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Time Trip to Another World ~東雲~  作者: 蒼穹の使者
第三章 〜曙〜 幸せになります
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親になるという事

最終話となります。

十月十日とつきとうかと昔の人は言ったらしい。

10か月と10日で赤ちゃんが生まれてくると。


驚きと歓喜に沸いた妊娠報告の後、すぐに悪阻(つわり)と言うものが襲ってきた。

寝ても覚めても気持ち悪いのです。

お酒に例えるなら、二日酔いが延々と続く感じです。

吐きそうで吐けない、挙句に貧血のような症状が追い打ちをかけ・・・最悪です。


「瑠璃、大丈夫か。かなり悪そうだが」


一さんは心配そうに背中を擦ってくれています。

検診で「悪阻があるのは赤ちゃんが元気な証拠!お母さん頑張って」って。

「はい、頑張ります」と反射的に返すだけ。


「時間が過ぎるのを待つしかないですから」

「無理はするな、会社は暫く休んだ方がいいだろう」


こうしてかれこれ10日も会社を休んでいます。

山崎さんに勧められ、先日とうとう点滴を打ってもらいました。


お腹の赤ちゃんは元気だけど、お母さんが干からびちゃうといけないからと言うことで。

山崎さんにはお世話になりっぱなしです。

いっそのこと産科医の資格も取ったらいいのに・・・


悪阻が軽くなったのは戌の日(5ヶ月)を迎えた頃だった。

それでもそんなに元気ではない。

皆で安産祈願をしてきました。


「一さん、知りたいですか?」

「瑠璃は知りたいのか?」

「うーん。名前とか産む準備が早くから出来るので、知ってもいいかなとは思います」

「ならば一緒に聞こう」


6か月に入った頃、分かるかもしれないと言われていた。

ゴクリ、じーっとモニターを見る。

分からない、素人には分からないのです。


「ああ、分かりましたよ」

「どっちですか?」


先生はにっこり笑って「男の子です」とサラリと言った。

月日は流れ、9か月に入る頃には産休と育児休暇申請を出した。

働かなくてもいいと一さんは言うけれど、いつでも辞められるからと押し切った。


夏も近づく6月のある日、第一子である男の子が誕生した。

長男、ほむら 濃い紫の瞳だ。

なぜだろう、気のせいだろうか。その子は歳三兄さんに似ていた。


「おい、こいつ俺に似てるじゃねえか。いい男になるぞ」


それはそれは父親以上に大喜びでしたよ。


「一さん。なんだか、すみません」

「気にするな、瑠璃の血が強いと言うだけだ。次は娘が欲しいな」

「そうですね」


その2年後の9月、第二子であるこれまた男の子が誕生した。

二男、りく 赤茶の髪。

気のせいではない、左之兄によく似ていた。


「俺の息子みてえじゃねえか。堪んねえなぁ」


食べてしまうのではないかと心配するくらい、見つめている。


「一さん、度々すみません」

「いや、大丈夫だ。それにしても土方の血は濃いな」

「もう一回、頑張ってみますか?」


更に2年後の4月、私は出産した。しかも帝王切開で!

その理由は、双子だったからだ。

三男、りゅう くりくりした目の男の子。

長女、瑠風るか 艶艶した黒髪の女の子。

流は言うまでもなく、総司に似ていた。


総司は待ちきれなかったのか、

「この子、賢くなるよ」と一さんより先に抱く始末。


でも、待望の女の子である瑠風は一さんに似ていたんです!


「よかったぁ、この一さんに似てる。私、もう産めないから」

「瑠璃にも似ている」


こうして私は4人の母親となった。

さすがに会社は退職し、専業主婦として気張っています。

息子たちは本当に元気で煩くて手におえないけど、瑠風の事はとても可愛がってくれる。


兄たちは自分の結婚はどうでもいいみたいで、自分に似た甥たちを我が子のように可愛がった。

焔は歳三兄さんにべったりで、陸は左之兄から離れないし。

まだ歩けない流ですら、総司の顔をみたらキャキャっと笑う。

だけど、本物の父親には適いません。


「父さんお帰りなさい!僕ね、今日ね・・・」


焔と陸は帰ったばかりの一さんから離れない。

大好きな伯父と遊んでいても、姿を見たら走ってくる。


そして、この頃二人はよく喧嘩をするようになった。

男の子の喧嘩は本当に凄くて、もうあちこちキズだらけ。

キズは体じゃなくて、家具たちが犠牲に。


「一さんっ!」

「瑠璃どうした」

「あれ!」

「またあの二人か」


焔と陸に目をやると、怪しげな、否、見覚えのある影が。

青龍と玄武のちっちゃいのが居た。


「!?」

「うそ・・・」


両脇に抱えた末っ子たちはキャキャと大喜びで、足元を見ると。

白虎と朱雀のちっちゃいのが居た。


「子どもたちに遺伝してしまったようだな」

「みたいですね。どうしましょう?」

「・・・どうにかなるだろう」


まさかの遺伝というか伝承というか、こういう事があり得るんだと他人事(ひとごと)のように見ていた。

これからが大変だ。

こんなに幼いときから幻獣たちを呼び出して遊ぶのだから、この子たちの持つ能力は、自分たちの其れより強いだろう。


「兄さん達に言ってきます。私たちだけでは手におえません!」

「あ、ああ」


この能力を使う日が来ないように、私たちが護ってあげる。

だから、のびのびと大きく育って欲しい。

時代に世界に運命に捕らわれることなく、逞しく生きて欲しい。





「長くなりましたが、私たちの物語もこれで終わりです。本当にありがとうございました」

「瑠璃、誰と話しているのだ?」

「一さん、これまで私たちのお話を読んで下さった方々に」

「ああ、そうか。これで完結だったな」

「はい!」

「俺からも礼を言う」

「あ、歳三兄さん!」

「なんだ、もう終いか。ありがとうな」

「左之兄も!」

「おお、また何処かで会おうぜ」

「総司!」

「はいはい。いろいろと瑠璃がお世話になりました」


本当にありがとうございました!!

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