↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/63

44:悪者

城の桟橋前には人だかりができていた。


いつも、門兵さんは門の前におり、桟橋の前にはいない。

しかし今日は、民衆が城に流れ込むのを阻止すべく、門兵さんが二人で長い槍をクロスさせ、桟橋の前に立ち塞がっていた。


「残虐公が反逆罪で捕まったってのは、本当か?!」


「あいつ、散々人々を処刑しておいたくせに、自分も国に背を向けてたってことか?!」


怒号にも似た声が、あちこちから聞こえる。

詰め寄られた門兵さんは、槍で皆を牽制する。


「正式な発表はまだだ!早く立ち去れ!」


私は、おかみさんに抱きかかえられながら、手に力を入れ、上へと身を乗り出し首を伸ばす。

しかしその程度で桟橋の向こうの城の様子をのぞき見ることはできない。


「正式な発表前って、どういうことだい?」


人混みの後方で唖然としながらも、おかみさんは隣の踊り子さんに尋ねる。


「ほら、城の関係者がよく出入りする酒場があるでしょ?あそこで、非番だった兵士の一人が、酔っ払いながらポロリとこぼしたらしいのよ。そこから火が付いて、この有様」


「じゃあ、その情報が間違いってことも」


「いいや、そんなこたぁねぇ!!!」


後ろから突如声が響く。振り返ると、体格の良い、スキンヘッドの男が私たちを見下ろしていた。

彼は酒瓶を片手に、唾を飛ばしながら語る。


「俺はその場に居合わせていたんだけどよ。あいつは間違いなく城の兵士だ。

奴の話によるとよ、あの残虐公は、俺たちから巻き上げた税金の一部を反逆因子のアジトに流していたんだよ。で、自分の邪魔になりそうなやつを粛正しつつ、機会を虎視眈々と狙っていた。あいつのもくろみでは、邪魔な奴らをすべて処刑し終えたところでクーデターを起こし、自分が王になるって魂胆だったそうだぞ!!!」


男が大声で得意げに語るものだから、周りには新たな人々が集まってきていた。


「そ、そんな、何を根拠に」


おかみさんが話し終わる前に、男は答える。


「最近、大きな反逆因子グループが捕まっただろう?そのメンバーが全部吐いたらしい。黒幕は、ルドルフ公だって。元々、反逆者グループの資金源は不明だったんだが、これですべて筋が通った。悪いのはすべて、ルドルフの奴だったってわけよ!!!!」


そう彼が声高に叫んだ瞬間、男の周りにいた人達も、城の方へ駆けだしていく。


「なんだと!あいつ、処刑は国のためって言っときながら、結局全部自分のためだったのかよ!」


「税金を、そんなことのために使いやがって、あの残虐公は!!」


彼らは城の前で騒ぎ立てる人たちに混じる。

結果、人だかりはさらに大きなものとなり、その様子を見た人々が、なんだなんだと、さらに集まってくる。


「そんなこと、あるはずないじゃないか……」


群衆に混じろうと駆ける人々の間で、おかみさんは立ち尽くしたまま、私を強く抱いた。隣の踊り子さんも頷く。


「あの馬鹿真面目なお人およし野郎が、そんなことできるはずないよ!きっと、トレドの仕業だわ。最近、民意が王国から離れているからって、ルドを悪者に仕立て上げて、みんなでつるし上げようとしてんのよ!」


そう吐き捨てる踊り子さん。

しかし私たちの声など、誰も聞いてはいない。皆は口々に叫ぶ。


「残虐公、許すまじ!」


「今こそ、団結すべきとき!幼き少年王を我々の手で守ろう」


「諸悪の根源は、ルドルフ公にあり!」


それらの言葉に私は、混乱する。


今朝の新聞にもあったが、国民達は皆、今の国のやり方に不満を持っていた。

金持ち優遇の政策により、富は大商人や貴族の手に渡った。

一方で、税金は上がり、貧富の差は増すばかり。そんな不公平な政治をする現政権とクラウス陛下に、皆、良い感情は抱いていなかったはずだ。


なのに、なぜ今更、団結しようだなんて言えるの?

なぜ、諸悪の根源が、ルドルフ様だと決めつけるの?


――皆、信じたいものだけを信じるんだよ。


瞬間、ウィル様の発言が頭をよぎる。


そうだ。一般の人々にとって、何が真実か、などは関係ない。

彼らにとって大切なのは、「真実」ではなく「面白みのある何か」だ。


今、王国に対する民衆の不満は高まっている。皆、上げた拳を振り下ろす先を探している。

そこで現政権は、「残虐公 ルドルフ・フォード」を皆に差し出す。

彼は、王族で、貴族だ。さらに、人々を粛正し、処刑し続けた人間でもある。

彼一人を悪者にすることで、皆の溜飲が下がることを、王国は期待している。


そう、ルドルフ様は、民衆の生け贄にされたのだ。



今回も、ここまでお読みくださりありがとうございました。


物語も佳境に入りつつあります。

継続してお読みくださるあなたがいるから、書き続けていられます。

本当に感謝しております。


リアクション、ブクマ、☆評価などを頂けると、今後の参考になりますので、

お時間ございましたらクリックしていただけると幸いです。


今回もありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。