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ハーフエルフの父~エルフの里国編~  作者: タマツ 左衛門之介久


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マイドロ・リスシエ 石鹸っ葉

 お風呂は、特に好きな方では無い。

 

 でも、ゆっくりと『ほぇ~』と、長い時間を湯船に浸かる、必ずと言っていい程ウトウトしちゃって、、、好きかも。じゃあどっちだよ!

 お風呂ってさぁ、何か面倒くさいんだよなぁ。

 だから、別に入らない日があっても、いいんじゃないの。

 でも、エルフの里国に移住をしてからは、毎日お風呂に入るようにしている。

 それは、リーザからの助言と言うか指導から。



 ここ、エルフの里国の在る世界は、恐ろしく感じる程、私が居た世界と似ている。

 それは体感する気候から、住む者達、空気の濃度というか環境全般に渡り、、、。

 朝日が昇れば風も吹く。雨も降るし、夜を迎えれば月が上がる。

 私が暮らすエルフの里国には大きな季節の変化は無いけど、時期による寒暖差もある。


 生在る者は空気(酸素)を吸って呼吸を行い、食物を取り排泄する。

 姿形が多少違えど、哺乳類と呼べる種、植物、魚類に爬虫類、昆虫、菌類、、、そんな風に分類出来、構成される生物達も似た様なモノだし、食物連鎖も行われている。

 地球上と何も変わらない、別の国で暮らしているのかと思ってしまう程、、、そっくり似ている。

 

 そう、似ている。

 どんなに似ていて、どんなに近い存在だとしても、それは同じでは無い。

 だからリーザに言われた。

「トキヒコさんのその身に付きました良く無く菌、雑菌と呼びましょうか。」

「オレはドブ川入ったり、ドロ遊びをして育ったから、それなりに耐性と言うか、免疫力が有るんじゃないかなぁ」

 雑木林や草原くさはらで、そこに咲いていた花の蜜を吸ったり、良く分からない木の実なんかも食べて来たし。

 それも雑菌だか細菌まみれの汚ったない手のままで。

「それはトキヒコさんの居られました世界での事。この地では多くの事が異なりましょう。」

 冷静に考えれば、別の世界で別の場所。全てが違うかも?


「こちらであればトキヒコさんが知らぬ、トキヒコさんに対し未知と呼べます存在と接する機会も有りましょう。それらがトキヒコさんにどの様な影響を及ぼすかも、未知と成りまする。」

 未知の上乗せ?リーザは雑菌や病原菌の事を言っている。

「トキヒコさんが得ております免疫力が通ざる場面も有り得ましょう。」

 それらが原因で病気にでもなったら大変だ、ここには医師や病院も薬も無い世界。その上、私は“魔力”を内には秘めてないから、もっぱら病気を治すのは自分の治癒力頼み。

 リーザは私の身を案じてくれている。


 エルフ達は『術』で体の表面に付いた汚れを落としてしまうし、体内に侵入して来た病原菌の類なんかは体外へ追い出してしまう。

 大きな汚れや、魔力の循環を補う事に繋がる血流の循環を促進する為にも、お風呂に入る事は習慣となっているが。

(エルフ達のお風呂は、一般的に縦長の箱の形をして、一人用。掴まる為の補助の棒が天井から降りて来てるけど、それは立った状態でお湯に浸かる感じ。)


 人間である私は、魔力を内には秘めれないので『術』なんて使えない。自分自身の体で、外からの侵入者(何かの悪い菌類)に対応するしかない。

 もしも何かのバイ菌が体の中入ったとして、自分が持つ免疫力が通じる相手かは、分からない。

 だから、私にとって未知となる細菌類から身を清めるのは、先ずは外から、お風呂が一番だと。


 実はエルフの里国に来てから、お風呂に入るのは、やっぱりちょっと好きになったのかも。

 『トキヒコハウス』を作って貰った時に、湯船は自分で設計した。(まあ、要望とイメージを伝えただけだけど。)

 エルフ達が作ってくれた私用のお風呂は、細長い横向き。

 底面の長さは1m50cm位だから、底にお尻を付けたまま、足が伸ばせられる。でも幅は60cmぐらいしか無い。

 高さは80cm近くになるから、お湯は溢れ難いはず。

 実際に入ると窮屈さを感じる時も有るけど、何より湯舟に貯めるお湯が少なくて済む。

 自分なりに“省エネ”を考えたつもり。

 でも、お風呂に入るようになって何よりお気に入りなのが『石鹸っ葉』と私が呼ぶ葉っぱの存在。


 それは『マイドロ・リスシエ』という名前の石鹸代わりになり、洗剤であり消毒効果を持つ赤紫色の木の葉である。

 折りたたまれた状態の木の葉を水に漬け、擦って行くと、石鹸のように泡立つ。

 それで体はもちろん、湯船や壁面や床も一緒くたに洗える。

 普通の手洗いや食器洗いにも使われ、自然由来の万能の天然石鹸だ。

 直接腕にあて、ワシャワシャと擦れば泡立ち、擦った部分はツルツルになる。何より気持ちがいい!


