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第四十二話/皆川結衣①

 幼馴染の彼女と同じ大学への進学が決まり、国宝級イケメン高校生、爽哉の人生は順風満帆だった。卒業式を迎えたその日、第二ボタンはおろか、袖のボタンからネクタイに至るまで、全て取られるモテ男ぶりを如何なく発揮する。自らが築き上げた学園ハーレムの総括とでも言わんばかりに、爽哉の周辺は華やかさに満ちていた。

 しかし、そんな彼を神は祝福しなかった……


 彼女のストーカーに襲撃され命を落とした爽哉は、稀代のブサメンとして高校生活をやり直す現実を強いられる。学園の抱える問題、断ち切れない因縁、消化不良な想い……。ブサメンの自らと向き合う覚悟を決めた爽哉は、果たして絆を取り戻すことができるのか――

 今、試練の扉が開かれる。


【登場人物】

中間爽哉なかまそうや  イケメン高校生→ブサメン高校生

藤川千絵ふじかわちえ  爽哉の幼馴染

木崎優子きざきゆうこ  第三十六代生徒会長。図書委員

小澤詩織おざわしおり  攻守両立のコミュニケーションお化け

本八幡香奈もとやわたかな 大手健康器具メーカーの社長令嬢

宮永遥みやながはるか   陸上部。インターハイ優勝候補

皆川結衣みながわゆい  第三十七代生徒会長

本条鈴音ほんじょうすずね  第三十五代生徒会長。爽哉の姉的存在

中間涼香なかまりょうか  爽哉の妹

内藤亮介ないとうりょうすけ  爽哉の親友

大里拓馬おおさとたくま  ブサメン高校生→イケメン高校生


 五月下旬、校則緩和の準備は整った。

 今週、金曜の臨時全校生徒集会で説明が行われ、即日、新校則が発効する。新校則が記された書類も既に用意されていた。


 俺は優子を伴って、一年生の教室へ向かっている。目的の人物はすぐに見つかった。


「皆川さん、ですね?」

 優子は努めて優しく話しかけた。


 皆川結衣みながわゆい

 俺の記憶では、次期生徒会長になる予定の少女である。


 校則緩和の準備を急いだのには理由があった。

 俺の記憶を辿ると、六月に入って、校則緩和反対の機運が高まる。SNSや裏サイトを使って、扇動が行われるのだ。首謀者は生徒会長候補だった浜中伸志。浜中は一年生に声を掛け、校則緩和の是非について選挙を行うべく声を上げるよう画策するのであった。それでなければ、生徒会長選挙に参加していない、新入生にとっては不利な改定だと主張するのだ。浜中が声を掛けたのは、SNSで校則緩和に異を唱えていた結衣だった。それが五月下旬から六月上旬にかけての間だったと記憶している。そのおかげで校則緩和の発効が秋口までずれ込んだ。再度の選挙、教職員会議、保護者会への説明、内容の精査……。その負担は主に優子に圧し掛かった。


 だから、急いだ。

 校則緩和反対の勢力が糾合する前に、発効するように手筈を整えた。SNSを確認すると、結衣は既に不満を書き込んだ後だった。俺は優子と相談し、話し合いを持つために一年生の教室へ足を運んだのであった。


「なんでしょうか、生徒会長……」

 結衣はにらみつけるような半眼で、静かに答えた。


「少しお話をしたいのですが……。生徒会室まで来て頂けませんか?」

 優子は相好を崩して丁寧に言った。


「いいですよ。行きましょう」

 結衣は怖気づくこともなく、肩で風を切るように教室を出る。生徒会室に着くと、対面して席に着いた。


「こちらは中間爽哉さん。生徒会書記です。まずは彼から説明を聞きましょう」


 生徒会室には三人しかいない。他のメンバーには遠慮してもらった。


「はじめまして。中間です。時間を取ってくれて、ありがとう」

 俺は見知ったはずの結衣にうやうやしく頭を下げた。


 やけに落ち着かない、妙な心持ちだった。結衣は、どうもと呟いて軽く頭を下げる。俺はSNSの書き込みを印刷した紙を差し出した。


「これは……」

 結衣の動きが止まった。


「匿名の投書により、君が校則緩和に反対だと知った。責めるつもりは全くない。ただ、校則緩和の準備が整った今、波風を立てられると困るんだ。関係各所にも手配が済んでいる。納得するまで説明をするので、話を聞かせてもらえないか?」


「この学校にはスパイでも潜んでるんですか? 一昨日の書き込みですよ?」

 苦笑いを浮かべて、鼻を鳴らした結衣は、

「校則を緩和すれば、確実に風紀が乱れます。我が校の名を汚すことになります」


 毅然と言い放った。


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