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俺を殺したクラスメイトが魔王だったので喜んで討伐させてもらいます。  作者: 蒼龍
第3章 勇者イオリ、光の王を従えたい。
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勇者たちは秘密のリゾート地へ2


「海でござる!!」


 目をキラキラと輝かせながら尻尾をブンブン振るフルルに、ああ、見たら分かるさ。とツッコミを入れる俺。無理もない、アンジュは山に囲まれている。きっと海を見るのは初めてなんだろう。


 にしても……さっきテンションの低さは何処に行ったんだ? と疑問を抱くほど皆はピンピンとしている。あれだけダウンしてたのにこのテンションの上がりよう、流石単細胞だ。普段あれだけ冷静な白露さんも優雅にビニールシートに寝そべっている。そんな白露さんの身体に日陰を作るのは、しっかりと用意周到に立てられたビーチパラソル。何でこんな物持ってるんだ……?



「おい、あんまりジロジロ見てんじゃねぇぞ」

 後ろから強く肩を掴まれ慌てて振り返ると、憎らしそうにジトりと俺を見るゼルさん。あ、白露さんを見てたのバレたか……


 だって……四十代とは思えない。綺麗な、まるで真珠を思わせる程の肌。それを惜しみもなくさらけ出していて、きっと布の面積はここにいる誰よりも少ない。黒の生地と白い素肌のコントラスト……ああ、最高だ。


「すみません、でも……放っておいていいんですか? きっと他の人に声かけられますよ?」

「だから渋々ここに来たんだ、安心しろ。近づく奴は燃やして海に沈める!」


 笑顔でとんでもないことを言ってのけるゼルさん。いやいやいや、怖すぎますって! ゼルさんならやりかねない。白露さんへのデレデレ度と魔力を考えたら普通にやってのけるだろう。俺が止めなきゃ……

 というか、あの時フルルが吹き込んだ事ってもしかして……ああ、全部辻褄が合った。


「んで? イオリは行かなくていいのか? アイツらの水着見たいんじゃねーの?」

「なっ! 俺はそんなの興味ありません! 大体俺だってついて来る気は……」


 必死に否定する俺をニヤニヤと見つめるゼルさん。クソっ……なんでからかわれる羽目に! 毎度毎度どうして女子の水着が見たいと言ったかのような扱いを受けるんだ……そんな気は微塵もないのに。


「イオリ、貴様そのような事を考えていたのか? ……この下衆」

 聞き覚えのあるドスの効いた声に思わず振り返った。え……何故いる? 召喚した覚えは全くもって無い。


「ルシファーさん?! どうしてここに……」

「我も久々の休暇を取ろうと思ったのだ。気にするな」


 砂浜に座り足を組むルシファーさん。その左手にはしっかりとカクテルが。

 魔力が減っていく感じがしない。きっと自力で出てきたんだろう。まあ、楽しそうで何よりだ。この前はお世話になったしな……。


 それはそうと、せっかくのリゾート地での休暇、満喫しないと勿体ないな。戦闘ばかりの日々からやっと抜け出せた。喧騒とは程遠い静かなこのリゾート地で……


「忍法☆フルルスペシャルアターーーーック!!! どかーーーーん!」

 とぼとぼと砂浜を歩いていると、訳の分からない叫び声と共に背中に鈍い痛みが走った。クソッ、犯人は分かり切ってるけど……今度は一体なんだ!


「あ、イオリ! すまぬでござる!」

「いって……何の真似だ!」

 背中に走る痛みに耐えながら目の前で申し訳なさそうに謝るフルルを叱る。その背中には西瓜。まさかコイツ……西瓜を俺に?


「それは?」

「あ、いや……これは……皆で食べてみようと思って持ってきたでござる!」

 明らかに顔色を変えて焦り始めるフルル。この時代にも西瓜があった事に驚いた反面、こんな危険物をフルルに持たせた人物に殺意を覚えた。フルルに西瓜なんて絶対俺が被害にあうと分かり切ってるだろうに。

 どうせ西瓜割りで頭をかち割られるに違いない。そんな事あってたまる物か。大切な命をくだらない遊びで無駄にするなんて……


「絶対に俺の頭割るなよ!」

「……? わ、かったでござる……よ?」

 何の話か読めないと言いたげな表情で頭に疑問符を浮かべるフルル。俺がキツく睨むと肩をびくりと揺らした、相当怖がってるようだ。これくらい言わないとまたすぐにやらかすからな。


