3 告白
***
気がつくと、テオの姿を目で追っている。
祭祀の終わりに星を見上げると、屈託のない笑顔が瞼に浮かぶ。
あの輝きが、二年経った今も鮮やかに焼き付いている。
「俺の顔にとうもろこしのかすでも付いてるか?」
テオが不思議そうに寄ってきた。自分の口元を指で撫で、首を傾げる。
「ああ、ごめん。なんでもないの。ちょっとぼーっとしちゃってた」
その仕草さえ、マヤの目には周囲の景色から浮き上がって映る。胸が甘く切なく疼く。
この気持ちを吐き出してしまえたら、どんなに楽になれるだろう。
でも、言えばこの関係はどうなってしまうかわからない。テオと気まずくなったら、彼をひとりぼっちにしてしまう。そっちの方が嫌だ。
マヤは自嘲を隠して笑みを浮かべた。
自分はひどく臆病で、なんでもないよと言うしかない。けれどそのたびに、胸を刺す痛みは増していく。
二年前、星詠みになると決意してからというもの、マヤは毎月の祭祀のあとには、森の入り口で星を眺めるようになった。星をひとつひとつ繋いで、その日おばあが言っていたことを復唱するのだ。
隣には何故かいつもテオがいる。地面にごろんと寝転んで、マヤの長い黒髪を弄ったりいびきをかいて眠っていたりする。
今日も、マヤは草の上に座って星を見上げる。テオは頭の後ろで腕を組んで、ぼんやりと宙空を眺めていた。
ふと、テオがぼそりと呟いた。
「……なあ、付き合うか」
夜空に頭の先まで浸かっていたマヤは、耳の奥で響いたその言葉を理解するのに数秒を要した。
「はあ。………………え?」
顔に一気に血がのぼる。
マヤは迷う間もなく頷いた。
「マヤ!? 神々を信じないやつなんて、大丈夫なの!?」
翌日、頬を染めるマヤとテオを見て、アスタは困惑しているようだった。
マヤの肩を掴むと自分の方へと引き寄せ、抱きしめる。
「祝福もらえなくても知らないよ? というかあんた、星詠み目指すんでしょ」
「ご心配なくー。神の力なんか借りずとも俺が最高に幸せにしてみせるんで。だから安心して引き渡せ、さっさと、ほら」
アスタは深くため息をついた。
おばあにも報告に行くと、思いの外喜んでくれた。
「そうかいそうかい、お前たちが。やっとかい」
にこにこと微笑まれて、二人は顔が熱くなる。
「この世界に運命など無い。だから、自分たちで方向を決めて、切り拓いていきなさい。ほら、もっと近う寄れ。そしてしゃがんでおくれ」
おばあはそう言って、二人の頭を愛しむように撫でた。
おばあが倒れたと聞いたのは、それから数日後のことだった。