 『マイドロ・リスシエ』、トキヒコが『石鹸っ葉』と呼ぶ葉であり、赤紫色の大きな葉を持つ一種の広葉樹『シゼワフィオ・トゥワーデドレワゥン』の葉である。

 収穫されれば束ねられたり折り畳められ、生葉のままや乾燥させて保管となる。

 使用時には、折り畳まれたままの状態であったり、広げたり、場合によっては千切られて使われる。

 葉脈から滲み出す成分には洗浄作用と殺菌作用、消毒効果も持つ。エルフの皆が使っている万能洗剤。

 エルフの里国の民達はキレイ好きなのである。



 『トキヒコハウス』に持たせられたマイドロ・リスシエは、『葉集めの者』ワゥィビエラク・ポパラワイエにて届けられし物。

 『トキヒコハウス』は、少し他のエルフ里より離れた場所。

「先日たまたま通り掛かったポパラワイエが石鹸っ葉(|マイドロ・リスシエ)を置いていってくれたけど、また持って来てくれないかなぁ」


 マイドロ・リスシエは収穫されれば集められ、ちょっとした配達の流れに乗せるとか。

 エルフの里国に運送会社は無いけれど、誰がが何処かに配る任を持つ者が居る。

 リュバックの釣果はムールオシオルで運ばれるし、流通業界と見紛う的な物資の流れはある。


 ただ、石鹸っ葉にしても、いつも誰かに頼みっ放し。

 自分でも実際に一度収穫を体験すれば、今後何処のどの葉を摘むのかを知る事が出来る。

 葉っぱを取るのだから、私でも出来るだろう。


「トキヒコさん『葉集め』成る者は存在しませんよ。」

「えー」そうなの?

「マイドロ・リスシエを収穫するはバラーク・ヅビオルー『集めし赤紫葉』のワゥィビエラク・ポパラワイエと成りまする。」

 エルフ達が持つ“呼称”って、覚えるのも言うのも、何か苦手。彼の名前となる“ポパラワイエ”も言い難いけど。



「リーザ、石鹸っ葉を使い切ったらどうしよう?(泡立ちが無くなるまで、数度は繰り返し使えるけど)。何時も都合良く、ポパラワイエが来てくれとは限らないから」

「そうですね、残りが乏しくなれば王宮の者に頼めば宜しいかと。」

 わぁ、王様(女王ユーカナーサリー)が使うのを分捕ぶんどっちゃうの?

「でもさぁ、自分で出来そうな事は自分でやらなくっちゃなぁ」

 木の葉っぱを摘むのだから、自分でも出来るでしょ。

 だけど摘むべき木と場所は教えてもらわないとな。


「ポパラワイエに石鹸っ葉の収穫に連れていってもらう事は可能かなぁ」

 邪魔すんな、って言われちゃうかな?




 リーザの『術』にて移動を行い(エルフの里国のどの地域なのか、我が家から遠いのか近いのか、全く不明。後で確認しとこ)、石鹸っ葉、マイドロ・リスシエの収穫に向います。

「トキヒコさん、この先がバラーク・ヅビオルー(集めし赤紫葉)が示しました場所と成ります。」


 先に続く木々をくぐり、進んだ先には赤紫色に染め上がった『シゼワフィオ・トゥワーデドレワゥン』の樹木の群集が広がっていた。

「凄くキレイ、紅葉とも違う、何か木が燃え上がっているみたい!」


 トキヒコは樹木まで近付けば、上に広がる枝を見上げた。

 マイドロ・リスシエの葉が付く枝は、地表より3〜4、5mは先の上、手を伸ばしてもおいそれとは届く高さではない。

「これだけの広葉樹だと、葉が落ちて来るのを待てば?」

 しかし、トキヒコが足元を見回しても、マイドロ・リスシエの葉は一枚として落ちてはいない。

 エルフの里国の森に生息と成る広葉樹であれ、落葉樹とは限らない。

「しかし、ハシゴも高枝切りバサミみたいなのも持って無いけど、どうする、ジャンプ?」


 程なくして、バラーク・ヅビオルー『集めし赤紫葉』のワゥィビエラク・ポパラワイエが徒歩にて現れた。

 背は190cm近く有りそう。エルフの里国だと、身長約178cmの自分が小人になっちゃたのでは?と感じる事が多い。

 背中に大きな籠を背負い、両手にも何やら鞄を下げている。

 以前『トキヒコハウス』に現れた時と同じ出で立ちだ。


「えぇっと、ポパラワイエ、今日はよろしく」

「スルガトキヒコがシゼワフィオ・トゥワーデドレワゥンのマイドロ・リスシエを採ろう事、収穫、と申すのか?別段に良き事。」

「ええ、見学させて下さい」


 ワゥィビエラク・ポパラワイエは、鞄を広げた。

 中に入っていたのは革製のベルト?それにロープ?

