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嫌われてたはずなのに、騎士団のみんなが離してくれない  作者: ぷく


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崩れる聖女

広場のざわめきは、もう止まらなかった。


「……今の、見たか?」


「聖女様が攻撃して……あの子が守った……?」


疑念が、ゆっくりと広がっていく。


ミサキは立っていた。


だが――


さっきまでの“完璧な聖女”の空気は、もうない。


「……皆さん、落ち着いてください」


声は変わらない。

表情も整っている。


だが、その奥に“焦り”が見える。


「今のは……演出です」


一瞬、空気が止まる。


「危険性を示すための、必要な実験でした」


ノアが思わず吹き出す。


「……苦しすぎだろ、それ」


レオンも眉をひそめる。


「無理があるな」


ユリウスは淡々と前に出た。


「では確認します」


「事前申請、及び王城記録は?」


「……」


「存在しませんね」


静かな追い詰め。


ミサキの視線が揺れる。


「……緊急判断です」


「聖女としての裁量で――」


「越権行為です」


即座に遮る。


空気が張り詰める。


カイルも口を開く。


「騎士団への被害報告も虚偽だったな」


「……っ」


ミサキの拳が震える。


周囲の声が、はっきりと変わっていく。


「……なんか、おかしくないか……?」


「聖女様……嘘ついてる……?」


「さっきの子、助けてたよな……?」


一つ一つは小さい。


だが――


確実に“信仰”が崩れていく音だった。


ミサキは、それを理解していた。


(……まずい……)


(このままじゃ……)


一歩、前に出る。


そして――


深く、息を吸った。


「……皆さん」


声が、少しだけ震えている。


「私は……間違えました」


ざわ、と空気が揺れる。


「危険性を証明するために、強引な方法を取った」


「結果として……不安を煽ってしまった」


頭を下げる。


完璧な角度。

計算された謝罪。


(……逃げたな)


ノアが小さく呟く。


レオンも低く言う。


「責任の“方向”をずらした」


ユリウスは目を細めた。


「……だが、否定はしていない」


そう。


ミサキは“嘘を認めていない”。


ただ、“方法が悪かった”とだけ言った。


民衆の反応は――割れた。


「……でも聖女様だし……」


「守ろうとしてくれたんじゃ……?」


「いやでも……さっきの……」


完全には崩れない。


だが――


戻らない。


以前のような、無条件の信頼には。


カイルが一歩前に出る。


「本件は騎士団預かりとする」


「詳細は調査し、王へ報告する」


「……異論はあるか」


誰も、何も言えなかった。


ミサキは顔を上げる。


その目が、一瞬だけアオイに向く。


冷たい。


完全な敵意。


(……覚えたわ)


声には出さない。


だが確実に、そう言っていた。



その頃――


医務室。


アオイは静かに眠っていた。


窓から光が差し込む。


そのそばで、ノアが腕を組んでいた。


「……すげーよな、あいつ」


レオンが頷く。


「一番怖かったはずなのにな」


ユリウスが静かに言う。


「……あの力は、危険だ」


一瞬、空気が張る。


「だが――」


「制御できれば、最強の防御になる」


カイルは、アオイを見つめたまま言った。


「……守る」


短く、はっきりと。


「今度は、俺たちがな」



一方、王城の奥。


ミサキは一人、立っていた。


鏡の前。


「……ふざけないで」


小さく呟く。


その表情は、もう聖女ではない。


「……全部、あの子のせい」


手を握りしめる。


「……奪われるくらいなら」


目が、暗く光る。


「……壊してあげる」


静かに。


確実に。


次の“悪意”が動き出す。

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