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33:兄弟姉妹の関係

ウィル様はフッと、呆れるようなため息を吐いた。

私は思わず「ひどい」とつぶやく。


「でも実際、ルド様は優秀だからな。

クラウス様のコンプレックスは、刺激されただろうよ」


ウィル様は宙に視線をやりながら、続ける。


ルドルフ様が来て以降、クラウス様の言動に変化が現れたようだ。

嫉妬の感情を顕わにするようになったのだ。


ルドルフ様が王妃と歩いている姿を見ると、彼は急にそちらに駆けだしていって「お母様と取るな」と叫んだらしい。

また、ティータイムの際、ルドルフ様のケーキが自分のより大きいと難癖をつけ、泣きわめく、ということもあったようだ。


そんなクラウス陛下は王妃は叱責する。

「冷静に物事を捉えなさい」と。


実際のところ、ルドルフ様が来られたからといって、彼がクラウス様より優遇される、ということは決してなかったそうだ。

王と王妃は二人に分け隔てなく接していた。

しかし、クラウス様にとっては、それがよくなかったようだ。


悪意ある家臣から様々なことを吹き込まれている彼は「血統としては自分の方が優れている。自分は兄より上」という意識が強かった。

それにも関わらず、ルドルフ様が自分と同等に扱われていることが、耐えられなかったらしい。


「ルド様は、クラウス様が自分に対して嫉妬していることを知っていた。

だから、クラウス様にはあまり近寄らず、距離を置かれていた。で、結果的に両者の溝は深まっちまった」


ウィル様がそこまで話したところで、私はふと、疑問を抱いた。


「でも、先日クラウス様とお会いした際には、彼はそこまで、ルドルフ様に対して敵意を向けておられるようには感じなかったのですが……」


「今は、そうだな。生前の王妃が、クラウス様を諭したこともあるし、自分が王位につき、その地位が揺るがなくなったってこともあるかな。

今では、そこまであからさまな態度は取られない。

むしろ、異常なまでにフレンドリーに、ルド様に接しておられる。

が、俺は、それがクラウス陛下の本当のお姿なのか、たまに疑問に思う時があるんだ」


私は、頷く。

それはそうだろう。

小さい頃に抱いたわだかまりというのは、そう簡単に払拭できるものではない。


実際に私は、クラウス陛下を見たときに、底知れぬ悪寒を感じた。

その原因がなんなのか、はっきりしたことはわからない。

が、彼の天真爛漫なその姿の裏に、「なにか」がある可能性はある。


「話を元に戻すと……、おまえさんが見つけた猫は『虐待王子に捕まるとヤバい』って言ってたんだよな?

正直、俺は、犯人がクラウス陛下って可能性は、十分に考えられると思うぜ。

ただ、幼い陛下が独断で猫狩りを雇うのは難しいだろうし、その裏には誰かがいるだろうけどな」


「トレド大臣、でしょうか?」


ウィル様は深く頷く。


「あいつは昔っから、ルド様のことを毛嫌いしているからなぁ。

猫狩りを雇って、虐待をルド様がやっていることにして、評判を下げようって魂胆かもしれん。

まぁ、それにしては手が込みすぎている気もするが……」


そう言いながらウィル様は「ま、全部、単なる推論にすぎねーか」と、手を頭の後ろで組み、はぁ~っと、ため息をついた。


「それにしても、兄と弟の関係ってのは、複雑なもんだよなぁ。

どちらが親から愛されているか、とか、どちらの方ができが良いか、とか、比べて比べてさぁ。俺は一人っ子だから、兄弟云々の話はさっぱりわからん」


「……私は、妹が居るので、なんとなくは分かります。

兄弟姉妹って、やっぱり、複雑なところがありますよね」


そう言って、窓の外に目をやる。


私が部屋に閉じこもっていることもあり、あの叙任式以降、リネットの姿を見たことはない。

彼女は一応、国の魔術騎士団に入団したわけなので、城にも出入りしているはずなのだが。


リネットは今、どこでなにをやっているのだろう。

最年少の魔術騎士として、この城で上手くやれているのだろうか。

そんなことをふとに口にすると、ウィル様から思いも寄らない言葉が返ってきた。


「じゃあ、確認しにいくか。今から」


その突然の提案に、私は目を大きく見開いた。


「……えっ?そんなに簡単に行けるものなのですか?」


「あぁ。リネット嬢は、すでに俺たち騎士団の団員だ。

騎士寮には入っていないが、日中であれば城で待機しているはずだ。

多分、演習場で実技の練習をしているんじゃないか?俺で良ければ、連れてってやるけど」


その言葉を受け、私は目を瞬かせる。

屋敷でも、めったに顔を合わすことのなかったリネット。

そんな彼女に、こんなに簡単に会えるなんて。


「い、行きたいです!ぜひ連れて行ってください!」


我に返った私は、咄嗟にそう返事をした。


今回も、ここまでお読みくださりありがとうございました。

継続してお読みくださるあなたがいるから、書き続けていられます。

本当に感謝しております。


リアクション、ブクマ、☆評価などを頂けると、今後の参考になりますので、

お時間ございましたらクリックしていただけると幸いです。


今回もありがとうございました。

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