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第五十三話/決戦! 文化祭①

幼馴染の彼女と同じ大学への進学が決まり、国宝級イケメン高校生、爽哉の人生は順風満帆だった。卒業式を迎えたその日、第二ボタンはおろか、袖のボタンからネクタイに至るまで、全て取られるモテ男ぶりを如何なく発揮する。自らが築き上げた学園ハーレムの総括とでも言わんばかりに、爽哉の周辺は華やかさに満ちていた。

 しかし、そんな彼を神は祝福しなかった……


 彼女のストーカーに襲撃され命を落とした爽哉は、稀代のブサメンとして高校生活をやり直す現実を強いられる。学園の抱える問題、断ち切れない因縁、消化不良な想い……。ブサメンの自らと向き合う覚悟を決めた爽哉は、果たして絆を取り戻すことができるのか――

 今、試練の扉が開かれる。


【登場人物】

中間爽哉なかまそうや  イケメン高校生→ブサメン高校生

藤川千絵ふじかわちえ  爽哉の幼馴染

木崎優子きざきゆうこ  第三十六代生徒会長。図書委員

小澤詩織おざわしおり  攻守両立のコミュニケーションお化け

本八幡香奈もとやわたかな 大手健康器具メーカーの社長令嬢

宮永遥みやながはるか   陸上部。インターハイ優勝候補

皆川結衣みながわゆい  第三十七代生徒会長

本条鈴音ほんじょうすずね  第三十五代生徒会長。爽哉の姉的存在

中間涼香なかまりょうか  爽哉の妹

内藤亮介ないとうりょうすけ  爽哉の親友

大里拓馬おおさとたくま  ブサメン高校生→イケメン高校生


 ついに文化祭の当日がやってきた。

 朝のニュースが全国的な秋晴れを伝えている。天気予報の的中を祝うように、天高くまで澄み渡った青空が広がっていた。昨年までは平日に催されていた我が校の文化祭が、今年から土日、二日間を利用しての開催へ変更されている。確か、以前の我々、生徒会が仕切った二年生時の文化祭は、不幸なる雨に見舞われたと記憶している。しかし、日程がずれたおかげで秋雨前線を回避できたのだ。玉突きで不意に転がり出でた幸運に、俺は心の中で薄く笑った。教職員は総動員でオープンキャンパスの対応に追われている。

 文化祭の進行は全て、生徒会へ委ねられていた。


 準備は万端だった。時計の針が九時を指し、講堂では開会宣言が行われている。壇上には生徒会長である優子、その両脇を副会長であるかなみと結衣が固めていた。優子の号令とともに、講堂は鬨の声に包まれた。生徒は三々五々に散っていく。十時になれば校門が解放され、学外の来客を迎える手筈になっている。講堂はそのままステージに姿を変え、演芸が催される。グラウンドにはテントが並び建ち、部活連合による出店が営まれる。各校舎の教室では有志による出し物と、入学説明会が随時、行われる予定になっていた。


 開会宣言を発した後の生徒会の面々は、ステージを放送部員へ任せ、副校長と合流して講堂前のロータリーに建て並べられたテントへ向かった。協賛企業への挨拶回りである。

 正門に面した好立地は、最大限の感謝の表れだった。実際、協賛企業なくして、盛大な文化祭を執り行うことは難しかった。それだけではない。協賛企業は学校へも多大な寄付と寄贈を行っている。普通科各コースの運営は主に、企業の援助に因る所が大きかった。景気が厳しい中での企業との交流は、文化祭にかこつけた援助の継続依頼と言っても過言ではなかった。


 正門の正面、一番の好立地にひと際大きな黄色のテントが設えられている。テントにはデザイン性の高い筆記体でウェルネスエストグループと記されていた。本八幡香奈もとやわたかなの父、健太さんの会社だ。俺たちは最初にそこを訪れた。中には社長である健太さんと数人のスタッフが慌ただしく準備をしている。健康器具や医療用サポーターが展示されていた。


「社長!」

 副校長が声を掛けた。


「おぉ。これは仁川にかわ副校長。今日はありがとうございます」

 健太さんは笑って応じた。もちろん今の俺とは面識がない。しかし、記憶に違わぬ若々しい様子に、俺は懐かしさを感じていた。


「はじめまして。生徒会長の木崎優子です」

 優子は深々と頭を下げた。


「君が⁉ 娘からも聞いているよ。やり手なんだってね」

 優子は照れたようにはにかんだ。


「いえ、そんな事はありません。全ては生徒の自主性によるものです。香奈さんには、生徒会長選挙の応援演説で大変お世話になりました」

 優子は改めて、頭を下げた。


「仲良くしてくれて、ありがとう。香奈にもいい刺激になるよ」

 娘が話題に上がったこともあるのだろう。健太さんは終始、上機嫌だった。ふと、何かに気づいたように目を丸くした。


「おっと、そこの君は小うららんじゃない? もやしっ子の」

 健太さんは高木に気づいて声を掛けた。


「ずいぶんと逞しくなったな。いつも動画を見てるよ。じゃ、隣の君がうららんかい? 本当だ。引き締まってるねぇ」

 健太さんは久しぶりに会った親戚の子供に告げるように、高揚した声を上げた。


「写真撮ろう、写真!」

 ポーズをとった俺たちは健太さんと一緒に写真に納まった。

 こんなこともあろうかと、今日はうららんの仮面を持ち歩いていたのだ。優子をはじめとした生徒会女性陣は皆、笑いを堪えていた。


「これからも我が社は皆さんを全力で応援します。頑張ってください」


 健太さんは激励で送り出してくれた。俺は嬉しかった。お前は間違っていない、突き進め、と尊敬する兄から背中を押されているような気分だった。この勢いで優子にも恩返しするんだ。


 俺の胸には決意が宿っていた。


お読みいただき、ありがとうございます。

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