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第四十五話/宮永遥①

 幼馴染の彼女と同じ大学への進学が決まり、国宝級イケメン高校生、爽哉の人生は順風満帆だった。卒業式を迎えたその日、第二ボタンはおろか、袖のボタンからネクタイに至るまで、全て取られるモテ男ぶりを如何なく発揮する。自らが築き上げた学園ハーレムの総括とでも言わんばかりに、爽哉の周辺は華やかさに満ちていた。

 しかし、そんな彼を神は祝福しなかった……


 彼女のストーカーに襲撃され命を落とした爽哉は、稀代のブサメンとして高校生活をやり直す現実を強いられる。学園の抱える問題、断ち切れない因縁、消化不良な想い……。ブサメンの自らと向き合う覚悟を決めた爽哉は、果たして絆を取り戻すことができるのか――

 今、試練の扉が開かれる。


【登場人物】

中間爽哉なかまそうや  イケメン高校生→ブサメン高校生

藤川千絵ふじかわちえ  爽哉の幼馴染

木崎優子きざきゆうこ  第三十六代生徒会長。図書委員

小澤詩織おざわしおり  攻守両立のコミュニケーションお化け

本八幡香奈もとやわたかな 大手健康器具メーカーの社長令嬢

宮永遥みやながはるか   陸上部。インターハイ優勝候補

皆川結衣みながわゆい  第三十七代生徒会長

本条鈴音ほんじょうすずね  第三十五代生徒会長。爽哉の姉的存在

中間涼香なかまりょうか  爽哉の妹

内藤亮介ないとうりょうすけ  爽哉の親友

大里拓馬おおさとたくま  ブサメン高校生→イケメン高校生


 結衣は生徒会副会長に任命された。

 生徒会規則のあいまいな部分は、敢えてそのままに残してあった。その方が都合が良かったからだ。何はともあれ、当面の憂いは無くなった。

 俺はかねてからの懸念を取り除くために、心構えを新たにした。


 六月七日、天気は快晴だった。絶好の体育祭日和と言っていい。

 俺は天を仰ぎ、睨みつけた。雨が降れば良かったのに……。まもなく、その時がやってくる。俺は自らの資質を試されている気持ちでいっぱいだった。


 俺は日課の早朝ランニングへ出かけた。遥は既に来ている。一二三四段の石段の前で、ストレッチをしていた。


「ごめん! 待たせた」


「なんか今日は早く目が覚めちゃってね。体育祭が楽しみだったから……」

 遥は身体を前後左右に曲げながら、燦燦さんさんと光り輝く太陽のように笑った。俺は戸惑った。こんな遥になんと声を掛ければいいだろう、と。


「行こう」

 俺は遥を促して、石段へ駆け出した。


 上りきると、絶景が広がっていた。見慣れた景色でも、晴れ渡るとその輝きを格別に増す。今までで、ぶっちぎりに美しい眺望だった。明けたばかりの空は何にも遮られることなく、果ての果てまで抜けるようなセルリアンブルーをたたえている。降り注ぐ光が新緑を照らし、波打つように煌めいていた。体育祭の準備が整った高校のグラウンドを眼下に望む。校庭を囲うように建てられたテントが、紙吹雪のように散っていた。


「気持ちいー! 今日は本当にいい天気だね!」

 参拝を終えた遥は高揚した様子で、クルリと身体を一回転させてみせた。


「今日は何の競技に出るんだっけ?」

 既に知ってはいたが、注意を促すために改めて聞いてみる。


「えっと、学年リレーと部活動リレー、それに騎馬戦だよ」

 遥は嬉しそうに指折り数えた。


「騎馬戦……。怪我、しそうだな」

 自分でも不自然にしか聞こえなかった。


「え、なんで? 騎馬戦で怪我なんてしないよ」

 遥は笑い飛ばした。


「意外と騎馬戦って、危ない競技なんだ。十分気をつけろよ」

 俺にはそこまでしか言えなかった。


「わかった、わかった。心配しなくても、気をつけるよ!」

 遥は不安を微塵も感じていないように、元気よく宣言した。

 この注意で未来が変わればいいと、俺はただ祈る事しかできなかった。


 祈りは天へ届かなかった。遥はデジャビュのように同じ光景の中で、グラウンドへ落ちていった。


 最悪の未来を変えることは、俺にはできなかった。


お読みいただき、ありがとうございます。

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