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俺を殺したクラスメイトが魔王だったので喜んで討伐させてもらいます。  作者: 蒼龍
第3章 勇者イオリ、光の王を従えたい。
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精霊と人間の絆


 クソっ! なんでアイツはあんなに余裕ぶっこいていられるんだ? 俺に殺してだと? そんなのお前に言われなくたって……

 アイツに殺してって言われて殺すんじゃ意味がないんだ、こんなの……違うのに。


「イオリ!」

 扉の外からフルルの声が聞こえた、俺の事を探しているようだ。よかった、もう少し早かったらフルルにあの残酷な殺人現場を見せてしまうところだった。少しだけホッとし、俺は扉を開けた。きっとフルルだけじゃない、他の皆にも心配をかけているだろう。


「フルル! 心配かけてごめんな?」

「無事で良かった! 爆発音が聞こえて心配してたでござる……」

 あ、女王が殺された時の爆発音か。という事はあのメガネっ子にも聞こえているのか? 女王が殺されたと伝えたらどうなるんだろう。きっと場は荒れる……精霊どころじゃないな。


「あのメイドはまだいるのか?」

「もう決着はついたでござる。ゼル殿と白露殿の精霊が圧勝でござるよ!」

「そうか……」


 この城はほぼ全壊、女王も殺された……あのメガネっ子はこれからどうするんだ? 身寄りもなくホームレスになるのか……? それはいくらなんでもあんまりすぎる。

 そんな事を考えていると、俺が抜けてきた穴の前に辿り着いていた。やはりこの場所だけ浮いていて残りは全壊。派手に爆発したな……

 そう考えたら、俺達はメガネっ子に命を救われたんだ、今度は俺達が何とかしないと。


「皆、突然いなくなってごめん!」

 謝りながら穴を潜ると、地面に座り込んだメガネっ子と固まったまま微動だにしなくなったアルテミス。そして皆の姿が。あ、そういえばまたゼルさんの魔法を見る事が出来なかった。


「どこに行ってたんだ? 主役がいないと何の意味もないだろ?」

「すみません……あの怪盗を追っかけてまして」

 俺はゼルさんに一礼して、座り込んでいるメガネっ子の元へ駆け寄った。あの憎たらしい笑みは消え、負けた事が信じられないと言わんばかりの表情。今、女王が死んだと伝えるのはあまりにも酷な気はするが……


「そういえば、イオリはアルテミスと契約したかったのじゃろう? そなたは勝てたらお宝を差し上げると言った。約束通りアルテミスを渡すのじゃ」

「白露さん、もういいんです。五大精霊を揃えるのが目的でした。でも……今このメイドからアルテミスを奪うのは可哀想です……」

 これでいいんだ、住む場所も使える主も無くしたこのメガネっ子にはアルテミスしかいない。メガネっ子からアルテミスを奪って五大精霊を揃えたとしても、何も嬉しくない。コイツにされた事は決して許せる事ではないが、コイツを見過ごすことはできない。


「……五大精霊を知っているのか?」

 突如口を開いたアルテミス。アンドロイドのような機械音が閉鎖された空間に響き渡る。知っているも何も、俺は全員を仲間にする気でいた。


「……我々五大精霊はその存在を知る者に仕えなくてはならない」

 俺の返答も待たずにアルテミスは続けた。五大精霊の存在を知る人間はごく少数……矢神もアルテミスの存在を知らなかった。だからアルテミスを欲しがらなかったという事か。いくら矢神でもそう簡単に五大精霊と契約できる訳がないと思ったんだ。まさか知らなかったとは……


「……主、我はこの者に仕えなくてはならない、これは定められし運命」

 呆然と地面を見つめるメガネっ子に、アルテミスは残酷に言葉を並べた。運命……?五大精霊の存在を知る者に仕えなくてはならない運命って……だから紅玉もすんなりと?


「イオリ様、私達五大精霊は元々ある精霊魔導師に仕えていました。ですがその魔導師が死ぬ直前、私達の力が悪用されることを防ぐために五人の精霊をそれぞれ違う場所に封印したのです。そして私達五大精霊を知る者は私達の元々の主の身内のみ……」

 アルテミスの言葉ではいまいち理解できていない事を察したのか、紅玉が補足を始めた。存在を知っているだけで仲間になってくれる? こんな俺でもか?


