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俺を殺したクラスメイトが魔王だったので喜んで討伐させてもらいます。  作者: 蒼龍
第3章 勇者イオリ、光の王を従えたい。
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迷宮へようこそ、怪盗さん


 さらに二十分ほど馬車を走らせた辺りでようやく例の城がはっきりと視界に映った。確かにアスタロトさんの言うとおりトランプ柄の旗がある。さっきは考えすぎだと思っていたがやはり不思議の国のアリスのような世界観……何か関係しているのか? ウサギの銅像に猫の置物。考えすぎ、では片付かないようだ。


 俺達を案内してくれたメガネっ子は三月ウサギ、女王はハートの女王、ということはアリスは……? この城の事を調べる事から始めないといけないな。そもそも不思議の国のアリスってどんな話だっけな、皆に聞いても分かるはずがない、俺がどうにかするしかないんだ。


「よし、入るか」

 ゼルさんの一言で静かに息をのんだ。何が起こるかもわからない生誕祭、そして一番の目的は五大精霊の持ち主を探し、手に入れる事。すんなりと上手くいけばいいが……


「待ってました! 無事に辿り着けたみたいで何よりです! あ、すみません……」

 突然背後から聞こえてきた聞き覚えのある声に鳥肌が立った。何で、何で俺達よりも先に着いて……俺たちはお前を置いてきたはず、それなのに何で!


 恐る恐る振り返ってみるとそこには笑顔のメガネっ子。これには誰もが絶句した、あの白露さんも信じられないと言いたげに黙りこくっている。


「すみません……お城の中に案内いたしますね~」

 半信半疑ではあるが招待状を持ってなくても入れるのはラッキーだと、メガネっ子の後に続いた。薔薇の蔦が生い茂る門をくぐり、金色に輝く装飾だらけの入口から城の中へと入る。



「うっ……」

 白露さんが気持ち悪そうに口元を塞ぐ。城の中は頭が痛くなるほどの甘ったるい香りで一杯だった。一体何の匂いなんだ……? クッキーのような香ばしい甘ったるさにバニラの香り。甘いものが好きそうなフルルとアスタロトさんはキラキラと目を輝かせているが、反対に白露さんやリリアン、さらに俺は吐き気すら感じている。リリアンに至ってはフルルに無理やり起こされ連れてこられた不機嫌さも加わりイライラMAXのようだ。触らぬ神に祟りなしということでリリアンにはノータッチで行こう。


「すみません、ウェルカムドリンクはいかがでしょうか?」

 そういってトレーに人数分のグラスを乗せて運んできたメガネっ子、お願いだからひっくり返すなよ。にしても何だこのいかにも合成着色料と甘味料の塊と言わんばかりの飲み物は……。パステルカラーのピンク、水色、紫の縞々の層にたっぷりのホイップクリーム、薔薇の形の砂糖菓子が上に載っていて沢山のチョコスプレーが散りばめられている。まずこれを飲み物と言っていいのだろうか? こんな罰ゲームのようなものを……

 こんなウェルカムドリンクは初めてだ。普通に、常識的にはコーヒーや紅茶、ジュースなどを指す言葉ではないのか? 大体こんな胃もたれドリンクを飲む奴なんて……


「すっごい可愛いでござる~! 甘くておいしい……幸せでござるよ~」

「まったく、悪魔のあたしがこんな可愛い物を飲む訳……うう……今日だけなんだからっ! 何これ! 幸せ~」


 いたか……。どういう生活してればこんな物を容易く飲んでみせれるようになるんだ? 白露さんに至っては見たくもないと言わんばかりにあからさまに顔を逸らしていて、リリアンも明らかな嫌悪感を表情に出している。俺も二人と同じで遠慮する素振りを見せた。


「三人は飲まねぇのか?」

 ゼルさんはとっくの昔に飲み干していたようで「いらないなら貰うぞー」と俺たちの返事も待たずに二つのグラスに手をかけた。ゼルさんは肉食で甘い物なんて苦手だろうと勝手にイメージをしていたが正反対だったようだ。まさか俺たちの分まで……ってもう飲み干してる?!



 化け物だ。




 ゼルさんの超甘党っぷりに微笑んでいると、突然アスタロトさんがしゃがみ込んだ。やっぱりあのドリンクは甘すぎたんだろう、胃もたれでもしたのか?


「ぐ……これは……っ!」


 アスタロトさんの額から尋常じゃない程の汗が流れ出ている。これは……胃もたれなんかじゃない、どうしていきなり!


「貴様! この飲み物に何を仕組んだ。この症状……毒じゃな?」

「すみません、正解です。此処の庭園の薔薇には毒を持っているものもあるんですよ~」

「ふざけるな! 一体何を企んでおるのだ!」

 顔色変えることなく笑顔で謝るメガネっ子。油断していた、ただのドジな奴だと思っていたがまさか俺たちの敵、しかも毒を入れるなんて命を狙っているようだ。


「すみません! でも安心してください、致死量は入れていませんし一つだけです。ただ、少しだけお休みしていただきます」

「ふざけやがって! 何が目的だ!」

 ゼルさんの怒声が辺りに響き渡る。こんな大騒ぎをしていて他の招待客は……

 いない……?! クソっ、俺たちは最初から騙されていたのか? そうだ、考えてみたら最初から不自然だった。誰一人としていない城内。それどころかこのバラ園に入ってからメガネっ子以外の人間に出会っていない。その時点で違和感に気付くべきだった。こいつは何を企んでいるんだ、敢えて致死量の毒を入れなかったとしたら……


「すみません、貴方達が怪盗さんで女王様の宝物を盗もうとしているのは分かっています。これから女王様の部屋に辿り着くまでの間、最後の一人になるまで試練をして頂きます」

 やっぱり精霊を狙っていることがバレていたのか……でもどうやって? 最後の一人になるまで試練だと? 俺たちに味方討ちをしろと言っているのか?


「その最後の一人が勝利すれば女王様の負け、宝物を譲るそうです。どうですか? 怪盗さん達にとっても悪いお話ではない筈です~。すみません」

「その話……本当だな?」

「はい~どちらにせよここから出る術はそれしかないですよ、死んで頂くか、試練をクリアしていただくか……」

 白露さんの強い眼差しにも表情を変えないメガネっ子、どこまでも不気味な奴だ。

 

「できません、味方と戦うなんて!」

「ふふっ、私は言いましたよ? “試練”をしていただくと。戦闘をしていただく訳ではありませんー。すみません!」

 コイツのいうことを信じてもいいのか……? あ……よく考えたら戦闘をしないという事は戦えない俺やフルルが残る場合もあるという事だよな。それで女王と戦闘……あまりにも無謀すぎるが、やる前から諦める訳にもいかない。


「やろう、絶対にコイツ等に勝つぞ!」

「すみません。では、この子はここに寝かせておきますのでご安心を」


 来客用のソファでぐったりと眠るアスタロトさん。心配ではあるが一刻も早く試練をクリアしてここを出る他に術はない。急がなくては……


「まずはここの階段を上って大広間に向かってくださいね~すみません~」

 他人事のように笑顔で手を振るメガネっ子を睨み付けると、俺たちは階段を駆け上がった。

 こんな面倒な事になるなんて……



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