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46:頼れる人

最初は、ただただ行く当てもなく、がむしゃらに駆けた。


私が人間に戻る姿を見られたら、大変な事になる。

その思いだけで、反射的に逃げ出していた。


呼吸は荒く、身体もどんどん重くなる。しかし、身体の変化とはまた別に、私の頭の中では、先程までの状況が徐々に思い起こされていた。


ルドルフ様が、捕まった。

しかも、反逆の罪で。


反逆罪には、通常、死刑が与えられる。

その首謀者が城内のものであれば、刑は確定と言っても良い。


(このままでは、ルドルフ様が死刑に……)


瞬間、吐き気がこみ上げる。

私は道の片隅で立ち止まった。そして咳き込みながら、思考を巡らせる。


ルドルフ様が無実だという、明らかな確証はない。

だけれど、今までの経緯を考えると、反逆罪はでっち上げられたと考えるのが自然だ。


演習場の件で、ルドルフ様に敵意を抱いたクラウス陛下。

元々彼の存在を煙たがっていたトレド大臣。

そして、不満を募らせる民衆達。


皆の怒りの矛先を向けるに足る人物が、ルドルフ様なのだ。


なんとかしたい。いや、なんとかしなければならない。

この際、人の姿に戻るなんてことは、大した出来事ではない。

そんなことより私は、この身を呈してでも、ルドルフ様を守りたい。

受けてきた恩を返したい。


私は瞳を閉じ、深呼吸をする。

瞼の裏に思い浮かんだのは、目を細める、優しげなルドルフ様の姿。


(今こそ、私にできることを……)


その時、不意に私の脳裏に、とある言葉が蘇った。


――これから君は、一人じゃない。俺が付いている。困った時は、いつでも相談してくれ!


耳の奥で、エドガーの声がこだます。


私は、静かに目を開ける。


そして、コクリと一人で頷くと、足で思い切り地面を蹴った。


首に掛けられた星のチャームを振り乱し、ひたすらに、エドガーの住む沼地へと駆けた。


この際、自分の身など、どうでもいい。

猫の姿でいる時より、人の姿でいる時の方が、より色んなことが出来るのだ。

私は、例え自分の正体が人であることがバレても、それでも、ルドルフ様を救いたい。

彼から拒絶されても、嫌悪の情を向けられても、いい。

それでも私は、自分の大切な人を救いたいのだ。これが私の意思なのだ。


周りの景色から、段々と建物がなくなっていく。

街が、村になり、畑になり、林になる。そこをさらに抜けると、湿っぽい空気が私の鼻腔を通った。


こうして沼地にたどり着いた頃には、私はすでに満身創痍の状態だった。

沼地に突き出た足場を踏み、エドガーの家にたどり着いた瞬間、私は思わず、扉の前で倒れ込む。


まだ、人の姿には戻っていない。

息は荒く、身体は燃えるように熱かった。

が、このまま寝そべっていてはいけない。私は力を振り絞り、声を上げる。


「エドガー、私です!コレットです!お願いです。どうか、私に……」


自分では叫んでいるつもりなのだが、その声は想像以上に弱いものだった。

しかし、再び息を吸い、渾身の力で叫ぶ。


「エドガー、お願いです!ここを、開けて、ください……」


その瞬間、ギィィと微かに音がした。

中から光も洩れてくる。私は彼の姿を確認し、安堵した。

同時に、視界が混濁し始める。が、絶対にこれだけは伝えたくて、なんとか再び口を開く。


「お願いです。エドガー。私に、魔術を教えてください。助けたい人が、いるのです……」


そう言い終えた瞬間、私の意識は途絶えた。

今回も、ここまでお読みくださりありがとうございました。

最近、一話辺りの文字数が少なくなっており、申し訳ございません。


物語も佳境に入りつつあります。

継続してお読みくださるあなたがいるから、書き続けていられます。

本当に感謝しております。


リアクション、ブクマ、☆評価などを頂けると、今後の参考になりますので、

お時間ございましたらクリックしていただけると幸いです。


今回もありがとうございました。

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