61:種明かし
「大臣の演説について申しますと……。つまりあなたは、呪う相手、対象者と目を合わせさえすれば、その者を操り人形のように操れる、ということですか?」
その問いに、エドガーはいやいや、と顔を前で手を振る。
「まだそこまでではありません。特に、動作。歩かせたり、戦わせたり、といった筋肉を多く使う動きは難しくて無理っすね。だけど、例えば演説のような……、相手の動きを止めたまま、口だけ乗っ取って好きなことを話させる、くらいのことは出来ます。数十秒間だけですがね」
謙遜した言い方ではあるが、エドガーは胸を張り、身体をふんぞり返らせている。
そんな彼に、ルドルフ様は「恐ろしい力です」と素直な感想を告げた。
そしてさらに疑問を投げかける。
「しかし、大臣は演説で、『反逆因子に金を流したのは自分だ』と告白していたでしょう?どうしてあなたは、大臣が犯人だということを知っていたのですか?なにか接点でも?」
すると、エドガーは「いやいや」と顔を前で手をひらひらと振る。
「俺と大臣に接点なんてありません。ましてや、告白内容の根拠なんて、なーんにもありませんよ。でも、ウィル君が十中八九、大臣が犯人だと言っていましたし、なんかあいつ、悪人面だし、そういうことにしておこうって思いましてね。そもそも、あなただってなんの根拠もないのに死刑にされようとしてたでしょ?その仕返しですよ」
エドガーは胸を張り、堂々と答える。
ルドルフ様はさらに質問を重ねた。
「あなたと大臣に接点がないのであれば、なぜあなたは、大臣を呪うことができたのですか?呪術の源は、対象者を恨むそのエネルギーから来ているのでしょう?ポラリスを猫にできたのは、父、ゼスト会長への恨みから、だったのでしょう?ですがあなたは大臣から特段、何かされたわけではない。それなのになぜ、彼を恨み、呪うことができたのですか?」
するとエドガーは突然、椅子をガタンと引き、勢いよく立ち上がる。
「俺はねぇ、残虐公。元々、権力者や金持ち、成功者のたぐいが妬ましくて妬ましくてで仕方ないんですよ!!
あいつらは、俺たち弱者の気持ちなんてこれっぽっちも考えず、いつもふんぞり返って優雅な生活送ってやがるでしょ?
そんな輩の頂点に立つトレド大臣は、元々俺から呪われる要素をたっぷり持ってやがったわけですよ。
そこに、俺のかわいい愛弟子、コレット嬢が、不憫なあんたを助けたいと泣きついてきたんです。
しかも、ウィル君の話によれば、この大臣、マジで腹黒の性悪らしいじゃないですか。
一つの要素だけじゃ難しかったと思いますが、理由がこれだけ重なれば、もう、呪うのなんて簡単簡単」
そして彼は、「つまり、俺の負の感情の勝利!!」と高らかに拳を上げた。
(エドガーには恩を感じているけれど……やっぱり、ちょっと歪んでるよな、この人)
私は苦笑いを浮かべる。
ルドルフ様はぽかんとした表情で「なるほど」とつぶやいた。
「というわけで、これで俺の長々した説明は全部終わったわけだし、祝杯をあげようぜ?皆の衆。奪還成功と、俺のすんばらしい活躍を、皆で祝おうじゃないか!!!!」
エドガーが腕を広げて叫ぶ。
そのハイテンションさに、一瞬ひるんだものの、私は気を取り直して、「はいっ」と笑顔で頷いた。
今回も、ここまでお読みくださりありがとうございました。
物語ももうすぐおしまいです。
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