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嫌われてたはずなのに、騎士団のみんなが離してくれない  作者: ぷく


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静かな亀裂


――医務室。


白いカーテンが、風に揺れる。


アオイは、ゆっくりと目を開けた。


「……ここ……」


ぼんやりとした視界。

体が、少し重い。


「……起きたか」


すぐ近くから、低い声。


「……団長……?」


視線を向けると、カイルが椅子に座っていた。


――いや、違う。


手。


アオイの手を、しっかりと握っている。


「……あ」


少しだけ、指が動く。


その反応に、カイルの力がわずかに強くなる。


「無理に動くな」


「……大丈夫だ」


声はいつも通り冷静なのに、

距離だけがやけに近い。


「……すみません……」


「謝るな」


即答だった。


「お前は、やるべきことをやった」


その言葉に、胸がじんわりと熱くなる。


「……守れましたか……?」


カイルは、一瞬だけ目を細めた。


「ああ」


「全部な」


短く、でも確かに。


その瞬間――


ドアが勢いよく開いた。


「お、起きてんじゃん!」


ノアだった。


「アオイ!」


ずかずかと近づいてくる。


「大丈夫か?どっか痛くね?」


言いながら、顔を覗き込む。


距離が近い。


かなり近い。


「……ノアさん……」


少しだけ後ろに引こうとするが――


「こら、動くなって」


肩に手を置かれる。


さらに距離が縮まる。


「ほんと無茶すんなよなー、心配したんだから」


軽い口調。でも目は笑っていない。


その瞬間――


「……離れろ」


低い声。


カイルだった。


「患者だぞ」


「えー、別にいいじゃんこのくらい」


「よくない」


ぴり、と空気が張る。


アオイはきょとんとする。


(……なんか……)


(近い……?)


そのとき。


「……騒がしいな」


ドアのところに、レオンが立っていた。


「医務室だぞ」


静かな声。だが視線はまっすぐアオイへ。


「……具合はどうだ」


「……あ、はい……大丈夫です」


「そうか」


短く頷く。


だが、動かない。


その場から、一歩も。


ただ、見ている。


じっと。


(……なんか……見られてる……?)


落ち着かない。


ノアが振り返る。


「なに、心配なら来ればいいじゃん」


「……」


レオンは少しだけ間を置いてから、歩いてくる。


ベッドの反対側に立つ。


距離はある。


けれど――


逃げ場を塞ぐような位置。


「……無茶はするな」


静かに言う。


「お前の力は、まだ不安定だ」


「……はい……」


素直に頷く。


そのやり取りを、カイルは無言で見ていた。


そして。


もう一人。


「……意識、戻りましたか」


いつの間にか、ユリウスがいた。


音もなく。


ベッドの足元に立っている。


「……ユリウスさん……」


アオイが目を向けると、わずかに頷く。


「身体の反応は正常です」


「魔力の暴走も見られない」


淡々とした報告。


だが――


視線が外れない。


じっと、観察するように。


「……興味深いですね」


ぽつりと呟く。


「極限状態で、あの規模の干渉を維持するとは」


ノアが顔をしかめる。


「おい、研究対象みたいに言うなよ」


「事実です」


ユリウスは即答した。


「彼の力は、極めて特異だ」


そして――少しだけ声が落ちる。


「……だからこそ、手放せない」


一瞬、空気が止まる。


(……え……?)


アオイが戸惑う。


ノアが「は?」と声を出しかける。


その前に――


カイルが立ち上がった。


「……もういい」


「全員、出ろ」


有無を言わせない声。


「は!?なんでだよ」


「休ませる」


「俺だって心配してんだけど」


「十分だ」


ぴりぴりとした空気。


レオンが静かに口を開く。


「……確かに、長居はよくない」


ノアが舌打ちする。


「……ちぇー」


しぶしぶ下がる。


ユリウスも、何も言わずに一歩引いた。


だが――


去り際。


アオイにだけ、視線を向ける。


「……また後で、詳しく聞かせてください」


静かに言って、出ていく。


レオンも続く。


「……休め」


短く、それだけ残して。


ドアが閉まる。


静かになる。


「……」


アオイは、少しだけ息を吐いた。


(……なんか……)


(すごかった……)


ふと、カイルを見る。


まだ、そばにいる。


そして――


手。


まだ、握られている。


「……あの……団長……」


「なんだ」


「……手……」


カイルは一瞬だけ止まった。


それから――


ゆっくりと離す。


「……悪い」


だが、その目は逸らさない。


「……心配した」


それだけ言った。


アオイは、小さく笑う。


「……みんな、優しいですね」


その一言。


――空気が、わずかに揺れた。


カイルの表情が、ほんの少しだけ固まる。


(……それで済ませるのか)


言葉にはしない。


だが、確かに残る違和感。



その頃――王城。


ミサキは、静かに書類を閉じた。


「……準備は?」


背後の人物が答える。


「完了しています」


「では――」


微笑む。


「“事故”にしましょう」


目は、笑っていない。


「次は、守れないわよ」


静かに、確実に。


影が動き出す。


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