「その精霊魔導師の遺言“貴方たちの存在を知っている者がいたら仕えて”は私達の定めでもあります」

「それなら……ここにいる誰でも、五大精霊と契約する事ができるって事か……?」

「いえ、私達の名前と能力を知っていて初めて“五大精霊の存在を知るもの”となります。私の場合、今の主の白露様に依頼されて契約致しましたが、そう簡単にはいきません」

 やっぱり、存在を知ってるだけじゃいけないんだ……一体何をすれば……。それを知ったとしても、俺はもうアルテミスと契約する気はない。このメガネっ子の為にも。


「いや、契約を棄権する。アルテミスはこのメイドに仕えてくれ……頼む」

「それはなりません、使命に逆らう精霊は反逆者となるのです、どうか……アルテミスの為にも契約を……お願いします」

 紅玉は跪いて深く頭を下げた。そんな、俺は一体どうすれば……ここでどちらかを見捨てなければならない。メガネっ子を救ってアルテミスを反逆者にするか、アルテミスを救ってメガネっ子を孤独にするか……その二択しかないのか?


「すみません……私には女王がいます。アルテミス……仕えてきなさい」

 やっと顔を上げたメガネっ子は大粒の涙を流していた。やっぱり精霊とは言え心を許した存在、それが離れていくんだ……大丈夫なわけがないよな……こんな事して、俺は正しいのか? これが何度も続くんだ。あと三人の持ち主から大切な精霊を奪わなくてはならない。

 それにこのメガネっ子には……


「女王は亡くなっていた……俺の目の前で……遺体もバラバラになって残っていない」

 震えながらも必死に言葉を紡ぎだした。こんな事……本来なら言いたくない、言わずに何も知らないままでいてほしい。でもそんな訳にもいかない。すぐに女王が殺されたことに気付いてしまう。


「誰に……誰に殺されたんですか……女王は一体……」

「それは……」

 怪盗と矢神だ……。言ってもいいのか? 言わない方がこいつのためじゃないか? 言ってしまったら俺と同じ復讐心が芽生えてくるかもしれない。


「分かりません……」

「そうですか、分かりました……私は一人でここに残ります」

 絶望に染まった表情のまま零した言葉。このままこのメガネっ子を一人にしてはいけない、そんな気がする。何故か分からないが……


「だったらアンジュに来ればいいじゃねーか。一人で寂しく暮らすよりそっちの方が楽しいぜ?」

 俺が答えを出す間もなく、ゼルさんはニカっと笑って提案した。そうか……その手があったんだ。俺やフルルだって同じようにアンジュに迎え入れてもらった。このメガネっ子も同じだ、アンジュに来れば……


「アンジュ帝国……? 貴方達アンジュの人間だったのですか……? そんな私なんかが……」

「大丈夫でござる、フルルもイオリもそうやってアンジュに来たでござる……アンジュに来ればこの精霊殿といつでも会える……寂しくないでござるよ?」

 涙を流しながら震えるメガネっ子の頭を撫で、諭すように微笑むフルル。ゼルさんや白露さんも賛成の様で、優しく微笑んだ。


「ありがとうございます……アルテミス、主は変わってしまうけれどちゃんと傍にいます、だから……これからもずっと……」


『……仲間』


 重なり合う機械音と人間の声。最初は冷たく感じたアルテミスの声も今は温かく聞こえる。最初からこうすればよかったんだ、俺にはこんな考え思い浮かばなかった……流石ゼルさんとフルル。


「……主、主の仲間の手厚い対応によって契約時の試験は免除する。だが残り三人は自力で契約できるように鍛錬するんだ」

 試験……ただで契約できる訳じゃない、試験をしないといけないのか……紅玉とアルテミスはこうやって無償で契約してくれた訳だが……あと三回は試験を受けなくてはいけない。そう簡単にはいかないだろうな。


「やっと“謝らなくなった”な」

「そうでござるね」

 フフッっと笑う白露さんに、フルルはうんうんと頷いた。正直あの「すみません」は聞いていてイライラしていた。ずっと続けられたら堪ったもんじゃない……


「あと、俺達の仲間返してくれないか?」

「あの子なら貴方たちの馬車で寝かせてあります、お城から距離もあるので爆発に巻き込まれている可能性はゼロなので安心してください」


 アスタロトさんは無事か、よかった。この規模の爆発だ、無事か心配だった。このメガネっ子に殺す気はなかったにしても不慮の爆発があった。もしかしたら大怪我をしているんじゃ、と考えていたんだ。まあ、最初に止めた馬車の位置ならここからかなり離れているから大丈夫だろう。


 早く馬車に戻ろう。


「よし、皆帰るか!」


 ゼルさんの一言で俺達は、地面めがけて孤立した空間から飛び降りた。



 ◆◇◆



「何よこれ!!!!!」


 馬車の中で怒り狂う少女、その少女の身なりはボロボロだ。綺麗に着飾っていたドレスはボロボロに破け、所々燃えている、綺麗な淡い水色の髪の毛は煤まみれで灰色がかっている。まさに天使とはかけ離れていた。


「まさかここにまで爆風が飛んできていたなんて……なあ?」

「あんた達だけ無傷で綺麗なままなんて許さないー!!!!」


 ギラリと瞳を輝かせるアスタロトさん。やっと一件落着だと思ったのに……また大事件発生だ。


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