 ハシゴとか、あの高い枝へと向かう道具なり材料では無い。

 あ〜、このナタみたいなナイフで木の幹に足場を作るのかな?それともハシゴが近くに有るとか。


 ポパラワイエはロープを肩から掛けると、別に取り出した革製の長いベルトを幹と自分の背に通した。

 ベルトを腰の位置へとすると、体を幹から離し革製ベルトを一度、ピンと張った。

 そして両手にしたベルトを上方向に素早く投げ上げると、それを追うかの様に、スルスルと幹を駆け上がって行く!

 下から見ていれば、それは木の幹を這うかの様に駆け上がった。

「ほぇ~お見事!」

 やるなぁ、猿みたいだけど。

 テレビで観た、杉の木の枝の伐採職人みたい。


 あっという間に下枝部分に到着すれば、腰に回したベルトを膝までズラし、片膝に掛ければ脚の力で幹に留まる。

 枝先に向い体を真横方向に伸ばせば、マイドロ・リスシエを手でちぎり収穫して行く。

「うわぁ~スゴイなぁ!」

 体が枝に沿って平行になってる、良く落ちないもんだぁ。

 称賛に値する動き!なんだか曲芸でも見せられてるみたい。


 今度は肩に掛けたロープを取り出し、上部の枝へ投げつければ、まるでブランコの様にロープに座り、マイドロ・リスシエの収穫が続く。


 ポパラワイエは、籠いっぱいになったマイドロ・リスシエを背負ったまま、スルスルと地上まて降りて来た。

「さあ、スルガトキヒコ」

 えっ、オレも?

 ベルトを使って樹木を駆け上がる、、、なんてやった事無いよ。


 木に登った時は、手が届く範囲の枝を順番に掴んで、場合によっては逆上がりして足場を確保したりしたけど。

 先ず、スタートから掴まる枝が無い。それをこのベルトで代用するんだけど。

 まあ折角の機会だ、オレの運動能力を披露しましょう!


 見様見真似で幹と腰とにベルトを通して、後に体をズラしてベルトをピンと張る。

「よし!」

 足を一歩二歩と、垂直に木を登る感じで、、、地面と平行する形で、、、体が木と垂直になったよ。

 そしてココから、

「とうっ!」

 左右両手にしたベルトを素早く上に投げる!

『ドスンっ』

 トキヒコはそのまま落ちると、見事な尻もちを着いた。


「あー」これ、コツが有るかも知れないけど、相当な力もいるなぁ。

 でもちょっと思い出せ、何かやり方が違ってるぞ。

 そうだ、向きだ向き。ポパラワイエは姿勢も斜めのままだったぞ。それと順番。

 ベルトを上にするのが先だ。

「もう一回、行きます!」


 さっきは足だけ先に進めて、ベルトだけを体の位置より上に越そうとしたから。

 実際の順序が逆だな。

 先ずはベルトをピンと張って、ベルトが外れないかの状態の確認。

 そして足の位置は低いままに、先にロープを上方向に投げ上げ、追い掛ける様にほぼ同時に足で幹を蹴り体も一緒に上に!

「とうっ!」

 ベルトに追いついたら腕で引っ張り、落下を防ぐ。素早く次へ、幹を駆け上がる感じでロープを上に投げ上げつつ、駆け上がる様に体を引き上げ、それを素早く繰り返して。


 トキヒコは下枝の元まで辿り着いた。

「初めてなのに、やるなぁ、オレ!」ちょっとカッコいいかも!


「なんとかベルトを使ってココまで来れたけど」

 振り返る様に見下ろす先には、リーザとポパラワイエがこちらを見上げている。

 

 この先、ベルトに足を引っ掛ける感じで、体を横に伸ばして手を伸ばして、、、伸ばせられない。

 このベルト一本をピンっと張って、手で引っ張っていたベルトを足で、、、体を預けるなんて無理だ。

 それを膝に掛けてやるなんて、余っ程無理!

