5 幸福
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ざく、と土を踏む音がする。テオだ。
「マヤ。とうもろこし、今日はたくさん採れたぞ」
ざく、ざく、と家の中へ入ってくる。その足音が、突然止まった。
「……マヤ?」
床に寝転がるマヤを見て、テオが抱えていた籠を脇に置いて駆け寄る。
「ごめん、テオ。水、まだ汲みに行けてない」
「そんなことはあとで俺がやるからいい。どうした、具合が悪いのか」
「なんだか気持ち悪いの」
「食欲は?」
「ない。あと、眠い……」
「わかった。今、粥をつくるから。そこで休んでろ」
「ありがと。というかテオ。作り方、わかる?」
マヤが弱々しい声で尋ねると、テオは渋い顔になり、一言。
「…………わからねえ」
思わずマヤはふふっと笑った。
マヤが床の上から細かく指示を出したというのにテオが粥を焦がし盛大に笑われたあと、マヤはテオにおぶわれておばあのもとを訪ねた。
すると、おばあは開口一番にこう言った。
「お腹に赤ん坊がいるんだ、それは」
二人揃って、目を丸くした。
それから、手を取り合って喜んだ。
「俺たちの子か……!」
テオはマヤを抱きしめる。
その時、おばあがひどく咳き込んだ。ひゅうひゅうと音を立てつつも、「すまない、大丈夫だから」と繰り返す。
「おばあ、絶対大丈夫じゃないよ! ほら、早く横になって!」
マヤの手がおばあをベッドに押し込む。
「はは、お前たちに心配をかけるわけにはいかないな。今月もまだ祭祀がある」
言いながら、ごほ、とまたひとつ咳をした。
「……おばあ、長生きしてね……?」
マヤは眉を寄せておばあを見つめる。
しかし、おばあはそれには応えず、慈しむような微笑を浮かべて、マヤとテオに「近う寄れ」と声をかけた。
「幸せにな、ふたりとも。生まれたらわしにも抱かせておくれ」
二つの頭を撫でながら、おばあは寂しげに笑みを深めた。




