトさんは金色の球体をゼルさんに差し出した。球体を受け取ったゼルさんは不思議そうにそれを見回す。


「これは……林檎か? でもよ、何で金に光ってるんだ?」

「イオリなら分からぬか? 彼奴は五大精霊と言っておった、データがあるのではないか?」

「それが……必要最低限の物しか持ってきていないので城に帰らないと……」

 申し訳ないと頭を下げる俺に溜め息をつく白露さん。元はといえば目的はリゾート地、こんな大事になるなんて思いもしてなかった。


 林檎は一口齧られている。そしてこの林檎、初めはよく見るただの赤い林檎だった。それなのに金色に変わった、それは何故?

 あの村人に林檎をぶつけた瞬間金に変わったんだ、その村人は徐々に生気を失っていった。これはきっと生気を吸い取ったから金に輝いた……イズンにとってこれはエネルギーの様なものなのか? それとも、あの長身男みたいに生贄の数で強くなるのか……? ダメだ、この林檎一つで推測なんてできない。


「すっごく美味しそうでござるね~! 食べてもいいでござるか?」

 涎を垂らしながら林檎に近付くフルルに対し、咄嗟に立ち上がり林檎を取り返すアスタロトさん。


「ダメに決まってるじゃない! これはアタシの最終兵器なの!」

「毒が入ってるかもしれぬ、食べるならこの戦いが終わったら好きなだけ剥いてやろう。今は我慢するのじゃ」

「この林檎を食べたら疲れが取れそうだったでござるー……」

 ほっぺたを膨らませて不貞腐れるフルルを余所に、俺は推測を続けた。


 疲れが取れる以前にこんな怪しい林檎食べる気にもならない。人間の生気を吸い取った林檎なんて……


「…………っ!」

「どうした!」

「イズンはこの林檎を食べて自己再生してるんです! ゼルさんが斬った傷も癒えていた、他にも何かあるかもしれません。でも、それが分かっただけでも勝算は見えます! とりあえずこの林檎を取り返されないようにしないと」

「そういえばこの林檎を齧ったら傷が消えておったな」

「先生から“精霊は一つの物に命が吹き込んだ者”と教えてもらいました。だからイズンの本体はこの林檎なんです」

「……この林檎がここにある以上俺らが有利って事か」

 イズンの脅威から免れたとして、一番の問題はあの男。グリモワールを集めていて、数ページを所持している……きっと只者ではない、強力な魔法を使ってくるに決まってる。あの男をどうにかできないと根本的に解決しない。



皆さんお久しぶりです。

無事に留年を免れた為、これからは元通りしっかり更新していきたいと思っております!

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