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カランコロンと夢の跡

高い高い北の塔。

暗くて狭い部屋から遥か遠く空の景色を眺めていた。


『そこで何をしている?』


扉を開けたのはいつもの食事を運ぶ老婆ではなく物語にでも出てきそうな王子様だった。

私が5歳になって初めての寒い日。

王子様は驚いた顔を見せたかと思えば伏し何か悔しそうに小さな手を強く握り締め震えていた。


『知らなかった』


たった一言呟いて出て行った。

再び閉ざされた重く冷たい扉を呆然と眺めながら瞬間弾かれたように窓辺へ走る。

鉄格子が嵌められた窓はうまく下の様子を見ることも叶わないが一生懸命落とした視線に先ほどの少年が走り去る姿が映った。


彼の言葉の意味はわからないけれど忘れられない人となった。


それからはまたいつもの日々。


その日々が終わりを告げたのは3年後のいつも食事を運ぶ老婆が姿を消した時だった。


ここ数日、食べ物はおろか水もまともに飲んでいない。

元から細過ぎた体は更に弱り意識さえ朦朧としていた。


このまま死ぬのならそれでも良い。


幼いながらに過る思いはそのな虚しいものだった。


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