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第四十一話/新たなる決意②

 幼馴染の彼女と同じ大学への進学が決まり、国宝級イケメン高校生、爽哉の人生は順風満帆だった。卒業式を迎えたその日、第二ボタンはおろか、袖のボタンからネクタイに至るまで、全て取られるモテ男ぶりを如何なく発揮する。自らが築き上げた学園ハーレムの総括とでも言わんばかりに、爽哉の周辺は華やかさに満ちていた。

 しかし、そんな彼を神は祝福しなかった……


 彼女のストーカーに襲撃され命を落とした爽哉は、稀代のブサメンとして高校生活をやり直す現実を強いられる。学園の抱える問題、断ち切れない因縁、消化不良な想い……。ブサメンの自らと向き合う覚悟を決めた爽哉は、果たして絆を取り戻すことができるのか――

 今、試練の扉が開かれる。


【登場人物】

中間爽哉なかまそうや  イケメン高校生→ブサメン高校生

藤川千絵ふじかわちえ  爽哉の幼馴染

木崎優子きざきゆうこ  第三十六代生徒会長。図書委員

小澤詩織おざわしおり  攻守両立のコミュニケーションお化け

本八幡香奈もとやわたかな 大手健康器具メーカーの社長令嬢

宮永遥みやながはるか   陸上部。インターハイ優勝候補

皆川結衣みながわゆい  第三十七代生徒会長

本条鈴音ほんじょうすずね  第三十五代生徒会長。爽哉の姉的存在

中間涼香なかまりょうか  爽哉の妹

内藤亮介ないとうりょうすけ  爽哉の親友

大里拓馬おおさとたくま  ブサメン高校生→イケメン高校生


「なんで爽哉は陸上部へ入らないの? こんなに走るのが好きなのに」

 一か月もすると、遥とはお互いをファーストネームで呼び合うようになっていた。


「俺には才能無いよ。それに今は生徒会の仕事が忙しい」

 事実だった。放課後は校則緩和の準備が大詰めだった。筋トレのノルマもこなせない日々が続いている。それは、遥とこうして話す時間が増えたのも一因だった。


「もったいないなー。いい身体してるし、根性もあるのに。後輩にも見習わせたいよ!」


「遥の後輩にはなりたくないな。めっちゃしごかれそう……」


「愛の鞭よ。変態紳士にはご褒美、でしょ」

 遥は澄ました顔で笑った。俺もつられて笑った。


「いや、でも、生徒会からするとありがたいよ。遥が陸上部のレベルを底上げしているから、評判がいい。入学希望者の増加にもつながるよ」

 俺は過度な期待を述べたことを後悔した。


「そう言ってもらえるのは嬉しいけど……」

 仰ぎ見た遥の顔には困惑の笑みが浮かんでいた。


 遥はプレッシャーに弱い。実力はあるし、人一倍努力しているのに、自分に自信が持てないでいる。以前の俺に、遥は弱音を吐くことが多かった。逃げ出したい、と。陸上をやめて、周りを気にしなくてもできるスポーツがしたい、と。団体競技がいい、それなら一人で責任を感じなくてもいいはずだから。そんなことをよく言っていた。そのたびに俺は、遥の努力を誉め、実績を誉め、人気を誉めた。褒められるのに、めっぽう弱い。お人よしなのだ。誉められると、それまでの迷いを忘れて、自信を持って駆け出して行った。今の俺の容姿にその効果があるとは言えない。しかし、この走るのが大好きなお人よしに、走るのをやめてほしくなかった。走るのをやめた遥は、絶対に後悔する。何とか支えたい。今はその一念だった。


「いやいや、ごめんごめん。みんな、遥に憧れているってことさ。憧れの対象ってのは、なんかヤル気でない? 女神様みたいでさ。俺からすると羨ましいよ、ホント」


「そう言われると、悪い気はしないけど……」

 遥の頬にはしゅが差して、はにかんでいた。


 俺の言葉にある程度の効果が現れている事は実感していた。一緒に走っている事が大きいのだろう。イケメンだった俺は、一度だけ遥のトレーニングに付き合ったことがある。すぐにへばった。ついて行けなかった。そんな俺を遥は笑った。顔さえよければ、美しい言葉だけでよかったのだ。しかし、今の俺は自分の一年間の地道なトレーニングを褒めてやりたかった。俺の行動が、言葉が、今の遥を支えている。それがなによりも嬉しかった。


「遥……」

 俺は遥を見つめて、真面目な声色で言った。


「身体には気をつけろよ。故障でもしたら、皆が悲しむ。一番は俺が悲しい」


「なぁに、急に。気をつけてるよ、言われなくても」

 遥は俺の忠告を笑い飛ばした。


「……そっか。なら、いいんだ。行こっか」


 俺たちは駆け出した。その時は、目前まで迫っていた。


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