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俺を殺したクラスメイトが魔王だったので喜んで討伐させてもらいます。  作者: 蒼龍
第3章 勇者イオリ、光の王を従えたい。
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奇妙な三人組


 一体何だったんだあの三人は……最初から最後まで謎ばかりだった。何よりもあの男だ、真っ直ぐに海を見つめる視線、突然血相を変えた。何故? こんなにモヤモヤするくらいなら後を追っていればよかった。あの三人は本当にただの国民か? 後から疑問がこんなにも押し寄せてくるなんて……


 何か起こる前に皆と合流しておこう。あの男のいう事が本当なら何かが始まるらしい。ゼルさん達に報告するべきか? それとも俺の考えすぎか……


「え……無い……」

 ふと海を見て反射的に零れた言葉。その文字通り無い……俺達が乗ってきたはずの船が。

 一体何処に消えた? もう一度冷静になって一周見回してみても、やはり見えるのは夕日の沈み始めた果てしない海と、オレンジに染まる空ばかり。そこに俺達の乗っていた客船は無い。俺を置いて帰ってしまったのは考えにくい。いや、フルル達ならやりかねないが、白露さんもいる事だし……


「イオリ!!!」

 後ろから聞こえてきたゼルさんの声。走って来たのか、息が少し切れているようだ。やっぱり俺を置いて帰ったわけじゃない、だったらどうして……客船には当然船長がいるから、盗まれる事はあるはずない。考えられるのは、強盗に脅されて仕方なく船を出した……でも強盗なんて……


「ゼルさん、船が……」

「ああ、分かってる。とりあえず皆集まってるから合流するぞ!」

 消えた物が物だから探してどうこうなる問題じゃない……。船を探す事よりも、この島を出る手段を考えたほうがよさそうだ。幸い荷物は全て手元にある。


 ゼルさんの後を追って砂浜を駆ける。時間は俺達の味方をしてくれないようで、太陽は段々と沈んでゆく。最悪ここで野宿する事になりそうだ。あの三人は大丈夫だろうか? 怪しいとはいえ一応アンジュの国民。心配だ……


 俺達の方に手を振っているのはアスタロトさんか? 太陽が完全に沈んでしまって視界が不自由だ。このままじゃ本当に帰れない。

「ゼル、イオリ……これからどうするのじゃ?」

 白露さんが神妙な顔で問いかけると、ゼルさんは悔しそうな顔をしたまま黙り込んだ。そんなの、誰にも分かる訳ない。まさか船が消えるなんて思ってもいなかったのだから……


「取り残されたのは俺達だけじゃありません……この島にアンジュの国民が三人いました。探して合流しましょう!」

「その話本当か?! クソッ、手分けして探すぞ。俺は東に行く、白露は西、フルルとアスタロトは南! イオリは……一人で大丈夫か?」

「大丈夫です、いざとなれば精霊がいます! 北を探してきます! 集合する時はMPMで知らせてください!」

 皆は頷いてそれぞれの方面へと駆けて行った。多少不安はあるものの、そんな事は言ってられない。もしかしたらあの三人は魔法も使えないかもしれない、そんな国民を置いておくなんて……出来ない。


「ん? 何だ、あれ……」

 遠くの空に浮かぶ紫色の光。何らかの建物を円状に囲っているようにも見える。視界がハッキリしないせいでハッキリとは見えないが、どう見ても異様な光景だ。今は一刻を争うが……あんなにも怪しい光を見逃すわけにはいかない。行ってみよう。



 

 ◆◇◆



 

 薄暗い神殿の一室、そこに身を潜めるのは女児と淑女と黒いロープを纏った男。安らぎの地と謳われたこの島には似つかわしくない禍々しい神殿。そこでとある実験が行われようとしていた。

 そんな三人が囲うのは、紫の強い光を放つ祭壇。ここで何が行われようとしているのかは、知る由もない。


「もう少しで……グリモワールが手に入る……」

 男は怪しげな笑みを交えた声で呟く。祭壇に置かれた物にゆっくりと手を差し出し……


「俺が王になる日は近い。このグリモワールさえあれば……」

「ふふっ、アーク様にお仕え出来て光栄ですわ」

「アークは王様になるの? すごいすごい!」

 淑女の艶やかな笑いと女児のキャッキャとはしゃぐ声が底気味悪い神殿に響き渡った。そんな二人を余所に、恍惚の表情を浮かべる男。

 


