53:王妃とルドルフ
トレド大臣は、国王の従兄弟にあたる人物で、王家の血を引いていた。
だから状況次第では王位を狙える立場にある。
それゆえ、私が城で暮らすことを快く思っていない。
王位を争うライバルが増えるからだ。
最近クラウス王子につきまとっているのも、おそらくは彼にあることないことを吹き込み、私との関係に亀裂を生じさせることが目的だろう。
最終的には同士討ちを狙っている可能性すらあった。
幼いクラウス王子では、まだ大臣の真意を見抜けない。
だから王子は、まんまと大臣の思惑通り、私に敵意むき出しだ。
そんな王子を、お妃様は優しく諭す。
「私は、二人の息子を平等に愛している。あなたへの愛情は、これまでと何も変わらない」と。
クラウス王子は、その場で静かにうなずいていた。
このように、私の王宮での生活は、平凡でありつつも、常にさざ波が立っていた。
トレド大臣やその取り巻き達は、クラウス王子を自らの側に引き込もうと日々、彼につきまとっていた。
大臣らが王子に変なことを吹き込む度に、国王や王妃は王子を諭し、間違いを訂正した。
異なる意見の狭間で揺れるクラウス王子を遠くから見つめながら、私は深いため息をつく。
おそらく、私が城にこなければ、王子もこんな無用なことで混乱をきたさなかっただろう。
そう思うと、心が鈍く痛んだ。
申し訳ない気分にもなった。
私が王子にできることといえば、できるだけ彼の心をかき乱さぬよう、一人、静かにしていることくらいだった。
そんな日々を過ごす中で、その日は突然訪れた。お妃様が突然、病に倒れたのだ。
死の淵で彼女は、私の手を握り、震える声で言った。
「どうかこの先も、国王、そしてクラウスと共に、この国を見守ってください。
特にクラウスははまだ幼く、周囲の噂に惑わされやすいのです。その危うさが、本当に、本当に気がかりでなりません」
私は彼女を安心させたくて、その手を握り、言った。
「ご安心ください、お母様。私は、今後とも、国王陛下とクラウス王子を、我が生涯をかけて支えていきます。お母様から受けたご恩は、必ず、お返ししますから」
彼女は瞳を潤ませ、じっと私を見つめていた。
そして、「ありがとう」と小さくつぶやいた。
今回も、ここまでお読みくださりありがとうございました。
物語も佳境です。
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