「フルル、いつまでボール探してんのよ! って……イオリ?」

 茂みから息を切らしながら駆け寄ってきたのはアスタロトさん。ボール? もしかしてこの西瓜の事か? って事はやっぱり……


「はぁ、食べ物を粗末にするのはやめろ、俺が切ってやるから貸してみ?」

「イ、イオリ……ボールを切るでござるか……?!」

 信じられないと言いたげな二人。西瓜を強引に取り上げると、俺は誰の物か分からないビニールシートに西瓜を置いた。そして……


『我の魔力に値する精霊。汝、我の元に姿を現せ。ハルバード!!』

「やぁ、イオリ。どうしたんだい? ……って、戦闘中じゃないのかい?!」


 強い光の中から現れた王子様を具現化したような青年。キメ顔で助太刀するつもりだったんだろう、正反対の平和なリゾート地で召喚され戸惑っているようだ。

 ハルには悪いが色んな意味で俺の命が危うい。一刻も早くこの危険物を……


「あー、悪いがこの西瓜を切り分けてくれないか?」

 申し訳なさそうに頼む俺にむけて、王子様らしからぬ視線を送るハル。自称王子様がそんなキツイ表情しちゃダメだよなぁ! この前、俺を差し置いてハーレムしようとした罰だ! フハハ! 働け!!


「……も、もちろんさ! 安心してくれ、姫たち。僕がこれを切り分けてあげるからね!」

 引きつった笑顔で斧を振りかざす。そんなハルを遠目から見守るフルルとアスタロトさん。ハルの奴……カッコつけやがって。


 多少怒りの込もった鈍い音がした。そして現れる見慣れた赤い果肉。元の世界では、夏になると嫌になるほど見ていたせいか、中々食欲が湧かなかったが……こうして久しぶりに未来の食べ物を見ると無性に恋しくなるんだよな……。


「ふぁぁ……血でござる、きっと痛かったんでござるよー……可哀想でござる……」

「ボールの中から流れ出る真紅の鮮血。ククク……面白いじゃない!」

 綺麗に切り分けられた西瓜に駆け寄り、涙を流しながら手を合わせ、黙祷を始めるフルルと厨二病が止まらないアスタロトさん。

 ハルは置いといて、二人とも西瓜の果肉を見るのは初めてなのか? そういえば俺に西瓜をぶつけた時も「皆で食べてみようと思って」とか言ってたが……まさか本気でこれをボールだと思っていたのか?


「食べてみるか? 甘くて美味しい果物なんだが」

「イオリ……ボールを食べるなんて……どんな貧しい生活を送っていたでござるか?」


 余計なお世話だ! と頭の中でツッコミを入れてはみたものの……この二人の事だ、口で言っても理解してくれないだろう。ここは目の前で食べて見せるしかないな。


 迷うことなく赤い果肉に噛り付いた。そんな俺を信じられないという驚愕の目で見守る三人。

 ん、未来の西瓜よりも少し酸味が強いが……まあ、こんな味だったな。水分が多くてシャクシャクしてて……一体これのどこが血なんだ、まったく。


「あ、あぁ……血を迷うことなく一口で……イオリ、吸血鬼なの?!」

 どんどん俺から距離を取っていくアスタロトさん。


「だから! これは血じゃなくて、れっきとした果物なんだってば」

 真剣な顔で西瓜を差し出してみると、フルルは恐る恐る西瓜を手に取った。そして震える手でゆっくりと口に運び……


「……んん?! これは……甘いでござる! 血ではないでござる!」

 はぁ、やっと分かってくれた。だからあれほど説明したのに全く聞く耳を持たない二人だ。それはそうと、西瓜が気に入ったのか次々と口に運んでいくフルル。


「ほいひいでごばふ! ん……? プッ!!!!」

 ハムスターのように膨れ上がったフルルのほっぺた。何か違和感を感じたのか、勢いよく吐き出した。と言うより飛ばした……? あ、種。


 フルルの口から勢いよく飛ばされた種は一直線にアスタロトさんのおでこに……クリーンヒット!


「いったぁい!! ちょっとフルル!」

 相当痛かったのか、徐々におでこにぽつりと赤い点が。涙目でフルルを睨み付けるアスタロトさん、そして何か危険を察知したのか一目散に逃げ出すフルル。いつもの追いかけっこがまた始まった、嵐が過ぎ去ったようだ。


「って事で、ありがとな。ハル」

 あれー、ハルが何か言っているような気がしたけど、波の音で聞こえないなぁ(棒読み)


 まあいい、久しぶりに西瓜を食べることができて満足だ、長く食べてなかったしな。って……この残った西瓜、どうするか? まだ三分の二ほど残っている。そもそもどこから拾ってきたんだ? まさか、人様の物じゃないだろうな?!

