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風邪ひいて彼氏が出来て嘆かれました。

一体、どう言う事でしょう?


私は風邪を引いていただけです。


加瀬晶かせあきら、28歳、性別は女。

喉にダイレクトアタック系の風邪を拗らせ少し良い感じにイケボになっていました。



ここまで話せばわかりますか?






一週間前の私は荒れていました。

喉が痛くて上手く喋れずそれでも仕事は待ってくれない。

優しく看病してくれる男なんて皆無。

何ならその流れに乗って「晶くん」などと茶化される始末。


もーね。紳士なんて都市伝説ですよね?

男はみんな少年へと退化してるんですよね?

まぁ、そもそも折り返し地点なんて見当たらないけど・・・


そんな時に奇跡が起きたのです。


何時もの帰り道、茶化されながら通ったゲーセンの前。

「あ、あの。アキラさん!!」

「はい?」


見やればアイドルもビックリの爽やか少年?青年?が地毛であろうフワフワ茶髪とヘーゼルの瞳を揺らし真っ赤になって近付いてきました。

それをどこかボンヤリと日本人なのに綺麗だなって思っていたら目の前まで迫ってきたのです。


「俺じゃダメですか?」

「は?」


じゃれ合う同僚と文字通り目が点になりました。





高谷悠たかやゆう24歳、そんな男より俺にしませんか?」





絶句。初心ではありません。

意味くらい理解しました。

しかし同僚の方が衝撃が強過ぎた様で倒れそうな勢いです。色んな意味で。


まぁ見た目も悪くない性格も悪く無さそうなのでお姉さんお付き合いする事にしてみました。


「よ、よろしくお願いします」


マジか?!と言う同僚の叫びは無かった事にして付き合ってみれば紳士でワンコな彼でした。

とても可愛くて誠実で真っ直ぐ。

理想的でいてすぐに手を出そうとしない彼にどっぷりハマりそうな5日目の事。


声の調子もやや治りかけ。

普段から女にしては低い声でも治ってきた事は喜ばしかった。

彼のセリフを聞くまでは・・・






「アキラさん、声が女みたい・・・・になってるけど風邪引いたの?」





周辺の空気が凍ったのを確かに感じた。

一緒に行動していた同僚も5日前の様に凍り付いていた。

気のせいだよね?聞き間違いだよね?とも聞けず素直にただ呟いた。


「・・・私、女だよ?」


その瞬間の彼の顔は忘れられない。






結果から言えば泣かれました。

嘆かれました。

「俺の理想の彼氏・・・・・が女なんて有り得ない」

と人の往来が激しい道のど真ん中で大声で叫ばれました。


泣きたいのは私なんだよ。

理想的な彼氏が性別の違いで私を否定したのです。

頭の中パニックです。







それから更に2日後の今、同僚と歩く何時もの道に彼はおらず完全に何時もの日常です。

ちょっと同僚が気遣わしげになった事を除けばいつも通りです。





そして更に半年が過ぎ笑い話にもならないが傷が癒え始めた頃それは突然起こった。


「俺じゃダメですか?」


懐かしい声音。


色んなものに折り合いをつけた高谷悠25歳がそこには立っていた。

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