↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/63

43:突然の凶報

店での私の定位置は、ここ、おかみさんの自室だった。

ここを訪れるのは、おかみさんと親しい人だけで、流れる空気も、とてもゆったりしている。


おかみさんは、六十代くらいの身体の大きな人だ。

旦那さんに先立たれてから、一人でパブを切り盛りしているらしい。

気さくな人で、踊り子さん達からの信頼も厚い。


彼女は、昼頃から店の準備を始める。だから午前中は比較的のんびりとしていた。

私にご飯を食べさせる傍らで、ロッキングチェアに座り新聞を読むのが、彼女の朝の日課だった。


「セス商会が過去最高益……。金持ちはどんどん豊かになっていくねぇ。一方で、またも強盗事件の発生、反乱因子の取り締まり強化。なんだか、国がどんどん分断されている気がするよ」


そう言いながら今日も、おかみさんはコーヒーを片手に新聞に目を落としていた。

私は皿に出されたミルクを飲み終えると、自分の定位置である窓の縁に腰を下ろした。


反乱因子……。そういえば、ウィル様が以前言っていた気がする。

公安部隊が、反乱因子のアジトを見つけた、とか。


クラウス陛下が王位に着かれて、おおよそ一年。

最初は、「皆で団結して若き王を支えよう」なんて雰囲気が国中に漂っていたけれど、格差の広がりが速度を増す中、段々とみんな、王国に不信感を抱き始めている。


屋敷に居た時は、国内情勢より自らの生活、というような毎日だったので、世の中に目を向けている暇はなかった。

だけれど、こうして一度お城に入り、そしてまた一般社会に戻ると、貴族と平民との生活の差を痛感せざるをえない。

人々の会話や新聞の報道からも、徐々に国民の心が、王国から離れつつあることが、よくわかる。


(ルドルフ様は、大丈夫なのかな)


私は不安を抱きながら、窓越しに空を見上げる。ルドルフ様は、元々国民から「残虐公」と認識され、嫌悪の対象になっていることが多かった。

ルドルフ様の味方は、世界中探しても、ウィル様と、おかみさんと、数人の踊り子さんくらいしかいないのではないか、とさえ思う。


汚れ役をやらされ、人に疎まれ、それでも、黙って、自らの責務をこなしている。


彼は孤独だ。本当に。

こんな状態が続いた先で、彼が、行き着く場所はどこなのだろう。

おかみさんの言っていたような「彼が心から笑える日」というのは、いつか、来るのだろうか。


そんな時、バンと突如、客間のドアが音を立てて開く。


「なんだい急に。ノックくらいしな!びっくりするだろう?」


おかみさんが怒鳴るも、踊り子さんは慌てた様子で、彼女の元へ駆け寄った。


「大変なのよ、おかみ!!!ルドが、ルドが、反逆罪で捕まったんだって!今、城の門の前には、人だかりができてるよ!!!」


その急な知らせに、私は瞬間、息を止める。


「何だって!!!!」


おかみさんが立ち上がり、足をもつれさせながらも、開いたままのドアから出て行く。

私もすぐさま、後を追う。


「ちょ、あんたら、待って!!」


後ろから、踊り子さんの声が響いた。




今回も、ここまでお読みくださりありがとうございました。


物語も佳境に入りつつあります。

継続してお読みくださるあなたがいるから、書き続けていられます。

本当に感謝しております。


リアクション、ブクマ、☆評価などを頂けると、今後の参考になりますので、

お時間ございましたらクリックしていただけると幸いです。


今回もありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。