 嫌な予感が次々と浮かび上がる。離席中のビニールシートに置かれた西瓜、それをボールだと勘違いし持ち去った二人。まさか食べ物だと思いもしなくて、すぐに返すつもりだったが俺が切り捌いて胃の中に……

 あああ……どうする! フルル達が現れた方へ行ってみるか?


 アイツら、こんなとこよく通れたな……そんな事を考えながら、観葉植物のような草木でできた茂みに潜り、開けた道を探していると何処からか会話が聞こえてきた。


「こんなとこで休んでいる暇はないのだが?」

「もう、少しくらいいいではありませんか。せっかちな男性は嫌われますわよ?」

 なんだ、ただのリア充か、爆発しろ。さて、謝る気も失せたところで……俺も砂浜でゆっくり休むか。

 そう思いながらも興味本位で茂みから顔を出し、様子を伺った。人間とは怖いものだ、ダメージを受けると分かっていても興味が勝ってしまう。


 子連れか? 5歳くらいのロリもいる。それはそうとこの女性、かなりの美人だ。白露さんに負けない程白く艶めかしい肌、そしてふわりと巻かれた黒髪が綺麗に引き立っている。白のパレオから覗く細くて華奢な足……ダメだ。今日の俺はどうにかしてる、よりによって人妻の二人に目を奪われるなんて。


 そ、そうだ! その子供らしきロリはピンク色の髪をツインテールにしていて、棒の付いた飴を咥えて退屈そうに寝そべっている。そして我らが正義のスク水でさいこ……ダメだ! これじゃ俺がロリコンみたいじゃないか。ああ、それで男の方は……って、これじゃホモにならない……か。

 やっぱりリア充に関わると良い事がない。今回だって危うく俺の尊厳を失いそうになった。危ない危ない……


 あれ、この女性どこかで見かけたような……気のせいか? だが、この笑った顔……やっぱりどこかで! もしかして敵か? 

「そこで覗いている殿方。バレバレですわよ」

 視線をこちらに向けることなく呟く女性。な……一度も俺の方を見ていないのに何故バレた? 魔力を感じ取られたとしたら、やっぱりこの女性はただの人じゃなさそうだ。


「すみません、人を探していて。お邪魔しました」

 俺はその場で立ち上がり、ぺこりと頭を下げて立ち去ろうとした。ここで戦闘になるのはまずい、深く関わる前に逃げよう。


「いいのですよ。それより……あの後ちゃんとミネストローネは完成したのですか?」

 クスリと艶笑を見せる女性。そこで全てを察した、城下町でお世話になったあの女性……だから見覚えがあったのか。ただのアンジュ国民でよかった。


「あ、あの時はお世話になりました、おかげで無事完成したみたいです」

「それならよかったです」

 あの時は肌はおろか、顔まで隠していたから考えもしなかった、こんなに美人な女性だなんて。そしてこんなに可愛いロリっ子を……


「お兄ちゃん変態なの? さっきからおっぱいばっかり見てるけど」

 なっ! コイツ……そんなとこまで見てやがったのか?! ……じゃなくて、俺は別に胸を見ているわけではない、顔を凝視するわけにもいかないと思ってだな……俺は変態じゃない。


「か、可愛いお子さんですねぇ?」

「……キモ」

「こら、ダメでしょ? うふふ、でも……私の子ではないのです」

 だったらコイツらはどんな関係なんだ? いや、分からない、分からなさすぎる。コイツら家族じゃないのか? この一言も喋らない男が旦那で女性が嫁で、この可愛くないガキが子供じゃないのか? それ以外考えられないんだが……他に何がある?


「……! そろそろ始まる、行くぞ」

 何か異変を察知したのか、男はハッとし立ち上がった。最初から俺なんか眼中になかったかのように存在を無視されたままだ。愛想が悪いにも程がある、これだけ話し込んでるんだ。一度も俺の方を見ないで海の方ばかり眺めて……一体何を見てるんだ。


「ちょ、アーク待ってよぉ!」

「……貴様」

「あ……ごめんなさ……い」

 殺気に満ちた眼でロリを睨み付ける男と、何故か絶望と恐怖に満ちた表情で必死に謝るロリ。コイツの名前がアークか? にしても名前を呼んだだけでここまで睨みつける事あるか? 何から何まで理解できない団体だな。


「…………。それではまた会いましょうね、料理の事ならいつでも聞いてくださいませ」

 殺気と恐怖に満ちた空間の中、女性だけは最後まで強かに微笑む。そして三人の姿は徐々に小さく消えていった。


修学旅行の為、更新が大幅に遅れてしまいました。大変申し訳ございません。

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