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45:ここでの異変

私がグッと歯を食いしばった瞬間、おかみさんは目の前の群衆に飛び込んでいった。


「ちょっと待ちなよ、あんたら!少しは冷静になりな!!!ルドはそんなやつじゃないよ!!

まだ、国から公式発表もないのに、めったやたらに騒ぎ立てるもんじゃないよ!!!!」


おかみさんは、片手で私を抱えながら、群衆の中心に割って入って叫んだ。

しかし、当たり前だが、そんなことをしても何の意味もない。


「なんだこのばーさんは!」


ある男が、おかみさんの手を乱暴に引っ張る。

彼女は尻餅をつく形で群衆から放り出された。


「なにかと思えば、あのオバハン、残虐公の母親が昔働いていたパブのおかみじゃねーか」


「どうせ、残虐公から金でももらってるんだろ。だからあいつを庇うんだ」


その暴言に、おかみさんは「なにをっ」と再び立ち上がろうとする。

が、先程の衝撃で腰を痛めたのか、「いてて」と言いながら、すぐに地面へとへたり込む。


(おかみさん……)


私は彼女を仰ぎ見る。冷や汗を流しながらも、群衆をにらみつけるおかみさん。

そんな様子を、鼻で笑いながら再び背を向ける人々。


その光景を見た瞬間、私の中で、鼓動が大きく、脈打った。

身体を巡る血液がより勢いを増し、熱を持ち、身体の隅から隅まで駆け巡る。そんな心地を抱いた。


「ちょ、ちょっとおかみ、猫の様子、おかしくない?」


介抱しようと駆け寄った踊り子さんが叫び声を上げる。

おかみさんが私に視線を落とし、目を丸くする。同時に私も、気がつく。


私の逆立った毛が、まるでタンポポの綿毛のように、急にハラハラと落ち始めたのだ。


それらは地面に着く前にすべて、空気に散って消えていく。


(これって、まさか……)


私は息を飲む。


(身体が、人の姿に戻ろうとしている?)


踊り子さんは、思わず私をおかみさんから取ろうとする。しかし。


「熱っ!!!!」


踊り子さんは手を離し、私は地面へと転がり落ちた。


「なんでこんなの平気で持ってたの?熱々じゃない!」


「いや、私の熱なのかと思って」


戸惑う二人を横目に、私は焦る。


高鳴る鼓動、熱、そして抜け落ちていく毛。


この症状はまさしく、以前呪いが解けかけた時のそれだった。


(なんで、こんな時に……。このままじゃ、皆に私の正体がばれてしまう)


躊躇っている時間は私にはなかった。

私はその場を離れるべく、一目散に走り出す。


おかみさんと踊り子さん、そして、群衆の怒号や罵声を背中で聞きながら、私は逃げ出したのだ。





今回も、ここまでお読みくださりありがとうございました。


物語も佳境に入りつつあります。

継続してお読みくださるあなたがいるから、書き続けていられます。

本当に感謝しております。


リアクション、ブクマ、☆評価などを頂けると、今後の参考になりますので、

お時間ございましたらクリックしていただけると幸いです。


今回もありがとうございました。

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