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俺を殺したクラスメイトが魔王だったので喜んで討伐させてもらいます。  作者: 蒼龍
第3章 勇者イオリ、光の王を従えたい。
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勇者たちは秘密のリゾート地へ1


「新しくできたリゾート地に行ってみない?!」

 ルンルンと目を輝かせながらチラシを持って押しかけてきたアスタロトさん。その大きな声に何だ何だと皆が集まってきた。リゾート地って……アンジュの周りに綺麗な海があるのか? 馬車でかなりこの周り一帯は見たと思うが……そんなのあったか?


「リゾート地だぁ? んなのどこにあんだよ、まず周りに海がないじゃねーか」

 アスタロトさんの持ったチラシを見るなり、馬鹿らしいと吐き散らすゼルさん。確かにアンジュの周りは山や田舎道で囲まれた、お世辞にもリゾートとはかけ離れた場所。しかもリゾート地って新しくできるものなのか?


「そんなのがあればいいんじゃが……」

 呆れながらもうっとりとした目でチラシを眺める白露さんに、興味津々に食いつくフルル。皆反応は違うが気になって仕方がないようだ。そんな俺も、ある訳ないとは分かっていても興味をそそられていた。

 そういえば、生まれてこのかた修学旅行以外でまともに旅行なんてしたことなかったな、海外なんてもってのほかだ。だから気になる……リゾート地。


「だ・か・ら! ここに書いてあるでしょ!」

 そう言って小さな文字を指さし強調するアスタロトさん。文字が小さすぎて見えない……この時代、文字も小さいなんて悪質極まりない。


「何じゃ? ……王国から遠く離れた辺境の地、旅人が見つけた秘密のリゾート地。いかにも怪しいが大丈夫なのだろうな?」

「しかも秘密のって。チラシで配ってる時点で秘密もクソもねーよな」

 正論をぶつけるゼルさんと珍しくそれに頷く白露さん。こんなとこに興味本位で行きたがるなんてアスタロトさんくらいだよな。きっと厨二心を擽られたんだろう。


「楽しそうでござるね! リゾート地でゆっくり過ごすのも悪くないでござろう?」

「最近喧騒続きじゃったからの、確かにゆっくりと過ごす時間が欲しいものじゃ」

 これってまさか……行く羽目になるやつか? いや、見るからに怪しいだろ……いくらリゾート地が物珍しいからって、無防備すぎる。


「俺はパス、リゾート地なんて興味ねぇし、第一怪しい」

 いつもは飛び抜けて食いつきそうなゼルさんがやけに冷静で正論を言う。何かあったのかと不安になるほどに……。こればかりは俺もパスかな、女性陣水入らずで楽しんでくればいいさ。騒がしい二匹が暫くいないとなると俺もゆっくり休めそうだし。


「ゼル殿行かなくていいでござるか?」

「ああ。……ん?」

 きっぱりと断るゼルさんの耳にコソコソと耳打ちを始めるフルル。何か思いついたのか? 俺は二人の様子を興味津々に見つめた。

「…………」

「……なっ! クソ……やっぱ俺も行く!」

 一瞬で顔色を変え、その上意思もガラリと変えたゼルさん。一体あの三秒の間に何があったのか、フルルは何を吹き込んだんだ? あんなに興味なさそうで行く気ゼロだったゼルさんをこんなに変えるなんて……


「イオリも行くでござるよね? 可愛い女子の水着を見れるかもしれないでござるよ!」

「……キモ」

「最低な奴じゃ」

「俺はまだ何も言ってない! 皆行くならついていく、それだけです」

 冷たい眼差しを向けられながらも、何だかんだついて行くことにされてしまった俺。まあ、仕方ない。皆行くのに俺だけ一人でお留守番なんて辛いしな……

 だが面倒事に巻き込まれるのは御免だ、大人しく過ごして帰るか。あ、そういえば俺……泳げたっけ……



 ◆◇◆



 気が遠くなるほどの長い時間をいつもの馬車で過ごした。この時代には時計がないようではっきりとした時間は分からないが、ざっと三日は経っただろう。昼間はずっと流れる風景を眺めるだけ。アンジュ周辺は気候が肌寒く、決して楽な道ではなかった。そして日が暮れると宿屋に寄って軽食を取り睡眠。半ば、どうしてここまでしてリゾートなんかに行かなきゃならないんだと自暴自棄になったりもした。

 あれだけ意志をコロリと変えたゼルさんもブスッとしたっきりだ。多分フルルに何らかの脅しをされ嫌々ついてきたように思えてきたが……


 そしてやっとの思いで船着き場へと着いた。アスタロトさんの情報によると、ここから船に乗るだけですぐに着くとの事だが……果たしてそれを信じていいのか……。


「あっついでござるね……溶けるぅぅぅぅ……」

 フルルは背筋を曲げゆらゆらと歩く。確かに……アンジュの肌寒さに比べてこの暑さ……中学の頃修学旅行で行った沖縄と同じような暑さ。暑いのは暑いんだが……東京みたいに湿気じみてない、乾燥した暑さだ。ジメジメした暑さに慣れてる俺的には幾分か快適だ。問題は皆、アンジュが森に囲まれていて気温が低いせいか暑いのには慣れていないようだ。皆顔を真っ赤に染め、のぼせるように汗を流している。