 ――そして光は一層強く輝きを放った。



 ◆◇◆


 “王国から遠く離れた辺境の地”そんな喧騒とは程遠い場所に、どうしてこんな不気味な神殿が……きっと何かあるに違いない。また矢神の仕業か? いや、今回は違う気がする。矢神の強すぎる魔力を感じない、だったら誰が……


「グリモワールってなに? わかんないけど美味しそうだね」

 突如神殿の中から聞こえてきた声に、咄嗟に俺は息を殺して耳を傾けた。

 やっぱりこの神殿、何かある……それにグリモワールって何処かで聞いたことある。もう少し情報を聞いておこう……


「お前にはまだ早い。グリモワールは禁忌の魔術書。異国の王を十人殺した時に全ページが揃う……」

 ――なっ……! そうだ、思い出した。矢神と怪盗が集めてると言ってた、あの……! 王を殺した時にページが現れるという事は……それを手に入れる為にあの女王は殺されたのか? クソッ! という事はこいつらも何処かの王を殺そうとしてるって事だよな?


「次はこの近くの桜雲帝国……その次はアンジュ帝国だ。どちらも偵察済み、安易に殺れるだろう」

「……っ!!」

 こいつら、アンジュを狙って……

 


「あらあら、覗きが趣味とは変わった性癖をお持ちのようで」

 気付かれた! くそっ……ここまでか。いや、それよりもこの済んだ声と柔らかで丁寧な口調……まさか!


「コイツに聞かれたとこで俺の計画に支障は無いが、邪魔な塵には変わりない。……殺せ」

「お前らアンジュの国民じゃなかったのか、怪しいと思ってたんだ」

 黒いロープの中から覗く銀色の髪と強く光る紺の眼。しっかりと俺を睨み付けている。国民じゃなく王子を狙っている奴らだと分かれば話は早い。こいつらは敵、手加減はいらない。


『我の魔力に値する精霊。汝、我の元に姿を現せ! アルテミス!!』

 相手が三人となれば短期戦で終わらせるのは不可能に近い。一撃の消耗が激しい紅玉よりも、長期戦向きのアルテミスの方がいい。とはいえ悠長にしていられる程魔力に余裕は無い。手短に終わらせたいところだ。


「……ふふ、軽くお手合わせといきましょうか」

「このキモいヘンタイをやっつける!」

 散々な言われようだが関係ない。こっちにはアルテミスがいるんだ、そこらの魔導師に負けるわけがない。アンジュに喧嘩を売ろうとした事、後悔させてやる!


「やめろ、無駄な戦闘に魔力を使うな、奴を封じろ。……それだけでいい」

 静かにキッパリと言い放つ男。コイツ……アンジュに喧嘩売っておいて無駄な戦闘だと? ゼルさん達を呼んで袋叩きにするのもいいが……泣いて縋っても遅いぞ。


 月の光に照らされて、バラ窓から魅惑的に色付いた光が降って来る。無音の時間が続き、背筋に緊張が走った。三人を相手にしなくてはならない。そしてこの男は強力な魔法を持っているのか、この余裕っぷり。


「アルテミス、頼んだ」

「不快ではあるが、承知した」

 相変わらず表情を動かさずにアルテミスは魔力を溜め始めた。そんなアルテミスに視線を向けると、男は溜め息をついて祭壇の棺に腰かけ、足を組んだ。

 アルテミスが五大精霊の一人だとは知らずに……お気楽でいい事だな。


『魔力融合』

 突如聞こえた二人の声。先程までニコニコと笑顔を絶やす事のなかった淑女と生意気な口を聞いていたロリ。何かに憑り付かれたのかと思う程豹変した顔つき。あの、城下町で会話を交わした時とは似ても似つかない冷たい表情……

 そして淑女の右手からは青い光、ロリの左手からはオレンジの光が。その二色の光が合わさって……


『強固たる女神アルテミスをここに封じる、……執行』

 一層強く光を放つ発光体は一直線にアルテミスの方へ向かってゆく。そして……消えた。


「な……っ!」

 アルテミスが消えた。もちろん俺がMPMに戻した訳ではない。となればこの二人の仕業以外ありえない。これがこいつらの魔法……? こんなのチートだ、精霊を消せる魔法だと? そんな馬鹿げた魔法があるのか?


「お前ら……一体何も……」

 何故だ? 視界が……揺らいでく。ここで意識が飛んだら……


 


 ――こいつらを逃がしては駄目なのに……





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