↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/33

29:箱の中身

「そういえば私、城内で猫を見かけたことがあります。

物置として使われている部屋で、です。

その猫は木箱の中に入れられていて、箱の上には麻袋まで積まれていました。

助けを呼ぶ声がして、私がその袋を除けると、猫はやつれた状態で飛び出してきました。

そして、ひどい目にあったと言いながら城を飛び出して行きました」


「麻袋が木箱の上に?

ってことは、誰かが猫を木箱に押し込め蓋をして、さらに重し代わりに麻袋を置き、故意に閉じ込めてた可能性があるってことだな?」


「……おそらくは」


ウィル様は、少し考え込むようにため息を付いた後、言った。


「今から、その部屋に案内してもらえるか?」



石畳の廊下をコツコツと音を立て、ウィル様は歩く。

私は、ウィル様のジャケットの隙間から外へと目を光らせていた。


あの時は、掃除メイドさんに発見され、

エプロンの大きなポケットに押し込められてそのまま部屋まで帰ってきた。

だから、どこをどう行けばあの部屋にたどり着くのか、よく分かっていなかった。


なのでウィル様は、自らの心当たりのある場所を私と共に一つずつ巡ってくれた。


「物置部屋には、どういうもんが置かれてた?」


「……木箱や、樽、ばかりだったと思います」


「じゃあ、武器庫ではないな。なら、この辺か?」


らせん状の階段を下りたウィル様は、とある廊下の前で立ち止まった。


そのフロアには窓がなく、薄暗い不気味な場所だった。


「ここ、のような気がします」


「ここは地下牢の真上の階で、ほとんど人が通らないフロアだ。このフロアの、どの部屋だ?」


「すいません、確信がもてません。一つずつ開けて確かめていただけますか?」


辺りには、ウィル様の足音だけが響いている。

彼は、前から順番に、一つずつ部屋のドアを開けていった。

ここはフロア全体が物置になっているらしく、どの部屋も埃っぽい。

日の光がないからか冷気が充満しており、思わず身震いをした。


そして、ある部屋のドアが開かれた時。


「あ、ここ。ここだと思います!」


私は叫ぶ。ウィル様は頷くと、持っていたマッチで、部屋のランプに明かりを灯した。


「ここは用具庫だな。が、古いものばかりでほとんど使い物にならねー。ガラクタ置き場だよ」


そう言いながらウィル様は、「どの箱だ?」と私に尋ねてきた。

私は彼の懐から飛び出ると、「これです」と、猫が入っていた木箱を爪でトントンと叩いた。


「なるほどな。まさか、他にはいねーだろうな」


そう言いながらウィル様は、木箱をそっと開ける。

そして、中身を確認した後、他の木箱も一つずつ下ろし、中を確かめていった。

私も木箱の上に乗っている麻袋の紐を引きずり下ろす。


「ん?」


黙々と作業をしていると、ウィル様がある木箱の蓋の縁を掴みながら声を上げた。


「この蓋だけ、異様に重いんだが」


彼は「んっ」と声を上げながら、その木箱の蓋を徐々にずらしていった。

その瞬間、ツンと刺すような匂いが鼻腔を付く。


「おい、これ!」


悪臭が立ちこめる中、ウィル様は鼻を指でつまみながら、もう片方の手で私に手招きする。

私は吐き気を我慢しながら、おそるおそる木箱の中を伺う。


「……これ」


その木箱は、外側こそ木箱だが、内側は鉄箱という二重構造になっていた。

そして、中に入っていたのは。


「動物の……死骸?」


薄暗いが、私には猫の瞳があるため、ある程度は見ることができる。


それらは、肉が朽ち、半分白骨化したような、なにか。


それらが箱に複数体、詰まっていたのだ。


ウィル様は顔をしかめながらも、その一つをつまみ出す。


「これは、猫……か?」


私は思わず顔を背ける。吐き気がこみ上げてくるのを必死で耐えた。


「とにかく、一端出よう」


ウィル様はすぐさま私を、守るように懐に入れた。



ルドルフ様の部屋に戻った後も、私は鼓動を落ち着かせることができなかった。


なぜあんなところに、猫の死骸が?

しかも、なぜあんなにも沢山?


やはり、猫狩りの噂は本当だったのだろうか。

だけれど、誰が一体、そんなひどいことを?


無数の疑問が頭の中を駆け巡る。


「いやー。えらいもん見ちまったな。大丈夫か?」


「えぇ、あぁ、はい」


私はかろうじて返事をする。


ウィル様は、前髪をくしゃっと掴むと、俯きながら言った。


「やっぱ、偵察の話、あれはナシだ、ナシ!

今の状態で、おまえが城内をうろつくのは危険すぎる。

あの死骸については、俺が調査を進めてみる。

だから、ねこすけはとにかく、この部屋から出ないこと。

話をゴチャつかせてすまないが、わかったな?」


私は頷く。

ルドルフ様のお役に立ちたい気持ちは十二分にあったが、今はやはり、ウィル様の指示に従うべきだろうと思った。


私が事件に巻き込まれれば、役に立つどころか、かえって迷惑をかけかねない。


「それにしても……この城は課題が山積だな。

トレドの野郎の企み、増え続ける反逆者、そして猫の死骸……。

もー、俺だけでは処理しきれねーよ!!」


ウィル様はハァ~とため息を吐きながら、ベッドに寝転がった。

その瞬間、部屋の扉が開く。


「……ウィル、私のベッドで寝そべるとは。我が物気分ですね」


いつも読んでいただきありがとうございます。麦野です。

前回に引き続き、おどろおどろしいエピソードで申し訳ございません。


また、毎度毎度で申し訳ございませんが、☆の評価や感想等いただけると非常に励みになりますので、

よろしければお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。