 それに多分葉の付く枝まで手が届かない。

 折角枝下まで来れたのに、石鹸っ葉を採るのは無理だ。落ちちゃう方が早いかも?


「せっかくココまで到着したけど、この先は無理みたい!」

 石鹸っ葉、私では収穫出来ません。


 ここで問題が発覚!

「それとさぁ、これ降りれない」

 ロープを木の幹に引っ掛けて、上に向かう勢いのままに登れたけど、どうやって降りる?


 勢い良く登れたが、結局、恐る恐るソロソロと降りる事となった。

 リーザとポパラワイエが私を受け止める様に構えてくれていたけど、、、カッコ悪い。

 人が行う事を見て、オレでも出来る、、、安易でした。スミマセン。




 下へと降りれば、今度は石鹸っ葉の下ごしらえ。

 手の平程の葉を広げて、取り出した小刀で葉の葉柄(葉の付け根の部分)を切り落とす。

「これらのスジィプルカ(葉柄)は、こうして地に撒く。」

 不法投棄?ここに着いた時に踏みしめていた小枝みたいなのはコレだったのか。

「いずれ撒きしスジィプルカも地へと還ろう事。」

 まあ、腐葉土や堆肥になるのかな。



「今日は一見さんで体験させてもらって、楽しかったです。ポパラワイエ、ありがとう」

 自分では収穫とはならなかったマイドロ・リスシエを一束貰った。

「スルガトキヒコ、任とはそれぞれが持つモノ。其れであるが故、自身で全てを整えよう事も無く。それぞれがそれぞれに行えば良き事。」


「多くを知るは良き事。だが、何者に任す事も良き事ではなかろうか。」

 もしかして、何でも自分でやろう、誰かに頼ってばかりはダメだと思っている事を、、、見透かされた?

 でもスイマセン、私はコレと言った任に就いてません。

「何者がスルガトキヒコに任を求め様事。」

 あ〜いや〜、今の私って、只の遊び人だからなぁ。


「確かに、任として続けて行くのが大変な事も少しであれ分かった気がしました」

 葉っぱを摘む、安易でした。一枚として取れなかった。

「だから、マイドロ・リスシエはありがたく、大切に使わせてもらいます」

 『遊び人』って任はどう?無しだよなぁ〜。




「トキヒコさん、湯殿が整いましたよ。」

「ああ、リーザありがとう。一緒に入る?」

 『トキヒコハウス』の湯舟にふたりして入るには、狭過ぎる。


 ひとりで湯舟に浸かり、大きく開かれた窓から夜の外を見る。

 横窓は換気も兼ねていて、お隣さんも居ないから、開けっ放し。

 視界に入る夜の森を見つめれば、夜行性の者達の気配を感じる。

 実際、窓から覗き込ん出来た者、デモニカザナ・カローワ(鬼牛)も居た。



「トキヒコさん、」

 ありゃ、お風呂場にリーザが現れちゃった。

 前も隠さず素っ裸。エルフ達は、裸に対する羞恥心を持っていない、多分。

 リーザの透明感が有る白い肌、ふくよかで張りの有るバスト、流れるボディライン、それはエロさを越えて、、、キレイだ。好き。


「トキヒコさん、ご一緒させて下さい。」

「う、うん」

 返事をするも、この湯舟にふたりして入るには狭過ぎる。


 トキヒコハウスの湯舟に、リーザと二人で浸かればギュウギュウだ。

 従来のエルフの里国に有る湯舟は、基本ひとり用。

 以前、女王ユーカナーサリーの音頭で建設した『エルフ湯』は、大きな浴槽の大浴場であり、多くの者達と一緒に入る事が可能だ。

 エルフ達には、ちょっとしたカルチャーショックを与えたけど、皆大いに気に入ってくれた。


「リーザ、狭くない?」

 聞くまでも無いよなぁ。

 リーザを後ろから抱える形で二人して狭い湯舟に浸かる。

 リーザの柔らかなお尻は私に乗る。

 程なくお湯は溢れ出す。

「はい、ですが、」

 身動き出来ない。

「ですがこうして肌を接して湯舟に浸かる。気持ちがいいです。」


 エルフの皆に作って貰った『トキヒコハウス』。

 100点満点のその倍付けの評価なんだけど、、、湯舟に関しては失敗したな。

 エルフ達に習ってひとり用位に設計しちゃったから、、、設計したのオレじゃんか。

 リーザとふたりして入れる大きさを考えて無かった。


 誰かと一緒にお風呂に入るのは楽しく、気持ちいい。

 リーザを抱えてお風呂に浸かる。気持ち良さは倍付けを越える。

 でも、別の“気持ち”が生まれちゃてるんだけど。




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