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第四十三話/皆川結衣②

 幼馴染の彼女と同じ大学への進学が決まり、国宝級イケメン高校生、爽哉の人生は順風満帆だった。卒業式を迎えたその日、第二ボタンはおろか、袖のボタンからネクタイに至るまで、全て取られるモテ男ぶりを如何なく発揮する。自らが築き上げた学園ハーレムの総括とでも言わんばかりに、爽哉の周辺は華やかさに満ちていた。

 しかし、そんな彼を神は祝福しなかった……


 彼女のストーカーに襲撃され命を落とした爽哉は、稀代のブサメンとして高校生活をやり直す現実を強いられる。学園の抱える問題、断ち切れない因縁、消化不良な想い……。ブサメンの自らと向き合う覚悟を決めた爽哉は、果たして絆を取り戻すことができるのか――

 今、試練の扉が開かれる。


【登場人物】

中間爽哉なかまそうや  イケメン高校生→ブサメン高校生

藤川千絵ふじかわちえ  爽哉の幼馴染

木崎優子きざきゆうこ  第三十六代生徒会長。図書委員

小澤詩織おざわしおり  攻守両立のコミュニケーションお化け

本八幡香奈もとやわたかな 大手健康器具メーカーの社長令嬢

宮永遥みやながはるか   陸上部。インターハイ優勝候補

皆川結衣みながわゆい  第三十七代生徒会長

本条鈴音ほんじょうすずね  第三十五代生徒会長。爽哉の姉的存在

中間涼香なかまりょうか  爽哉の妹

内藤亮介ないとうりょうすけ  爽哉の親友

大里拓馬おおさとたくま  ブサメン高校生→イケメン高校生


 生徒会室には、重苦しい雰囲気が漂っている。


「それは否定しない。しかし、いつまでも時代に合わない規則に縛られるわけにはいかない。もう高校生なんだ。我が校の生徒なら、自由の中から分別を学ぶことくらいできるはずだ。俺はそう信じている」

 結衣は暫く黙っていた。

 眉をひそめ、考え込んでいる。俺は答えを待った。


「……新入生の私たちは校則緩和について、何の意見も取り入れてもらっていません。ちゃんと説明と協議をすべきです」


「それは他の学年も一緒だ。教職員会議と保護者会、それに生徒の代表である生徒会とで協議して、改定内容を精査した。全員の意見を取り入れるとなると、話がまとまらないんだ。今後、目安箱を設置して随時、生徒からの提案を募集することになっている」


 結衣の言いそうなことには、想定問答を用意していた。


「しかし! その生徒会を選ぶ選挙に私たちは参加していません。それでは、新入生にとっては不利な改定になるでしょう」


「それについては申し訳ないと思う。しかし、生徒会を二年生が運営するという慣習、それこそ校則の規約によって、必然的にそうなるんだ。それを言い始めると、生徒会は何も議決できない、お飾りに成り果ててしまう。まずは校則を変え、校則によって定められている生徒会規約を変える他にはない」

 結衣は口を引き結んだ。自らの意見がただの愚痴だとは自認しかねるようだった。


「父も、祖父も、この高校の出身なんです。私はこの高校へ入学したことを誇りに思っています。私の子供や孫にも同じ喜びを与えてあげたい。ですので、校則の不用意な緩和には反対です」


 感情論で押し切ってきたか……仕方がないな……。


 俺は担当教員から借りてきた、持ち出し禁止の資料を結衣に手渡した。書類には数字とグラフがびっしりと印刷されている。


「他言無用でお願いしたい。これは入学希望者数の推移と、入学説明会へ来た学生へのアンケート結果だ。見ての通り、入学説明会に参加した人の大部分が校則の厳しさについて、懸念を持っていることがわかる。入学希望者の推移を見てくれ。このままでは、各コースの統廃合だけでなく、学校そのものの規模を縮小しなくてはいけなくなる。教職員会議では既に話が出ているんだ。君の代で廃校になる可能性も少なからずある。それだけ現行の校則は大きな問題をはらんでいるんだ」

 結衣は手元の資料を食い入るように読んでいた。何度もページを繰り、戻ってはまた繰った。手を止めると、まっすぐに俺を見つめた。


「……しかし、私は、反対です」

 諦念を漂わせながら、ポツリと呟いた。もう理由は出てこないようだった。


「……そこでだ。会長、お願いします」

 優子は静かに話を聞いていた。俺の視線に促されるように、姿勢を正した。


「校則の改定に合わせて、生徒会規約の変更を進めています。生徒会長の権限をもって、学年を限らず、生徒会へ参画できるようにします。皆川さん、中学校で生徒会長を務めていたそうですね。そこで相談なんだけど、生徒会へ入ってもらえないかしら」


 突然の提案に、結衣は息を呑んだ。


お読みいただき、ありがとうございます。

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