表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/36

20  消えたライラ


 ライラが、消えた。


 指輪を手にした瞬間、ふらりとライラがベッドに向けて倒れていく。慌ててアレクが手を差し伸べた先で――フッと、ライラの姿がかき消える。


 そしてベッドの上には、小さな少女が寝転んでいた。


「……ライラ、なのか?」


 少女はすやすやと眠っており、返事はない。しかし月の輝きを集めたような銀髪、ふっくらとした薄紅色の頬、恐ろしく整った顔立ちなど、ライラの面影を随所に感じる。


「な、なぜ急に子供に? いい一体、どういうことだ?」


 激しく動揺したピスティスが裏返った声で言うので、アレクは少し冷静になる。そして、しばし思案した後……穏やかに眠る少女を抱き上げ、ピスティスに声をかけた。


「ピスさん、馬車を呼んできて」

「は、はい! 馬車、ですか?」


 主からの指示に背筋を伸ばしたピスティスに、アレクは力強く頷く。


「そう、馬車。今すぐ帝都へ戻ろう」


 この少女がライラであることを証明できそうな人物は、アレクが知る限り一人だけ。その人物に会うためには、帝都のカイロス公爵家の屋敷に戻る必要がある。





「なんて愛らしいんだ……地上に舞い降りた天使のようだね」


 目的の人物――ライラの父である公爵は、少女を見ていつもの調子で褒めたたえる。


「うん、間違いなく幼い頃のライラだ」


 誉め言葉ですでに察していたアレクは、苦笑しつつ「そうですか」と返す。


「やっぱり、子供になったってことですかね……」


 調べてみると、少女の手には皇家の紋が入った指輪が握られていた。状況から見れば「指輪に触れたせいで子供になった」と考えるのが道理だ。しかし公爵は「いや」と首を横に振る。


「私に心当たりがある……恐らく、これは入れ替わりだ」


 あまりに唐突な言葉に、アレクは「入れ替わり……ですか?」と繰り返す。つまり、十六歳のライラが幼いライラと入れ替わったとでも言うのか。公爵はアレクの疑問を肯定するように頷き、続ける。


「三歳の頃、ライラは“神隠し”にあったことがある」

「それは……行方不明になった、ってことですか?」

「そういうことだ。見つかったのが皇城近くだったこともあり、これまで皇室による誘拐ではないかと疑ってきたのだが……今回のことで、ようやく原因がはっきりしたよ」

「けど、過去の自分と入れ替わるなんて、そんなこと……」

「そんなこと、あり得ない――そう、思うかい? “時逆の力”を持つ、君が?」


 馬車の中で交わした「ライラって俺のいとこだったのか」という言葉を思い出す。そう、ライラは皇族の血を色濃く引いている。“時を操る神秘の力”を持つ、高貴な一族の血を。


 公爵は幼いライラの手から取り上げた指輪を、そのままアレクに差し出す。


「この指輪には、力を増幅させるような効果があるのではないかな?」

「それをライラが手にしたことで、入れ替わりが起こった……」

「そう考えるのが、私からしたら一番自然だがね」


 指輪を受け取るが、なにも起こらない。アレクには反応しないのか、他に条件があるのか。どうやったらライラを元に戻せるのだろう……唇を噛んだアレクに、公爵は笑う。


「三歳のライラは数日で見つかった。つまり入れ替わりは、数日で解消されるはずだ」

「……けど、確実ではないですよね」


 公爵は呑気に構えているが、指輪の効果は確定していない。念のため、この指輪について調べた方がいいのではないか……そう結論づけたアレクは、公爵をまっすぐに見る。


「皇帝陛下にお会いするには、どうすれば?」


 アレクの言葉に片眉を上げた公爵は「こちらで手配しておこう」と不敵に笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