 この世界は日本みたいに四季がないのか? 俺がアンジュに来てから何か月か経つが……気温が全く左右していないように感じる。


「イオリは平気なの?」

「あ、はい。俺のいた時代は暑かったり寒かったり気温が変わる国で、慣れてます」

 汗の量が目に見えて少なく、ダメージも負っていない俺を不気味がるように眺めるアスタロトさん。正直暑いとは思うが耐え難い訳ではない。


「ここの気温より、もっとジメジメして暑かったり、アンジュよりも寒くて雪が降る事もあります」

「雪……か。私の故郷も毎年降っていた。桜が咲いて、暑くなって、紅葉が染まって雪が降る。四季という物じゃ」

 白露さんが懐かしそうに呟いた。そういえば白露さんは元々アンジュの人間じゃないとアスタロトさんが言ってた。確か桜雲帝国だったか? そこにも四季があり、そしてお茶を飲み、和服を着る文化がある……やっぱり日本にそっくりだな。


「そういえばこの地図を見る限り、私の故郷もそう遠くはないように思えるが……今はどうなっているのであろうな」

 白露さんは「神のみぞ知る、じゃ」と続けてクスリと笑った。ゼルさんと結婚するためにアンジュに嫁いで故郷とはそれっきりか。両親はまだそこにいるのだろうか? それなら恋しくなるのも分かる。俺だって……

 せっかく近くに来たんだ。例のリゾート地を十分に堪能したら白露さんの故郷に寄ってみるか提案しよう。俺も気になる、もしも白露さんの故郷が未来の日本なら尚更だ。


「昔話はそこまでにして、船が出るみたいだ。急ごうぜ」

 疲れ果てたような声で急かすゼルさん。船に乗ったらゆっくりと座れる場所がある、そこで暫く休んでもらうか……。馬車に乗っている間、何かに迫られるように気が気じゃないような様子だった。少し違和感があったが、始めていくリゾート地に緊張しているのか? とあまり気にしなかった。だけどただ事ではないような気がする……



 ◆◇◆



 船の中にある待合室のようなとこに並べられた色とりどりのカクテルやジュース。写真で見るようで馴染みのない澄んだ青色のカクテルやヤシの実にストローを挿したココナッツジュースらしきものなど、見ているだけで楽しい。南国らしい気分になるにはもってこいだ。


 が、俺以外の皆にはそれどころじゃないらしく、船の涼しい部屋でぐったりと寝込んでいた。四季があると言っていた白露さんも同じく、バテバテだ。白露さんの故郷の夏はこの暑さよりも快適だったのか、羨ましいな。

 という事でこの船からの景色を満喫しているのは俺だけのようだ。この調子だと、船から降りても暑いだろう。リゾート地でゆっくり休暇なんて皆にできるのか……? 俺はこのドリンクと景色でもう満足だ。まあ、一つ欲を言うならカクテルを飲みたい。だが一応未成年だしな……


『暇そうだな』

 突然話しかけられた事に驚き、咄嗟に振り替える。だが海が広がるだけでそこには誰もいない。そりゃそうだ、俺は海に背を向けていたんだから。そしたらどこから話しかけられた? 周りにも人の気配がない。


『俺だ、ミカだ。忘れられるとは……困ったな』

 MPMから聞こえてきた声に安堵した。なんだ、ミカか。そういえば必要以上の時にしかMPMを使っていない。思えば、精霊を召喚したり帰還させる時にしか……ミカには悪いが正直存在を忘れかけていた。長い間MPMをまともに見ていなかったからレベルもステータスも確認していない。矢神と二人で能力を確認したあの時も、急いでいてしっかりと目を通していなかった。


「そういえば俺……確認してなかったな」

『レベル、ステータス共に上がっているし使える能力も増えている。まあ、アンジュに戻るまで使うことはなさそう……だがな』

 ミカは俺の顔を見るなり苦笑いした。そうだな……ここでは魔法も使命も全部忘れて休みたい。一応MPMに目だけ通しておくか。


「ステータス確認だけさせてくれないか?」

『柊 威織のステータスを表示』



────────────────────────








◇柊伊織◇ 職業:精霊魔導師Lv.10





HP……9999×3


MP……273




攻撃……58


防御……147


運 ……89


機敏……59


知能……205




【能力】


輪廻転生3 精霊契約(ルシファー、ハルバード、紅玉、アルテミス) 魔力集中 ××を××す×× 








────────────────────────


 いつの間にかレベルが10になってる。まあ、あれだけ戦闘が続いたんだ、そりゃそうか。あの海賊頭領のオッサンを倒しただけでレベルが3も上がったんだ。案外サクサク上がる物なんだな。きっとオンラインゲームみたいにどこかでレベルが上がらなくなるだろうけど。


「こう、数字にされてもよく分からないよな。レベル10じゃステータス低いどころの話じゃないだろうけど」

 俗にいう“強い人たちにキャリーしてもらってレべ上げしている”俺はゼルさん達がいなかったらレベル10にもなってなかっただろうな……


『レベルは戦ったから上がるわけじゃない、あまり詳しくは言えないが、これも君の実力だよ』

 ミカの慰めの言葉に若干安心を覚えながらも心は不安で一杯だった。一人になってしまっても十分に相手とやりあえる、それくらいにはならないとこの先命がいくつあっても足りない。

 レベルを上げる事が全てではないと分かっているが、基礎的なステータスを上げるのも大切。肝心な時にこの前みたいに魔力が枯渇していると何もできない。だから……できるだけレベルを上げないと。


『そうこうしてるうちに、ほら。ここがリゾート地じゃないか?』

 ミカの言葉に思わず振り返る。視界一杯に広がった澄んだ透明の海、青い空、色とりどりのハイビスカス……これがリゾート地というものか。


 そうだ、皆を呼びに行かないと。きっとまだダウンしているだろうし、この島の宿に連れて行くか……


番外編のようなものです。戦闘続きだったので気休めに

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