カランコロンと夢の跡
人は夢を見る生き物である。
大きかろうが小さかろうが夢は夢だ。
他人が笑っていい代物ではない。
しかし彼女の夢は変わっていた。
花も恥じらう16歳だと言うのに未だに婚約者の「こ」の字も出ない令嬢ナツキ。
地位も現国王の妹と言うお墨付きだ。
婚約者候補がドッと押し寄せても不思議ではない。
ただの1つもそんな話がない彼女には有名な噂があった。
「現国王の妹にして血の繋がっていないどころか現魔王との間に出来た魔族娘」
リスクの有り過ぎる婚姻の為に誰も名乗り出ないのである。
「お兄様、婚約者候補はまだですの?」
「バカを申すなナツキどこの馬の骨に貴女の様に愛らしく可憐な美姫をやれるものですか!!」
訂正が受け入れられるならシスコンと
「お父様、私に政略的結婚はまだですの?」
「何を言っているお淑やかでか弱いお姫様を具現化した愛らしいお前をどこぞの魔物の嫁になどとくれてやるものか!!」
激しい親バカかぶつかり合い人間と魔族にしては珍しく一致団結して可愛い可愛いナツキの婚姻を阻止していた。
人間社会にも魔族社会にも貴族が存在しお互いがお互いの領域を侵さない限りは同盟が結ばれ続けている。
そもそも同盟の切欠がナツキだった。
当時、人間対魔族の攻防が激化していく中1人の人間女性が魔族の王の目にとまった。
元王妃、マリア。
国王との間に世継ぎに恵まれず捨て置かれ王宮内の争いに敗れ心身共に深く傷付いた彼女は人間と魔族の領域の間にある大きな深い森で死を決意していた。
偶々とは言え魔王城をこっそり抜け出し空中散歩をしていた現魔王が彼女を見初め心を癒し恋に落ちた。
やがて懐妊しいよいよと言う時に人生とは上手くいかないもので王国より使者がマリアを連れ去った。
戦争の激化を思わせたが浅ましくも王は
「マリアと引き換えに同盟と子供を事実上の人間に手を出さない為の人質」
と言う条件を申し出てきた。
マリアを愛して止まない魔王は承諾。
無理矢理に勝ち取った同盟もナツキが成長するにつれ良好に築かれてていく兄妹関係の中で兄が事実を知り激昂し父王を倒し幕が引かれたかに思えた。
しかし魔王を始めマリアも兄を信用し任せる事に引いては同盟を確固たるものにした。
ここまでを知る者は元王、現国王、現魔王、マリアを置いて他にはおらず元王は今でも魔族と同盟を見事に結んだ賢王と謳われ王妃は不貞の魔女と呼ばれる事となった。
そして残された人間でも魔物でもない彼女。
彼女の夢は『現国王レンと結婚する事』
続く。




